アニメ『シスター・プリンセス Re Pure』考察3

〜年長者のあり方〜



はじめに 〜考察の視点〜

 考察2において明らかとなったのは、第2話から第4話までの一見不連続な物語は、花穂という個性・年少者としての特性・妹としての普遍的性質を、兄独占欲求・個人的欲求・固有性による自己限定のそれぞれの問題視点から、実はきわめて連続的に描いていた、ということだった。この結果をふまえれば、第10話「運命の赤い糸」、第11話「思い出の宝箱」、第12話「お兄さまのレストラン」の後半3話は、咲耶をヒロインとすることで、年少者の代表である花穂の前半3話と照応するかたちで、年長者のあり方を連続的に描いているものと予想される。
 その場合、花穂と咲耶は共に12人の中の1人であることから、シスター・プリンセスにおける妹の普遍的課題は咲耶の物語にも共有されているはずだが、その課題の具体的な現れ方が花穂の話とどこまで共通かは改めて確認されねばならない。そしてまた、咲耶という個性や年長者としての特性は、花穂の時とは異なる方向性を自ずから物語に与えていることだろう。本考察は、このような予測のもとに、第10-12話の内容について具体的に検討していくものである。


1.「運命の赤い糸」 〜兄妹関係の内と外〜

 体育の授業か、はたまたクラブ活動か。いずれにせよ視聴者の中には、冒頭に登場した咲耶の紺色ブルマー姿をもってアニプリを越えたと評価する者もあるだろう。これについての論者の意見はさておき、下校の仕度をする咲耶は、手提げの中に収めた兄へのプレゼントに目を向けて微笑む。

咲耶(私からのプレゼント…お兄様、喜んでくれるかしら?)

 校門で兄を待つ咲耶のもとに、雛子と春歌が偶然やってくる。春歌の長刀の演舞姿を初めて見学し興奮した雛子は、「えーい!えーい!ってね。クシシシ。」と真似して、子供らしさを存分に発揮する。そうするうちにやってきた兄に咲耶は早速寄り添うが、兄のポケットからはみ出た手紙に気づく。下駄箱に入っていたそれは、差出人の名前が記されずにハートシールで封じられていた。
 これを巡る各人の反応は、それぞれの個性と成長段階を明示している。雛子は「分かった、ラブレターだ!」とおませなところを見せながらも、「よくわかんないけど」「ラブレターってどんなこと書けばいいの?」と、ラブレターそのものの意味がまだ分かっていない。春歌は、「雛子ちゃんの気持ちを、そのままお手紙に書けばよろしいかと思いますわ。」と助言しつつ、兄に誰かから恋文が送られたことには何の不安も感じていない。おそらく、「何か、名前が書けない理由」があるにせよ、未だ正々堂々名を名乗らない相手をわざわざ気にする必要性を感じないのか、あるいは最初から兄を奪われる可能性を考えていないのだろう。
 しかし咲耶はそうはいかなかった。また明日の放課後、と別れた兄を、咲耶は追いかけることも引き止めることもできずに結局プレゼントを渡しそびれてしまう。帰宅後、自室で彼女は兄との写真や鏡を見つめつつ、あの手紙のことで思い悩む。

咲耶(そりゃあお兄様は格好いいし、ラブレターをもらってもおかしくないわよね…。
   それに…すごく優しいもの…。もしかして…ひょっとして…!)

 考えれば考えるほど、完全には否定できない可能性に不安が募っていく。兄に恋心を寄せる何者かがこうして接近していった結果、兄がその女性を恋人として受け入れてしまったならば、兄を奪われてしまうことになる。このような不安を抱くという点は、咲耶の個性のみならず、本考察の主題である年長者であることの特性にも深く関わっている。
 年少者と年長者を隔てるものの一つとして、まず挙げられるのは、性的成熟度の差である。例えば花穂は肉体的には第二次性徴の段階に入りつつあるが、精神的には性的関心を自覚できていない。しかし咲耶の場合は、心身ともに既に相当の成熟を遂げていることにより、兄を男性として認識し、自分の魅力を女性的なものとして理解している。とくに咲耶は、異性である兄に対して自分の女性的魅力をある程度積極的に活用しようとするが、そこまではしようとしない他の妹達でも、自分と兄の関係をしばしば恋人同士になぞらえる。思春期にある年長者達にとって兄は明らかに初恋の相手であり、兄を独占しようとする欲求も、年少者のそれとはやや性質を異にする。そしてその徹底は、相思相愛の恋人関係の延長上に、結婚という未来像を見出すことになる。
 しかしこの究極目標は、血縁ゆえに決して満たされることはない。このことをいかに理解するかによって、年長者達の個性が決定される。例えば、この不可能性を自覚していない春歌は年少者の無邪気さに近いアンバランスな魅力を備えることとなり、また前世に結ばれた記憶をもつ千影は禁忌をあえて破るだけの覚悟がある。原作版の鈴凛は兄と自分との距離を自分なりに設定している。これに対して咲耶は、不可能性を理解しつつ、その壁に立ち向かい、しかし決定的な瞬間に躊躇するという、きわめて中途半端な態度を示す。春歌ほど無邪気になれず、千影ほど開き直れず、鈴凛ほど素直に妹の立場に甘んじられない。兄への恋心を抱いた年長者の屈折と不安定さを、最もよく体現しているのが咲耶ということになる。
 そしてここから、時の移ろいや変化についての敏感さという年長者の特性が導かれる。例えば花穂や雛子にとって、「未来」とは、いつまでも兄と一緒に喜びを分かち合えるような、「いま」の反復として想像される。第2−4話で示されたのは、まさに「いま」の延長上にある花穂の未来像だった。これに対して年長者は、自分の理想像へ向けて進み行く過程として、未来をより明確に把握する。ただし咲耶が今回思い描いているのは、兄妹以外の他者が参入することによって、「いま」とは大きく(悪い意味で)変質させられてしまうような「未来」の姿である。彼女は破局という悪しき可能的未来像を知るがゆえに、あの手紙を兄の危険な変化を予兆するものとして受け止めたのだった。
 ところで、そのような危険因子を他者に見出すこと自体が、じつは年長者の別の特性でもある。第2−4話の花穂にとっての危険因子は、自分の過失や欲求、妹達の過剰な支援といったものに由来しており、あくまでも花穂自身を含む兄妹関係の枠内にとどまっていた。しかし今回の咲耶は、兄妹以外の他者を危険因子として認識し、これに対応しようとする。このときの咲耶は、問題を咲耶−兄関係とのみ結びつけるのではなく、妹12人全員の問題としても把握している。年少者が自分のことでまだ手一杯である一方で、年長者は、年少者達をも含めた兄妹関係の総体を守るために、より大局的な視野にたった行動を求められる。つまり、これが年長者の責任ということになる。

 こうして年長者の特性をとらえるとき、この夜の場面での咲耶は、プレゼントを渡すことで自分の欲求を満たし固有の絆を結ぶということと、兄妹関係総体を外部(手紙の主)から守るということの、2つの行動方針を確認したということになる。そしてさしあたっては、咲耶−兄関係も含む兄妹関係そのものを守ることを優先し、そのための作戦を練ることになった。ここで咲耶は、仮想敵である手紙の主を想像するさいに、何の手がかりもない以上は最強の存在として扱うほかなかったわけだが、その結果として、咲耶本人のような積極果敢な女性が次に攻撃策をとってくるのか、あるいは自分とは対照的な可憐なり鞠絵なりの一見消極的だが兄には効果のある戦法でくるのか、などと様々に予測をめぐらすこととなった。その結果、相手の性格がどのようなものであっても全て撃退できるような攻撃的防御をとらねばならないという結論を導き出したのは、これまでのほかの妹達との戦いの経験を踏まえこそすれ、やはり咲耶固有の積極性によるところが大きかった。気合いを入れなおして「よし、決めた!」と叫んだとき、咲耶はそこまでの決意を固めていたのである。
 それゆえ、翌朝の咲耶の行動は見事なまでに徹底していた。まず、いきなり朝方に兄の家に勝手に上がりこみ、まだ寝ている兄を優しく起こす。これは、早朝ランニング時の衛なり探偵時の四葉なりがやりかねない不意打ちである(なお、このとき兄が着用していたのは、第4話で登場した花穂とお揃いのウサギ柄パジャマであり、兄がどれほど不用意だったか分かる)。次に、登校時には兄にべったりと寄り添い、もう少し離れた方が、と照れる兄に、「だめよ。だってお兄様には危険が迫ってるんだもの!私はお兄様のボディガードよ。」と突っぱねるが、これはつまり春歌と同じ行動である。そして教室の窓から兄がサッカーをしているのを見つけた咲耶は大声で応援し、驚いた兄にぶつかったボールがたまたまゴールするという幸運を導くが、この展開は花穂を連想させる。お昼の手製のお弁当、しかも「咲耶特製スペシャルB.L.Tサンドよ。私だってやればできるんだから。」という台詞からは、白雪の名が当然思い起こされる(なお、キャラクターコレクション第8巻によれば、B.L.Tサンドは鈴凛の得意料理でもある)。あるいはもし、手紙の主について友人達に調査を頼んでいたとすれば、これは可憐の技ということになる。さすがに魔術などには手が及ばなかったにせよ、咲耶はここで可能なかぎりの先手をうち、「お兄様と私のラブは、世界で一番」ということを見せつけながら、相手の攻撃手段そのものを封じようとしていたことが分かる。ところでこの封じ込めこそが、あるいはきわめて可憐的とも言えるかもしれないが。

咲耶(これだけお兄様にくっついていれば、さすがにラブレターを出した子も諦めてくれるわよね。)

 ところで、12人の妹達の代表として兄を守り抜くという責任を全うしようとする姿勢は、確かに最年長者(おそらくは)として立派なことではあるだろうが、しかしこれを自分一人で行おうとせず、他の妹達の協力を得れば、もっと容易に目的を達成できたのではなかろうか。ここには、兄妹関係を守ろうとする意識が自分自身の兄独占欲求に転化してしまうという年長者の問題が立ち現れている。つまり、日中に兄を独占し続けたことは、手紙の主という外部の存在を排除することであると同時に、兄妹関係の内部において他の妹達を排除することでもあったのだ。この重大な問題に気づかないまま、咲耶は、とにもかくにも手紙の主が今日は現れなかったことに満足することができた。
 しかし、今日の放課後も一緒に帰る雛子と春歌が、そんな咲耶の自己満足を粉砕してしまう。雛子は兄に自筆のラブレターを渡しながら「お手紙書くのって、すっごく楽しいんだもん!」とはしゃぐ。春歌は「茜さす 日の暮れゆけばすべをなみ 千たび嘆きて 恋ひつつぞおる」と和歌を詠む(『万葉集』巻第十二、2901番の相聞歌)。兄を想う心を素直に表現することのできる二人を見て、咲耶は自分の行動の根本的な錯誤を突きつけられた。手紙の主から兄妹関係を守るという名目のもと、兄を独占し続けた自分は、その行動によって結果的に排除していたこの二人がそれにも関わらず今なしえたように、自分の想いを素直に表現し、それを兄に受け止めてもらえたのだろうか。

咲耶(きっと、お兄様にラブレターを出した子も、自分の気持ちを伝えるだけで満足だったのね…。)

 仮想敵のために兄にあれこれするというのは、確かに兄妹関係総体を守ることにはなるだろうが、兄妹のあり方としては本末転倒である。兄妹関係を守るということは、外部に対する防御としてよりも、自らの固有な絆を守り、他の妹達の絆を支えることで、内在的になされるべきものではないのか。そして、妹達の気持ちを兄がきちんと受け止めてくれると信じることが、兄妹関係の大前提ではなかったか。手紙の主から自分達の姿がどのように映るか、と外見にばかり気を取られている間に、咲耶は肝心なことを見失ってしまっていた。
 そのことは、咲耶が例のプレゼントを兄に今なお渡せていないことでも分かる。このプレゼントの中身である赤いマフラーは、後の回想場面で描かれるように、ショーウィンドウの男女のマネキンがお互いを結びつけていた姿に触発されてのものだった。この光景に自分と兄を重ねたのはもちろんのこと、咲耶にとってそのマフラーは、兄と自分とを結びつける「運命の赤い糸」を象徴していた。これを兄に贈ることで、咲耶の固有の絆はさらに深められ、恋人同士の間柄にまた一歩近づきつつ咲耶の未来の不安も和らぐはずだったが、これを果たせずにいる今の状態は、兄妹関係を守ろうとして固有な絆を結び損なってしまうという矛盾を指し示している。
 この反省にたって、咲耶は自分の気持ちを伝えようとタイミングをうかがうが、兄と二人きりであるにもかかわらず、なかなか機会をつかめない。黄葉のアーチをくぐりながら、「すごいねぇ、まるで落ち葉の絨毯だ。」「もうそろそろ、冬本番だね。」と語りかける兄の言葉にも、咲耶の気はそぞろである。ここには、咲耶特有の「寸止め」的な躊躇を看取するべきかもしれない。赤いマフラーに乙女心を託しつつ、その実現のための一歩をあえて踏み出すことをためらい、むしろ兄の側から積極的に働きかけてくれることを望むような、彼女のか弱い心の機微を。だが、この景色のように季節は巡り時は移ろうのであれば、せめて兄が遠ざかる前に少しでも望ましい未来を掴み取るため、今ここで想いを告げねばならない。ついに決意した咲耶は、兄に問いかける。

咲耶「ねえお兄様、赤い糸の伝説って知ってる?」
兄 「赤い糸?」
咲耶「運命の人とは、生まれたときから小指と小指が赤い糸で結ばれているの。でね、私、」
兄 「咲耶ちゃんと赤い糸で結ばれている人は、どんな人なんだろ。」
咲耶「もう、そんなの決まってるじゃない!私の心の中にいるのは、いつも一人だけよ!」
兄 「へええ、咲耶ちゃん好きな人ができたんだ。よかったね。」
咲耶「!…お兄様…。」
兄 「…咲耶ちゃん?」
咲耶「お兄様の、ばかーっ!」

 兄にプレゼントの入った手提げを押しつけて駆け出していく咲耶。少なくとも「ばか」と言える間柄にあるということを冷静に確認するよりも、やはりここでの兄のあまりの朴念仁ぶりに批判が集まるところだろう。しかし、兄妹の調和を維持するためには、思春期にある咲耶に対しては彼女の衝動をつねに弱めるようにすることが兄の自然な対応であり、今回の鈍すぎる応答も、そのような兄側の全妹等距離原則に従ったまでにすぎない。そして普段ならば、このように兄にはぐらかされた場合、咲耶は「もう、お兄様ったら。」などと拗ねてみせたり兄をたしなめたりすることで、衝動を調節して適度な距離を確認しあうことができるはずだった。ただ、今の咲耶は手紙の主をめぐる自分の行動を反省し、素直な気持ちを兄に受け止めてもらおうとしていたために、兄の普段通りの反応は、妹の気持ちに向き合おうとしないきわめて不誠実なものとして理解されることとなってしまった。しかもこれは咲耶にしてみれば、春歌や雛子の想いは受け止めてくれた兄が自分の想いだけ袖にしたという意味で、いっそう許しがたい所業だったのである。もはや自分は、12人の中の1人であることさえかなわないのか。兄独占欲求の暴走の結果、固有性の維持が不可能となるというこの構図は、第2話の花穂の夢と同じだが、その現れ方は兄への想いのかたちに応じてあまりに異なっている。
 激情を止められない咲耶は兄のもとを駆け去り、海浜公園のベンチに独り佇む。灯台、島影、時計台。兄妹の行き先を灯火が照らさぬままに、時がただ流れ過ぎ、夜の帳が彼女を覆い隠していく。

咲耶(お兄様ったら、いつまでたっても私の気持ちに気づいてくれないんだから…。)

 ここでの独白は、年長者の妹と兄の関係に見出される最後の特性を、ようやく新たに開示する。それは、兄と自分とのすれ違いである。兄は自分とは違う独立した人格であり、その意思決定をつねに自分と一致させることはできないということを、既に咲耶は知っている。言い換えれば、兄を心の底から無邪気に信じきることが、もはや不可能な段階に至っているのだ。そしてそうであればこそ、兄と自分の想いが一致することへの欲求がきわめて強いものとなり、逆に不一致が示されたときには否定的な感情に襲われることになる。とくに、攻撃的であるがゆえに脆弱な(あるいはか弱いゆえに積極的な)咲耶の場合、その衝撃を自分のせいだとして抱えきれないため、責任を兄に負わせて「兄に裏切られた」という感情を導きやすい。
 そのような、自分自身への不安と表裏一体のものとして兄への不満を抱きつつ、咲耶は寂しげにうつむく。だが唐突に、あの赤いマフラーが、彼女の肩にそっと掛けられる。今まで咲耶を探していた兄がようやくここを見出したのだ。自分を追いかけてきてくれた兄に喜びを抱きはするものの、想いを傷つけられた咲耶の悲憤を解消するには至らない。

兄 「ごめんね、咲耶ちゃん。」
咲耶「お兄様ったら、ほんとに鈍いんだから。
   …お兄様ったら、…ほんとに鈍いんだから…。私の気持ちなんて、これっぽっちも…。あっ!?」

 妹の肩に掛けられたマフラーの一端を、兄は自分の肩にも巻いて妹にそっと寄り添う。それは、ショーウィンドウを見つめたときに思い描いた二人の姿そのものだった。何も言わずともその夢をかなえてくれた兄の温もりを横に感じつつ、「お兄様…。」と呟く咲耶は、この瞬間に満たされている。彼女が結ぼうとした絆は兄に確かに受け止められ、自分に結び返された。ここに咲耶の固有な絆は確保され、そしてこれによって、兄妹関係はその内部から、総体としての調和を取り戻しさらに強固に存続していけるはずだった。

咲耶「ねえお兄様、約束してくれる?」
兄 「ん?」
咲耶「今度、私の家に遊びに来て。ね?」
兄 「うん。」
咲耶「約束…。」

 しかし、その過程をのんびり待つような咲耶ではない。自ら積極的に動いてこその精神は、背後に不安を隠しながら、この機会を最大限に利用すべく兄を誘導していく。そしてまた、当初求めていた場面の実現による不満の解消とは、年長者の場合、理想像へとさらに一歩進んだ状況への欲求を新たに生み出す契機でもあった。

咲耶「もちろんお泊りも、ねっ。」

 ウィンクする妹の笑顔に、兄はいったい何を思ったのだろうか。


2.「思い出の宝箱」 〜積み重ねる絆〜

咲耶「今日はお泊りの日。お兄様と二人っきりの夜…。今まで以上の、スペシャルな思い出を作らなくっちゃ。」

 自室の咲耶は、机の上の小箱を前に、日記を開いている。その内容は、読み取れるかぎりの文面に、想像による補完を若干加えると、次の通りである。

「今日友だちとベティーズに行ったら
 新しい服をたくさん発見!
 カワイイ服ばかりで迷っちゃったケド
 けっきょく全部買っちゃった。
 今度おにいさまにも見てもらおう(はぁと)」  (右側のひし形の中身、日付不明「お泊りの日」)

 今日は学校でぬきうちテストがあったの
 ぜんぜん勉強してなかったから最悪〜
 おにいさまに嫌われないようにもっと勉強しなきゃ…
 お泊りの日の準備で大忙しな1日だった
 おにいさまによろこんでもらえるとうれしいな♪」  (ハートマークの中身「いよいよ明日!」)

 昨日今日分の日記だが、この文章が咲耶らしいかどうかは、「最悪〜」や「おにいさま」(「お兄様」ではなく)という書き方からして、論者はやや疑問を抱く。それはともかくも、ここでは既に、新調した服のコレクションを兄に見てもらうというお泊りの日の行動を仄めかされている。それゆえ「今まで以上のスペシャルな思い出」という表現にも、過度に性的な含意を読み取ることは難しい。さしあたりここでは、第4話での花穂がお泊りの日に期待した兄との楽しい時間と、咲耶が期待している時間との相違を確認しておこう。花穂の場合、それは具体的には一緒に食べるお弁当や、ゲーム、お話などをほぼ直接指していた。これに対して咲耶の場合、それは何事であろうとも、擬似的恋人関係を味わえるような、非日常的でロマンティックなムードに包まれたものでなければならない。前話では最終的にこのムードに浸れたものの、それではまだ足りないからこそ、この機会を獲得したのだ。
 そのための演出は、兄を出迎える瞬間から始まる。お昼頃訪問した兄に玄関の外で抱きつき、「おかえりなさい!」と頬を寄せ、さらにキスをせがむ真似までするとは、完全に新婚・同棲の気分である。花穂も玄関で兄に新婚めいた挨拶をしていたが、ここまで自覚的なものでは到底ありえない。兄に用意した昼食は、焼き魚に味噌汁という和食の献立。これはやや意外にも思えるが、『電撃G'sマガジン』本誌企画内でも彼女は「男の人は家庭的な料理に弱い」という判断から和食をこしらえており、またおそらく夕食では洋風のディナーをそれこそムードたっぷりに楽しもうという計画なのだろう。食べ終わった兄妹がお茶を飲む仕草の揃いようも見事だが、ここであまりに家庭的すぎる雰囲気に落ち着いてしまう前に、咲耶は次なる攻撃に打って出る。

咲耶「そうだ。お兄様、私の部屋に来てくれる?やっぱり最初は、お兄様に…。」

 思わずむせる兄。まだお天道様も高いのに。しかし、さすがの咲耶もそこまで手順と倫理を無視したりはしない。日記にも書いていたように、新調した服を「最初はやっぱり、お兄様に見てもらいたかったのよね。」ということにすぎない。兄も安心したような気勢をそがれたような顔をしているが、声色からするとまだ警戒を解いてはいないようでもある。確かに既に咲耶の部屋に入っている以上油断はならない。例えばこの次の段階としては、とくに自分に似合う服を兄に選んでもらう/その服を着た姿を兄にぜひ見せたいと言い出す/ついては着替えを手伝ってもらう、というスムーズな流れが予定されていたかもしれないのだ。
 だが、ここで兄が机の上の小箱に気づくことで、その計画はあっけなく破綻することとなる。

兄 「その箱って…。」

 兄の言葉になぜか異様に驚いた咲耶は、慌ててその小箱を隠そうとするが、かえって机の上から落として中身をばらまいてしまう。ビー玉、玩具の指輪、熊のアクセサリ、翼ある仮面のアクセサリ(謎)、リボン等々、一見ガラクタのような様々な品が散乱する中で、咲耶はさらに動揺して必死に拾い集めようとするが、その前に兄は、足元に転がったイルカのヘアピンと、マヨリカ焼きタイルのネックレスを手にとって見つめた。

咲耶「あの、えっと…えと、これは別に、別にしまっておいたわけじゃなくて、あ、その…。」
兄 「まだ持っていてくれたんだね。」

 それは、幼い頃から最近に至るまでの、咲耶と兄が共にいた日々のよすがだった。兄からもらったり兄と一緒にいる時に拾ったりした小物が、この小箱の中に目一杯に詰め込まれていたのである。それにしても、なぜここで咲耶はこれほどまでに慌てていたのだろうか。例えば、兄が注意を向けたのをこれ幸いと小物を広げ、思い出を辿りつつ自分と兄との絆を確認し、真昼間からいい雰囲気に突入することもできたのではないか。だが、「今まで以上の、スペシャルな思い出」を作ろうと意気込んでいる今日の咲耶にとっては、この小箱の中身は「今まで」の思い出にすぎず、これにこだわっていてはいけない、という思いが強い。さらに、あまりに幼い頃からの思い出の品が詰まっているこの小箱は、自分の子供っぽさの象徴であり、女性よりも女の子に相応しい可愛らしさでしかなく、大人っぽい恋人として振舞いたい彼女には、今この時こそは隠蔽し否定しなければならない存在だった。そうやって子供らしさを捨てて精一杯背伸びしようとすること自体が非常に子供っぽい姿勢であり、そのことを素直に認められないあたりがまたいかにも少女らしいのではあるが、ある意味では自分のその子供っぽさを小箱に全て詰め込んでしまうことで、残る大人の部分だけを身に纏わせようとしていたのかもしれない。だから小箱を兄に見られることは、彼女の心の奥底にある幼さを曝け出してしまうようで、あまりにも気恥ずかしいものだったのである。
 そんな咲耶の焦りの結果を、ここでは兄がやんわりと受け止めかけている。咲耶が誘導しなくても、いい雰囲気のきっかけが偶然に得られたのだ。しかし、当初の計画では咲耶が一貫して主導権を握っているだったにも関わらず、ここでの事故によって不意に受動的な立場に立たされた咲耶は、完全に積極性を失い、顔を真っ赤にして兄の行動を待つほかなくなっていた。そして、彼女の足が止まり攻勢が途絶えた時の脆弱さ、乙女心の傷つきやすさが、やはり今回も露呈してしまう。クローバー模様のマヨルカ焼きタイルをネックレスにあしらったものを見つめて、兄は首を傾げる。

兄 「えっと…何だっけ、これ…?」
咲耶「っ!…忘れちゃったの!?」
兄 「え?…ええと…。」
咲耶「…お兄様、ひどい!」

 叫ぶなり、咲耶は兄の手から小物をひったくり、エプロン姿のまま家を飛び出して街中を独り彷徨う。どうやら兄はイルカのヘアピンの方は後述するように比較的最近ということもあり覚えていたようだが、タイルの方は記憶がないらしい。このことは、咲耶が小物を大切に保管していたことの意味を失わせてしまう。もともと咲耶にとってこれらの小物は、兄が自分に向けてくれた好意の証しであり、自分と兄とを結び付けてくれた絆のしるしである。咲耶から見て、兄はいかにも鈍く、自分の好意に対して相応の返事をしてくれないままにいる。しかし、時には兄の方から、ほん些細な瞬間であっても、咲耶に積極的に行為を示してくれたことがある。兄からのそんな心配りを受け止めることで、咲耶は愛されているという実感を噛みしめ、その幸せな過去の絆の積み重ねを小箱の中に確認することで、不安に陥っても諦めることなく前向きに努力することができていたのだ。だが、もしもここで兄が自らの与えた好意の証しを覚えていなかったとしたら、その証しによって結びついていたはずの兄と自分の心が接点を失ってしまう。それは、兄の小さな心配りを信じて受け止めてきた咲耶にとって、またもや兄の裏切り行為に等しかった。前回は兄と咲耶のすれ違いが、「いま」の絆を結ぶための赤いマフラーを媒介にして、「いま」の想いのずれとして生じたとすれば、今回は、過去の絆を指し示すタイルを媒介にして、過去の想いのずれ、過去への想いのずれとして生じたことになる。

咲耶「お兄様ったら、あんな大切なものを忘れちゃうなんて…。」

 それを忘れるということは、それを大切にしてきた咲耶の心をも軽んじるということだ。とはいえ、当初の衝撃と憤りがおさまってみると、果たしていま自分がしていることはどうなのだろうか。確かに兄は過去から積み重ねた自分の想いを軽んじたのかもしれないが、自分の家に約束通り来てくれた兄を放りだした自分の行いは、「いま」の兄を軽んじることではないのか。過去と「いま」とのずれに足を止めて、ガラスに映る自分の顔を見つめ、咲耶は自らの心を省みる。ここで咲耶は、自分の小箱に詰めた想いを傷つけられたくないという本来個人的な欲求から問題を生じさせているという点で、第3話の花穂と同じ葛藤に陥りかけていた。しかし、年長者である咲耶は、第10話同様に内省を通じて、自らが生んだ問題の解決に取り組もうとすることができた。

咲耶「はぁっ…。私、何しているのかしら。せっかくお兄様が来てくれているのに…。」

 衝動的な行動を兄に謝ろう、あるいは兄の非を明るく前向きに糾弾しよう。そんなつもりで何とか笑顔を取り戻して家に帰るが、しかしそこには既に兄の姿はなかった。この場面では、咲耶はタイルのネックレスを手に思い詰めた表情をしてはいるものの、その心中が言葉で示されてはいない。これを想像するならば、先ほどの自己反省はさらに厳しくなされているのはもちろんだが、さらにもう一段階の深まりがあったと考えられる。つまり、兄を招いたお泊まりの日とは、咲耶と兄の約束だけで実現できるものではなく、他の妹達が干渉しないということを確認できてはじめて可能となる。第4話の花穂の場合もそうだったように、「お兄ちゃんの日」は12人の妹全員が原則を守り相互に協力してようやく成立するのである。ところが、咲耶は皆の暗黙の了解を得てこの日を迎えられたにもかかわらず、自分の過失でその兄が消えてしまったという事態は、兄妹全員によって実現し得た大切な「お兄ちゃんの日」を台無しにしてしまったということであり、事ここに至って咲耶と兄の関係のみに収まらない兄妹関係総体に関わる重大問題となったのだ。おのれの感情的行動で「お兄ちゃんの日」を失うなど、本来調整役であるはずの年長者として許されざる振る舞いであり、しかもこれが今後の「お兄ちゃんの日」のあり方を大きく左右してしまいかねないとすれば、尚更のことである。
 咲耶が直接は語らないこのような想像が、決して論者の主観のみによるものではないことを裏付ける証拠が、この後で再び家を飛び出した咲耶の言葉から与えられることになる。お泊まりの日の崩壊を食い止めるために、喫茶店、本屋、美術館と、兄が行きそうな場所を探して駆け回る。それでも見つからずに教会の前で息を継ぐ咲耶は、その教会堂の姿に、あの小箱の中に納めていた赤いリボンのことを思い出す。それは、幼い頃に咲耶が可憐と千影と兄の4人でここでの結婚式を見守っていた時、花嫁が投げたブーケを兄が受け止め、そしてそれを咲耶に渡してくれた、そのブーケを結わえていたリボンだった。(なぜ兄が咲耶に渡したかといえば、おそらく最年長の妹である咲耶が一番結婚式に憧れこのブーケを欲しがっていた、あるいはそもそもこれが欲しくて咲耶が皆を結婚式の場に連れてきたということもあるだろうし、咲耶に渡さなかった時の展開について兄なりの懸念もあったのだろう。)次に向かったプールの前では、咲耶、雛子、鞠絵、白雪が兄とここで楽しんだ夏の日に、兄が咲耶の髪にとめてくれたイルカのヘアピンを思い出す。小箱の中身は、どれもそのような思い出の品であり、兄と結んだ絆の証しである。そして、そのことを咲耶は次のように独白する。

咲耶(そう…お兄様と一緒にいると、思い出が一杯になっちゃう。
   お兄様は次々に私達に、素敵な思い出をくれる。覚えきれないくらい…。)

 ここで看過してはならないのが、咲耶が私「」という表現を用いていることである。既に咲耶の意識の対象は自分と兄の関係だけでなく、兄妹関係総体にまで及んでいることが、ここに明確に示されているのだ。兄を探し求めて行く先々で、咲耶は小箱にしまっておいた様々な思い出を一つ一つ想起する。その思い出は、何の変哲もないただの道、ただの十字路にさえ見いだせるものかもしれない。繰り返される日常の中で、兄は自分のためにたくさんの思い出を贈ってくれている。そして、それは自分にだけではなく、全ての妹達のために、分け隔て無くなされているのだ。小箱からあふれるほどの思い出、しかしこの街には、途方もつかないほどの兄妹達の思い出が、はるかな過去から積み重ねられている。「ほんと、お兄様ったら…。」という咲耶の呟きには、そんな兄の想いの広がりと深さとを感じた彼女の、個人的な不満を越えた幸せな溜息が混じっている。

咲耶(お兄様は、私達みんなに優しくしてくれる。
   いてほしいときには、必ずいてくれる。どこにいても、必ず。)

 いつでも、どこでも。こう語る咲耶の心中では、過去と「いま」の区別はきわめて曖昧になっていき、咲耶個人と「私達」妹全員も再び重ね合わされていく。
 しかし、探せども兄は見つからない。兄の思い出に充ち満ちているこの街に、兄の姿だけが欠けてしまっている。この状態は、じつは第2話で花穂が見た夢と対照的である。あの夢の中で花穂は、種をなくしたことで、自分の兄独占欲求を制限するための枠をも喪失してしまっていた。今回の咲耶は、兄妹達の思い出に無制限に満ちた街中で、兄と自分とを結ぶ固有の場所を見失ってしまっている。そのような場所が見つからない時、妹は自分の居場所を定めることができなくなる。

咲耶「まるで、迷子になっちゃったみたい…。」

 迷子。自分のその言葉に、咲耶は幼い日の迷子の思い出を取り戻す。いや「取り戻す」というのは正確ではない、手に握ったタイルのネックレスこそは、その思い出にまつわるものだったからだ。あのとき兄を見失い困り果てた幼い咲耶は、現れた兄に飛びついて泣きじゃくっていた。その後二人で行った公園で、兄は水の出ていない噴水の柱からタイルを1個削り取り、咲耶に「これ、あげる。」と差し出す。そう、咲耶はこの思い出を忘れてはいなかった。ただ、その思い出が自分に与えてくれたものが何だったかのかを忘れかけ、また兄の覚えていないと言う態度から自分も諦めかけてしまっていたのだ。そしてその根本原因は、咲耶が自分のこの大切な絆の証しを小箱にしまいこむことで、一見それを大切にしているようで、じつは過去の記憶を「いま」と切り離して収集の対象としてしまっていたことにある。後の場面で回想されるこの幼い思い出を、あらかじめ確認しておこう。

兄 「咲耶ちゃん。これね、秘密の鍵なんだよ。」
咲耶「ひみつのかぎ?」
兄 「ほら。これ、あげる。」
咲耶「おにいさま?」
兄 「ないしょだよ?咲耶ちゃんがこの秘密の鍵を入れてくれたら、僕、絶対ここに来る。
   もし迷子になっても、僕達は必ず会えるから、絶対になくしちゃだめだよ。」
咲耶「うん!」

 1枚のタイル。それは、兄にとっては迷子の時の集合場所を定めたものにすぎなかったかもしれない。だが、咲耶にとっては、兄が必ず自分を見つけ出してくれるという、その固有の絆を確証するための大切な鍵だった。ここに至って咲耶は、小箱にしまいこむことで切断していた過去と「いま」を再び繋ぎ合わせようとするが、その意志を準備したのは、兄を探してさ迷い歩く間に見出した、街中に溢れる「いま」と過去の重なりようである。兄が自分のところに来てくれるための秘密の鍵。それが、いま自分の手の中にある。ならば、自分から兄を探すのではなく、兄が自分のもとへ帰ってくるように、この鍵をあるべき場所に入れなければならない。そうすれば、兄は必ず自分との固有の絆をたぐり寄せてくれるはずだ。
 そう信じて夕暮れの中、その噴水柱があったはずの公園噴水広場に駆け込むと、咲耶はしかし思いもよらない光景に遭遇した。タイルに飾られた噴水柱が消え失せ、その代わりに新しい大理石製のものが建てられていたのだ。あまりに様変わりしてしまったことに、咲耶はただ「…そんな…!?」と息をのむほかない。なぜ噴水が建て替えられてしまったのかは分からないが、ともかくこれでは秘密の鍵を入れることはできない。兄が自分のもとに来てくれるための絆は、ここに断ち切られたかに見えた。(ところで、とら氏『だったらイケるぜ!』では、前の噴水柱が消えたのは可憐が「丁寧に破壊した」からだとされているが、さらに美森勇気氏はこれを受けて、咲耶が夕暮れまでこの約束に思い至らなかったのは、千影が咲耶の記憶を消していたからではないか、という説を論者に個人的に伝えてくれた。ブーケの一件が回り回ってこれらの反撃を生み出したとすれば、アニプリにおける妹間の戦いは、このAパートでもかたちを変えて受け継がれていることになる。)

咲耶「どうして…?お兄様との、大切な約束の場所だったのに…。」

 ここに来る途中駆けぬけたのは、第2話で花穂がくぐった公園のアーチである。あのときの花穂のように、夕日に映えるその美しさを愛でる余裕など到底ない。そして花穂にとって美しい光景は、咲耶にとっては残酷な時の流れの象徴にほかならない。自分一人が小箱に過去の絆を大切に保管していたにすぎず、思い出の場所も、兄の想いも、時とともに移ろい失われていってしまうのだろうか。それは兄だけでなく、この場所にすぐに来ようとしなかった自分の心にも当てはまることではないか。時の移ろいは夕暮れから夜へと翳りを落とし、闇に包まれて咲耶は噴水に背を向け、うなだれて帰ろうとする。兄の目から小箱を隠そうとした時、咲耶は過去を閉ざし、過去もまたこうして彼女を閉め出してしまった。
 だが、その咲耶の闇を、灯が入り水しぶきを上げ始めた噴水の輝きが吹き払う。驚いて振り返ると、流れる水と踊る光の向こうに、過去を纏って兄が現れる。

兄 「変わっちゃったね、ここも。」
咲耶「お兄様!どうして!?」
兄 「たぶん、ここじゃないかと思って。約束したよね。」
咲耶「お兄様…。」

 さて、今まで兄が何をしていたかだが、咲耶をすぐには追いかけられずに仕方なく自分の家に帰り、しかし落ちついていられずに咲耶を探しに再び出かけ、「咲耶が行きそうな場所」を重点的に探すことで「兄が行きそうな場所」を回っていた咲耶と見事にすれ違い、しかも途中で可憐あたりに捕まりかけたりしていた、ということかもしれない。それでも今日は咲耶のための時間と決めてひたすら探し続けながらあのタイルが何かを思い出そうと努め、夜になってようやく鍵のことに思い至ったのだろうか。何はともあれ、兄はやってきた。鍵を入れる場所はなくなっていても、兄と自分の絆は、時の流れに壊されずにちゃんと結ばれたままだった。

咲耶「ここもきれいになっちゃったね。きれいになって素敵なはずなのに、何だかさみしいな。」
兄 「咲耶ちゃんとの、思い出の場所だったからね。」
咲耶「でも、お兄様は覚えていてくれた。こうしてちゃんと会えたんだし。」
兄 「ごめんね咲耶ちゃん、きれいなネックレスになっちゃってたから、すぐに分からなくて。」
咲耶「ほんとは忘れてたくせに。フフッ。」

 しかし、それは自分もそうだったのではないか。お互いを見つけることができたのは、兄も自分も公園を失念し、最後の最後になってここに来たこからだ。だがそれは、時が二人を変えていってしまうとしても、その歩みを共にしえていることの現れでもある。過去の思い出の場所は消え、兄も自分も変わっていき、何かを失っていく。日々きれいになっていくはずの自分は、幼い頃のあどけなさを喪失していく。それは避けられないことにせよ、過去より積み重ねられた兄妹の想いは、その絆を決して失わない。子供時代を捨て去らずに、いまを兄とともに生きていくことを感じられた咲耶は、また同時に、自分が背伸びしすぎていたことにもようやく気づく。子供っぽさを小箱に押し込め、それを隠して大人のふりをする必要はない。「スペシャルな思い出」は、日常の思い出を閉じこめて空いた場所に見いだせるのではなく、日々の思い出のすぐそばにある。いま、兄と夜の噴水に佇んでいるこの時間のように。そして、こんなふうに思えるようになれたことこそが、咲耶を本当に大人の女性に近づけていく。
 噴水の水の底から石ころを拾い、兄に指し示して咲耶は微笑む。

咲耶「これ今日の記念。忘れちゃだめだからね。」
兄 「咲耶ちゃん…。」
咲耶「ありがとう、お兄様。さ、帰りましょっ。」

 何でもない石ころにも、その気になれば思い出が宿る。今までの小物とは異なり、これは咲耶の方から兄に結んだ絆の象徴だった。咲耶の家に戻った二人は、彼女の部屋で再び小箱を開く。

兄 「全部とっておいてくれたんだ。」
咲耶「そうよ。これは私とお兄様との思い出がつまった大切な箱なの。今まで誰にも見せたことなかったのに…。」

 言いながら咲耶は、その石ころを小箱に入れようとする。いま結んだばかりの絆の証、それを兄の目の前で収めれば、この小箱は、過去といまを、二人の約束のもとに繋ぎ止めてくれる鍵となる。そして、この「誰にも見せたことなかった」小箱を兄に見られたということは、その秘密を兄だけが分かち持つということであり、それは「秘密」という点でも、また欲求に由来する危機の解決が固有の絆を強化するという構図においても、第2話で誕生した花穂と兄との「秘密の花園」に対応するものだった。ところが、咲耶の小箱の中はもう一杯で、この石ころをうまく収めることができない。

咲耶「あ、あらっ?もう入りきらなくなっちゃった…。お兄様がいけないのよ?」
兄 「え、えっ!?」
咲耶「だってお兄様と一緒だと、素敵な思い出がすぐ一杯になっちゃうんだもの。責任とってよね。」

 主導権回復。だがこの主導権は、本日咲耶が予定していたような「スペシャルな思い出」を何が何でもこしらえようとするためのそれよりも、ずっと穏やかなものになっている。この「いま」も、やがて過去となり積み重なっていく。その流れに逆らわず、性急に先へ進もうともせず、少しずつ大人へと歩んでいく。兄と一緒にいる過去と「いま」とが、そんな未来を確信させてくれる。

咲耶(この日の日記にどんなことを書いたかって?ウフフ、それは私とお兄様だけの、ヒ・ミ・ツ。)

 何があったのかは明らかではないが、少なくとも兄妹関係を破壊するような禁忌の蹂躙が試みられなかった一方で、キャラクターコレクション第4巻第7話のように想いの痛みに苦しみ眠れず兄の枕元でせつない涙をこぼすことも、なくてすんだのではないかと想像する。


3.「お兄さまのレストラン」 〜年少者への責務〜

 第12話冒頭、クリスマス間近の街の賑わい。時計台では12時のカラクリが壊れているが、ここではその意味を、12人の妹達の関係を調整する役割の重要性と困難を暗示するものとして理解しよう。今回は、時計台を見上げる咲耶を通じて、そのような責務を負う者の苦労と喜びが描写されることになるのである。
 冬の冷たい空気に手を温めて待つ咲耶のもとに、鞠絵、千影、春歌、そしてミカエルがやって来る。イタリアンレストラン「TONIO RESTAURANT」のオーナーと「知り合い」だという咲耶が、そこでのスペシャルディナーに兄を誘うに際して、この3人にもあらかじめ声をかけたのだ。二人きりのディナーを楽しみたいはずの咲耶だが、個人的欲求が先日のお泊りの日までに満たされたからには、次に考えるべきは兄妹関係総体の調和である。咲耶ほどの年長者になると、こうして個人と全体の均衡を自分なりにとることが(真の均衡かどうかはさておき)できるようになっている。しかし5人分しか予約できなかった(事実にせよ故意にせよ)ため、咲耶が呼びかけたのはこの3人にとどまった。この後、兄の家を訪れると、先客として花穂、衛、雛子、亞里亞の4人が既にいたが、彼女達が妹達の中での年少組であるとすれば、咲耶達4人は年長組、そして今回登場しない可憐、白雪、鈴凛、四葉の4人はその間ということになり、アニプリと異なる原作的年齢設定を見て取れる。ただし、アニプリ第19話では中3の咲耶・中1の鞠絵・中2の春歌が一緒に弁当を食べている場面があるので、年齢差があっても親しい関係という可能性がないわけではない。(ついでながら兄家のリビングでの光景では、スリッパがちゃんと全員分あることに注意しておく。)
 兄と一緒に食事に行けると思いきや、ぬか喜びに終わってしょげる年少者達を見て、咲耶は意を決した。

咲耶「いいわ。雛子ちゃん達が、お兄様と行ってらっしゃい。」
衛 「いいの?」
咲耶「うん。」

 大喜びする年少者達だが、幼い妹達を優先しようという咲耶の年長者としての毅然たる姿勢はじつに立派である。思えば、彼女のこの配慮は、TV放送時のサブタイトルさえもが「お兄様」ではなく「お兄さま」と妥協しているあたりに既に示されていたのだが、もちろん年長者の責務はこれで果たされるにせよ、兄と食事を楽しみたかった咲耶達の欲求は満たされないままとなる。兄妹関係を調整すべき年長者の役割を全うするために、年少者に配慮した結果、自己欲求を抑制しすぎるというこの問題は、過剰な自己抑制という点で第4話冒頭の花穂のそれと重なり合うが、同時にまた年長者独特の葛藤の仕方でもある。妹達の兄への欲求は等しく満足されねばならないという前提がある以上、これは兄妹関係総体として見れば、12人の妹達の調和を乱すことにも繋がりかねなかったのだが、だからといって年少者への配慮をやめるわけにもいかない。そして、花穂が千影の助言によって葛藤を解決しえたのに対して、彼女達最年長者は自力で解決するか、我慢するほかない。

咲耶「雛子ちゃん達、よかったわね。」
鞠絵「そうですね…。」
春歌「ですが…。」
千影「兄くんと食事ができないのは残念だけど、ね…。」

 やはり3人も、年少者に譲ることには同意しつつ、自分の欲求を抑圧することに辛さを覚えている。とくに鞠絵は久しぶりに街に下りてこれたこともあり、できれば兄と語らいながらの食事のひとときを持ちたかったことだろう。(ところで、今回登場していない4人の妹達は何をしていたのだろうか。鈴凛と四葉はクリスマスの準備をこっそり進めていたのだろうし、可憐と白雪はお菓子作りに励んでいたのかもしれない。だが、咲耶達が兄と食事する計画を立てていることを、誰も知らなかったのだろうか。年少者が兄の家にこのタイミングで遊びに来ていたのは、もしや可憐が衛達にそう仕向けたのだろうか。第8話で鞠絵への気遣いを示しつつ、今回そのような策略に及んだとしたらまことに恐るべしだが、これを裏付ける証拠はもちろん何もない。また、病人の鞠絵が飲食店に行く予定だったことや、寒風の街に現れたこと、また第11話で水泳していたことなどについては、彼女の病気と相容れない描写と批判されることがある。しかし論者はむしろ、考察5で述べるように、彼女の病気の特徴を示す鍵だととらえる。)
 これを受けて、咲耶は皆を誘った立場ということもあり、年少者を優先することと、自分達年長者の欲求を満足させることとを、何とかして両立させようと考えた。食事の席を増やすことはできず、鞠絵のことを考えればあまり日程を動かすことも難しい。あらゆる条件を鑑みた結果、咲耶の脳裏に一つのアイディアが閃いた。「まだお兄様とレストランに行けなくなったわけじゃないわ。」と微笑む彼女が考案した、ディナーの席はとれずとも兄と一緒にレストランにいられる方法。それは、4人がレストランの1日アルバイトとして雇われることだった。このアクロバティックな自力救済策を、咲耶は知り合いであるオーナーに頼み込むことで難なく実現しえた。(いったいいかなる「知り合い」なのかと勘ぐる向きもあるが、級友として面倒をみてやっている外国人留学生の父親だとか、日曜日のバザーの常連だとか、様々に考えられる)。

咲耶「うーん、いい感じ。みんなエプロン姿が似合いそうねっ。」

 当初は何事かと驚いた鞠絵達だったが、話を聞けば、皆これに賛同することになったのだろう。それにしても千影までも「エプロン姿が似合いそう」と言われるとは、アニプリでは考えられなかった事態である。
 ディナーの夜、おめかしした年少者達が、兄に連れられて瀟洒なレストランに到着する。

衛 「でも、咲耶ちゃんボク達と替わっちゃって、ほんとによかったのかな?」
兄 「後でちゃんとお礼を言おうね。」
衛 「…うん!」

 この会話と、花穂から借りたスカートが涼しくて落ち着かない様子とは、衛がちょうど子供から脱却しつつある端境期にあることを物語る。衛も他の妹達への配慮を考えるようになりつつある(そして兄は衛がそのためにできることを教えている)が、しかしいわゆる女の子らしい服装には未だ抵抗を感じている。席に着いてそんなやりとりをしていると、前菜の盛り合わせをエプロンドレス姿の咲耶が運んでくる。何も伝えられていなかった兄達は、その姿に驚き、そしてとくに年少の妹達は喜び見とれる。
 この後、鞠絵はオリジナルのカクテルジュースを案出し、千影はこれをシェイクし、春歌はシャンパンのコルクから兄を防御する。飛んだコルクを花穂がキャッチするのに論者は驚きを隠せなかったが、ともかく年長者達は、兄と年少者達のためにと最大限に心を配る。とりわけ鞠絵は「雛子ちゃん達が、喜んでくれるかなって思いまして。」とグラスに花を飾りつけるなど、本来の性格に加えて療養所で子供達の相手をしているだけのことはある(第8話参照)という細やかさを見せている。これに千影は「それもいいアイディアだね…。」と応え励まし、また「兄君さまを、ちゃんとお守りしましたっ。」と興奮している春歌には、咲耶が「?…何だか分からないけど、さっすがぁ!」と合いの手をいれるなど、年長者達はお互いの間でも支援しあい、ディナーをより喜ばしいものにしようと団結して取り組んでいる。とはいえ、ウェイトレス服に着替えさせてもらおうという花穂のお願いを聞き届けたり、あまつさえミカエルまでもが給仕したりというのは、さすがにレストランとしては問題ありと思われるが、よほど咲耶が無理を通したのか、オーナーが話の分かりすぎる漢だったのか(ウェイトレスが可愛い少女ばかりという評判も期待したか)、あるいは千影の術なり食事に混ぜたなりが効果あったものか
 だが、年長者達のこの努力は、年少者達のためだけのものではない。デザートを早く出しすぎるのでは、と心配する鞠絵に、咲耶は答える。

咲耶「お客様にデザートを早めに出しちゃえば、私たちの仕事も早く終わるし。」
鞠絵「で、でも…。」
咲耶「仕事が終われば、お兄様とゆっくりお話もできるでしょ?」

 これに鞠絵も納得してしまうあたり、彼女も妹の一員なのだということを改めて確認させられる。もともと自分達の欲求と責務とを両立させるべくアルバイトにたずさわっている以上、欲求充足のために多少の融通をこっそり利かすことは必要悪として認められるべきだった。兄にもこの後の予定を「お兄様、他のお客様が帰るまで待っていて。そしたら私達とゆっくり、ね?」と密かに伝えはしたわけだが、しかし他の客が帰っていよいよ兄と年長者だけでゆっくり憩いの時間を、という時に、既に寝ている雛子を背負った兄が、申し訳なさそうに声をかけた。

兄 「咲耶ちゃん、ごめんね。送ってあげないと…。本当にごめん。」
咲耶「…残念だけど、しょうがないもんね。」
兄 「ありがとう。今日は、本当にごちそうさま。」

 ここでもまた年長者の責務が優先された。じいやさんが馬車で迎えに現れ、兄と年少者達を乗せて速やかに去っていく。一瞬振り返ったじいやさんが内心何を思っていたのか画面からは分からないが、やがて考察4で述べるように、亞里亞の社会化を助けてくれていることへの感謝の念を、論者はさしあたり想定しておく。見送りをすませて店内の片付けを終え、ようやく年長者達はテーブルを囲んでほっと一服する。

咲耶「みんな、お疲れ様。」
春歌「今日は、あっという間に時間が過ぎてしまいました。」
鞠絵「ほんとです、忙しすぎて、兄上様とほとんどお話できませんでしたもの…。」
咲耶「そうね…。」

 楽しかったことは間違いないが、兄と楽しい時間を過ごすという期待はまたもや肩透かしを食った格好になった。先の第10話と第11話で描かれたのは、咲耶個人の欲求と兄の意識とのすれ違いだったが、今回は、年少者への責務を仲立ちとした、年長者の献身およびその報酬の期待と実際の報酬とのすれ違いが生じている。咲耶達の気遣いに、兄も当然報いようと考えていたはずだが、年少者の世話を優先するという兄・年長者共通の原則に皆が従った結果、年長者の期待は裏切られることとなった。このまま今日が終わってしまえば、両立されるべきだった自己欲求と責務はかえって葛藤をそのまま強化されることとなり、やがては妹同士の関係、そして兄妹関係総体に亀裂が入ってしまいかねない。鞠絵に至っては報われない落胆のあまり、再び体調を崩すこともあり得ただろうか。自責の念にかられた咲耶はここで3人に謝りたかったのかもしれないが、そんなことをすれば3人とも咲耶を気遣う言葉をかけてくれるに違いなく、その思いやりまでも負担させてしまうことに、咲耶の心は到底耐え切れない。しかしだからといって、他に何を語ればいいのか。
 そんな重い沈黙を破って、入り口のベルが鳴る。

咲耶「あ、お店は、…!」
兄 「もう閉店なんですか?」

 おそらくじいやさんが用意してくれたボトルを1本抱えて、兄が戻ってきてくれた。年長者達は嬉しさに立ち上がり、兄をテーブルに迎え入れる。こうして兄によって今日一日の苦労は報われた。年長者達の葛藤は解消され、今後も年少者への配慮を行うことが年長者としての自分達を兄といっそう結び付けてくれるという確信を、強固なものにすることができた。

咲耶「私、絶対お兄様が戻ってきてくれるって、信じてた。」

 確かにこんな袋小路を救ってくれるのは、いつだって兄に決まっている。年長者の辛さを察知して相応の報いを与えてくれるのは、兄以外にない。だが咲耶が「信じてた」と言うときは、アニプリ第26話の例では内心強い不安を抱いていたことを暗示していた。そもそも兄を信じることが自明の理であるならば、わざわざ「信じていた」と言う必要はない。今回もベルの音を兄の帰還と直感できなかっただけに、おそらく咲耶は内心失意を抱きかけていたのだろう。とくに亞里亞と一緒に馬車に乗っていっただけに、兄がお屋敷にお泊りさせられる可能性を高く見積もっていたのかもしれない。だとすれば、今回兄は、年少者への責務を応分に果たした後、自分たち年長者も同じ妹として公平に扱ってくれていることになる。思えばこのディナーをめぐっては、最初から全く予定通りにいかず、せっかく集まってもらった3人(とくに鞠絵)に申し訳が立たなかっただけに、咲耶の喜びもひとしおだった。
 ついに実現した楽しい語らいのひととき。それは、年長者が示した年少者への気遣いと、これに起因するすれ違いや不均衡を兄が是正したこととによって、ようやく得られたかけがえのないご褒美だった。そして彼らの苦労にさらに報いるかのように、ちょうど雪が舞い降り始める。兄と並んで窓から眺める夜の雪、そのロマンティックな光景は、当初の予定通りディナーを共にした場合では、あるいは得られなかったに違いない。こうして兄妹は、年長者としての務めを果たそうという意志を、互いの協力のもとで、いっそう強固なものにすることができたのだった。

兄 「もうすぐ、クリスマスだね…。」

 日々の危機を乗り越えて、兄妹達の聖夜が今年も訪れる。


終わりに 〜二つの柱〜

 以上みてきたように、咲耶をヒロインとする3話を通じて描かれた、年長者の特性とそれに由来する問題のありようが明らかになった。個人的欲求や兄独占欲求と自己限定との葛藤という問題は、花穂ヒロインの3話と共通に描かれていたことから、リピュアAパートがこれをシスター・プリンセスにおける普遍的問題の一つとして主題化しているということが、改めて確認された。その一方で、年長者の年齢ゆえの女性的心理や年少者に対する責務、対外的意識といった要素は、とくに様々な「すれ違い」を生じさせながら、年少者と異なる展開の複雑さを物語に与えていた。そして、これらを多様な視点から描き出すためには、年長者の代表として咲耶を3話にわたって主役に据える必要があったと結論づけることも、年少者の代表だった花穂の場合と同様、登場機会の不均衡を完全には正当化し得ないという留保つきで、いまや可能となるだろう。
 こうして年少者と年長者のそれぞれの代表を花穂と咲耶に見出したとき、他の妹達の大半は、年齢的に両者の間に位置することにも気づかされる。つまり、リピュアAパート内における妹達の成長段階を検討するさい、花穂と咲耶は、他の妹達を測る物差しの両端として、それぞれ基準を示す役割を与えられているのである。それゆえ、次に考察されるべきは、この基準に即してとらえられる他の妹達の成長の諸相、そして各人の葛藤のありようということになる。


戻る