アニメ版『シスター・プリンセス』の主題歌映像

〜作品主題の徴として〜



はじめに 〜考察の視点〜

 『シスター・プリンセス』のアニメ版2作品の主題について、論者はそれぞれ次のように明らかにしてきた。すなわち、第一作『シスター・プリンセス』(以下アニプリ)では(兄妹関係の構築も含めた)兄妹の人間的成長と調和的共同体の拡大発展序論ならびに結論参照)、第二作『シスター・プリンセス Re Pure』(以下リピュア)のストーリーズパート(以下Aパート)では兄妹における「再−浄化」の相互性考察6参照)、である。このことを踏まえて作品全体を見直すとき、各話の内容からそれらの主題をただちに看取することは、しかし決して容易ではない。その原因としては、求められる視聴時間がそれなりに長いということも挙げられるが、何より重大なのは、第1話の段階でそれらの主題を予感することがきわめて困難という点である。アニプリの場合は、あまりにも独自の展開に視聴者が困惑してしまい、この作品を「逸脱」として否定するのもやむを得ないほどだった。また、たとえこの最初の危機を乗り越えても、「航が兄になる成長過程」という主題の一面は理解されやすかったが、「妹達の成長」というもう一つの面は見過ごされる傾向があった。これと同様にリピュアAパートでも、兄から妹達への支援という面は掴みやすかったが、このことが第1話であまりにはっきりと描かれる一方、妹達による兄の救済という逆方向の面は最終話まで明示されず、視聴者をこの兄に感情移入しずらくしてしまってもいた。もし論者の考察にある程度の妥当性があるとすれば、2作品のそういった主題が早い段階で視聴者に伝わらなかったということに、一般的評価が低い原因の一端を見ることができるだろう。主題が曖昧な第一印象を与える作品は、物語重視の視聴者を遠ざけ、表層的作品(例えば「萌えアニメ」)としてのみ楽しもうとする傾向を強めるからである。
 ところで、そのような主題は、大抵のアニメ作品では、誰もが最初に視聴しその後も繰り返し観ることになる箇所で、部分的に明らかにされている。言うまでもなくオープニングとエンディングであり、そこで流される歌は文字通り「主題歌」と呼ばれることが多い。アニプリとリピュアAパートでもこれらの歌が確かに定められており、毎回繰り返し視聴者に届けられていた。アニプリオープニングのイントロへの評価や、リピュアAパートの主題歌を担当したインディーズバンドへの賞賛の声は、放映当時からネット上にも残されており、これら主題歌へのファンの関心は決して浅くはなかった。だが、その主題歌が作品の主題を視聴者にどのように予め伝えているのかについては、これまで明確に論じられることはなかった。もっとも、上述の理由により「萌えアニメ」として一義的に理解された2作品に、主題というべきものを見いだしがたかったとすれば、あえて主題歌にそれを確認しようとする必然性はなかったのかもしれない。さらに言えば、これらの作品の主題歌について語るとき、アニプリ放映初期のオープニング問題(第1話・第2話の本編映像を散りばめたうえ、歌唱する声優の姿をも取り込んだ)を避けて通るわけでもいかず、真面目な話になりにくい、という問題もある。
 このような状況を踏まえつつ、本考察では2作品の主題歌について、論者がとらえた主題がどのように描かれているかを検討する。ただし、著作権などの問題を鑑みて、歌詞については(リピュア考察同様に)取り扱わず、背景に流れる映像にのみ注目する。これは、本来その歌詞と映像とが一体となって理解されるべき主題歌を、全体として検討するには全く不十分な姿勢であるが、まずは主題歌を作品の主題と結びつける端緒を映像からだけでも得たいというのが、ここでの論者の基本的態度であることを了解されたい。


1.『アニメ シスター・プリンセス』 〜時の流れ〜

 アニプリの主題歌は、オープニングが「Love Destiny」、エンディングが「翼」である。いずれも第1話から第13話までの前半部では1番、第14話から第26話までの後半部では2番を(歌詞の省略箇所はあれど)用いていた。このうちオープニングは後半部に入るさいに映像も大きく入れ替えられた。

(1)前半部オープニング

 まず、前半部の主題歌映像から見ていこう。第13話までの物語は、主として兄妹関係の構築を描いているが、オープニング映像もその展開を予感させるものとなっている。
 冒頭で、朝靄の遠い山並み、丘の上で光をうけて顔を上げる可憐
シスタープリンセス、開く
舞う花びら
朝の光の中に両手を伸ばす、光の中に兄
4人の手
鳥、島
咲耶はっと顔を上げる、玄関外の柱
雛子、顔を上げて玄関
花穂、パンジーの鉢を横に階段に座る
衛、テラス、スケートボード、風を受けて海の方を眺める
亞里亞、1丁目とエスカレータ、日傘を回して振り返る
四葉、夕日を浴びて2丁目?ワトソンくんを横に腕を組んで見上げる
鈴凛、船着き場、プロトメカの肩に乗り見上げる
可憐窓を開ける、航の部屋、既にテレビやラック、くまのぬいぐるみが存在
鞠絵、自室、寝そべるミカエル、開け放たれた窓をふと
千影、自室?縦に10本並びの蝋燭が横に4列
可憐の手から落ちるハーモニーボール、床にはずむとチョーカーに
春歌、夕日に染まる3丁目、見上げる
白雪、黄昏の学園、階段の脇に腰掛けバスケットをかかえて
眞深、ガルバン頭の山田、お尻をくっつけあってくるくる回る
じいや(漁師、マラソン、運転手)、マッキー像
制服姿の航、灰色の東京を背中向きに
皆井、本を開いて輝ける眼鏡かけたまま嘲笑を浮かべて過ぎ去る
燦緒、サングラス外してその場所で振り返る
航、背後に光を感じて振り返ると島の姿に
見上げる光の中から可憐、腕を広げて飛び込む
一同(可憐、雛子、咲耶、亞里亞、白雪、四葉、鈴凛、鞠絵、花穂、春歌、衛、千影)
煙突から煙の上る夕暮れのウェルカムハウス

(2)後半部オープニング

 航は既に兄としてほぼ確立している

右から可憐、四葉、春歌、花穂、咲耶、雛子
ロゴ
左から眼鏡外した鞠絵、白雪、亞里亞、鈴凛、衛、千影
鳥、島
可憐、船着き場のロープ止めのに腰掛けて猫を膝に抱き水平に見つめる
屈託のない笑顔は、第14話時点でのそれか
咲耶、前半と同じだがはっと見上げず最初から見上げている
雛子、同じ
花穂、同じ
亞里亞、回転数以外同じ
鞠絵、夕暮れに、窓の外を見ない
四葉、同じ
春歌、やや不安な表情に
白雪、やや口元が厳しく
衛、同じ
鈴凛、エスカレータの下りに一人、笑顔
千影、星空を背景に舞う花びら、前半とは違う並びの蝋燭、妖しい笑み
可憐、雛子、白雪、千影、亞里亞、春歌、鈴凛、四葉、咲耶、鞠絵、衛、花穂、眞深、亞里亞、雛子、可憐、山田&漁師じいや
2回目の雛子と亞里亞は成長の象徴か、それでも可憐
眞深と山田くるくる、背後のマッキー像とじいや消える、星はガイディングスターだけど複数
航アップ、背後に燦緒の横顔、航を横目で見て笑う
東京、歩く眼鏡の群衆、すれ違う島姿の航と黄色い帽子の少女
点滅する歩行者用青信号、はっと振り返る航、まばたき
少女の姿は消え、黄色い帽子が風に舞う、既に赤信号
帽子が消えると、妹達が玄関前にずらり
左から衛、白雪、千影、亞里亞、咲耶、雛子、可憐、花穂、鞠絵(ミカエル)、四葉、鈴凛、春歌
夕暮れ、流れる雲、煙突から煙の上るウェルカム

(3)エンディング

青空、生まれて流れては消えていく雲、やってくる飛行機雲
丘のてっぺん、上に何も載せられていない土台、風になびく草原、黄色い帽子の少女
追いかける少女
次第に夕暮れの色に染まっていく草原、どこまでも追いかけて走る
真っ赤な景色、木に寄り添って、山の向こうへとゆく飛行機雲を見送る少女


2.『アニメ シスター・プリンセス Re Pure』ストーリーズパート 〜いま、ここで〜

普通に作品を観た場合と、「山田太郎の溜息」で観た場合
前作アニプリとの関係をどうとらえるかで解釈が変わる。

(1)オープニング

時計塔のカラクリ
可憐、咲耶、白雪、衛、木立の中
四葉、鈴凛、花穂、鞠絵、療養所の近辺らしき風景の中
春歌、亞里亞、千影、雛子、路地裏の中
海を背景に飛ぶ鳥たち
可憐、日差しの中、木々に囲まれ腕を広げ夏の衣装で
カラクリ1時、夜の時計塔、廃工場のもみの木、風車
白雪、ブドウ園、エプロンの前掛けにブドウをいっぱい抱えて
夕日の中で兄(背中だけ初登場)におんぶされる雛子、鈴凛と四葉のバロムクロス、咲耶・鞠絵・春歌・千影の4人ウェイトレス
亞里亞、チェック模様の床の上に座り、赤い積み木で弧を描く、外側の左向こうから光が
衛、マウンテンバイクでトラムバスの横を駆け抜ける
雛子、タンバリンを叩く
花穂、ヒマワリ畑の中からボンボンを振る
千影、部屋の窓際で「月」のタロットカードを投げつける
四葉、ドーナツくわえる
咲耶、公園のらしきゲートに夕日を背中に立つ
春歌、和風の色合いの部屋、窓の外の雪を眺める
鞠絵、ミカエルと雪夜のトラムバスから降りて見上げる、こんな夜中なのになぜ、保護者を安心させるためか、そして愛の強さ、他の年長者だと意味深長になりすぎる
青空、流れる雲、輝く時計塔
きらめく海、街並み
四葉、鈴凛、兄、プロトメカっぽい雪だるまを完成、スコップ片手の兄は頬に汗を浮かべる
ここで兄の顔が初めて登場
駆けてくる妹達とミカエル
兄と合流し、互いに賑やかな
左から鈴凛、春歌、花穂、衛、亞里亞、可憐、兄、雛子、咲耶、白雪、四葉、鞠絵(ミカエル)、千影
雛子は兄の手をとり、可憐は亞里亞を阻みつつ兄の腕をとっている、咲耶も?
衛は花穂に抱きつく
その写真の横に、スノーなんちゃらを置く可憐の手

(2)エンディング

カラクリ
背景色だけが変化

終わりに 〜〜

 



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