まずは第1クールの物語だ!

<第1話から第13話まで>
 話数とサブタイトル 放映日
概     要   (太字は予告)
 第1話 「発進! シュヴェスター」 2/4
「ぼくの名は海神航。12人の妹達と暮らすこの島に、突然現れた謎の敵。このときぼくたちの運命は、ガラリと音を立てて変わってしまったんだ。精霊姫神シュヴェスター、放送開始! ……って、そんな馬鹿な!?」(番宣)
 アニプリから1年、『Wake Up !!』から3ヶ月。高校3年生になる航は、もうすぐ米国留学のために島を出る鈴凛の支度を手伝いながら、自分自身の将来を決めかね、時の移ろいに寂しさと焦りを感じていた。じいやに気分転換を助言され、プロミストパークの新装を機に兄妹揃って遊びに行くが、途中で千影と亞里亞、ミカエルが、怪しい気配に気づいた。その頃じいやは、突如出現したパペットと謎の女性”ミストレス”の攻撃によって致命傷を負う。航達も奇襲を受けるが、燦緒達の助けでようやく危機を脱してウェルカムハウスに逃げ込む。そこに待っていた瀕死のじいやは兄妹をリビングに集め、風景画の後ろに隠されていたスイッチを入れて、丸テーブルごと地下秘密司令室へと移動。この島に眠る”シュヴェスター”を用いて妹達と島を守れるのは航だけだ、と言い残してついに絶命した。
 悲しみとまどい、しかし外部モニターに謎の巨大ロボットが映し出されるに至り、兄妹は身を守るすべを必死に探す。そのとき、遠くで黄色い帽子の少女の涙がこぼれ落ち、妹達がじいやの指示で身に着けた(2年前の来島時には妹の証しだった)ハーモニーボールが鳴り響き、テーブルにブレスレットが出現する。これを装着した妹達は、その操作法をたちまち理解し、コントロールパネルを操っていく。島に隠された3体のロボットが起動し、燦緒が、そして訳も分からないうちに航も、その操縦席に乗り込む。残る1体には、たまたま出現地のプロミストパークにいた山田がなぜか搭乗してしまっていたが、ともかく3人は機体を何とか操作して敵バトルコートを迎撃する。しかし不慣れな操縦に大苦戦、モニターを見つめる妹達の悲鳴の中で、千影は何かの声を聞き、山田は「3体いるんだから合体できるはずだ」と思いつく。その言葉の通り、千影の力が風・火・地の3つの精霊を召還し、その制御下で精霊合体に成功した巨大ロボット・シュヴェスターは、精霊剣シルフィード・スマッシュで敵を一撃のもとにうち破る。どうにか勝利を収めて帰還する航達をしれっと出迎えたのは、じいやの記憶を移植されたコンピュータじいやだった。驚き叫ぶ航の声が響く中、黄色い帽子の少女は、風に帽子をはためかせながらマッキー像の上に立っていた。
 その頃、皆井は東京で美駆鳥居高校の首席として今日も模試全国1位をとりつつ、エリートの道を踏み外した航をふと思い出して笑う。参考書を開いて歩むその向こう、ショーウィンドウの中からガルバンの声が響くが、皆井はまるで気にしないのだった。
 第2話 「ぼくがやらなきゃ誰がやる」 2/11
「なぜだか知らないけど、敵が襲ってくるんだから、ぼくが頑張らなきゃ。お兄ちゃんなんだから、優しく強く! ……でも、どうやって戦えばいいんだ? こんなこと、参考書にものってないよ……。」
 メカじいやは、海神家がこの地球を守るために代々尽力してきたという唐突な秘話を航達に教え、奮起を促す。そんな馬鹿な、と叫び動揺しつつも、せめて妹達を守るために頑張らねば、と一応決意する航。一方、妹達は可憐達のように怯えて兄にすがったり、四葉達のように燃えてはしゃいだり。燦緒は現状を冷静に分析しつつ、深刻な顔の航と、ヒーロー気取りの山田を、機体の調査と訓練に誘う。空中機動の訓練でへとへとになって戻った航は、メカマンの服装で待ちかまえていた鈴凛と出くわす。留学よりもこっちの方が面白そう、と笑う妹に、航は複雑な想いを抱き、自分が頑張らねば、と張り切りすぎてしまう。そして妹達は、咲耶のリーダーシップのもと、それぞれの役割分担を決めて、兄のサポートに力を合わせようとひとまず心を一つにする。
 さて、最初の攻撃を撃退された敵側では、敗北に地団駄を踏むテイレクゼン博士と、それをなだめるように微笑む”マスター”、そして暗殺道具の手入れをするミストレスが、秘密基地にて次なる作戦を実行に移していた。パペットの一群がプロミストアイランドに再び侵入し、これを探知したマッキー像が警報を発する。咲耶は皆に指示を与えつつ島内にアナウンスし、可憐達は打ち合わせた通り各人の持ち場につく。ウェルカムハウスに接近するパペット達は、眞深やプロトメカ、そして来援した昇によって撃破される。航達は各人の機体に乗り込んで敵バトルコートに立ち向かうが、航の焦りが危機を招く。これを救ったのは、機体の操作マニュアルを既に知り尽くした鈴凛と、その的確な指示を落ちついて航に伝えたオペレータ鞠絵だった。危機を脱して合体に成功し、いざとどめを刺さんとするところで、この位置で撃破したら島に被害が及ぶことに燦緒が気づいた。攻撃の手を封じられたシュヴェスターは防戦一方となり、妹達が悲鳴をあげかけたとき、輝く羽を浮かび上がらせた雛子が「プロテクト・ラース」の声とともに両手を突き出すと、シュヴェスターと敵を包み込むように、大きな透明の球体が出現する。これを破ろうとする敵の攻撃がことごとく跳ね返されるのを見て、航は敵に剣を突き立て、大爆発をかわして無事帰還。兄の到着を待ちきれずに疲れたように寝入ってしまった雛子を抱き上げながら、航は、自分一人が妹達を守るために戦わねばならないのではなく、自分もまた妹達に支えられて戦っていることを実感した。
 その頃、皆井は東京で、参考書を読みながらいつものショーウィンドウの前を通り過ぎ、そのガラスを拭いていた清掃員が脚立から転げ落ちても、全く気にとめもしなかった。
 第3話 「3つの心が1つになれば」 2/18
「山田の考えた合体前の攻撃法を練習することになった。これがうまくいけば、少しは危ない目にあわずにすむかも……。いやいや、もっとやる気にならないと。若い命を真っ赤に燃やして! ……はあ。」
 燦緒による休日返上の厳しい訓練に、航はへばりそうになりながら、衛や花穂の励ましを受けて懸命に頑張る。一方、山田は合体前の弱点をカバーするために、3体によるコンビネーション攻撃法「ロケットストリーム」を考案する。ガルバンの真似にすぎないこのアイディアは、しかし四葉のチェキによって既成事実と化し、また操縦者の技量向上にも役立つと判断され、訓練メニューに取り入れられた。一点集中攻撃を可能にするための複雑な操縦に心身ともにくたびれた航は、道ばたでついに座り込んだところを、昇・玲香兄妹に見つかる。玲香は航に飲み物を差し出しながら、咲耶達を危ない目に遭わせないで、と言い捨てて立ち去る。昇は航に、あれでもみんなのことを心配しているんだ、と詫びるが、航は、妹達だけではなく彼らも自分が守っていることを、あらためて認識する。そして、集中攻撃法の訓練がうまくいかないことを昇にふと相談すると、別に合体前に敵を倒す必要はないんだろう、と何気なく訊き返されて、はっとする。
 敵バトルコートの接近に、直ちに出撃する航達。敵が合体を阻もうと企むのを見て、山田はロケットストリームにこだわり、燦緒もこの攻撃法を試みようとする。だが、航は、訓練の時と同様の危なっかしさで機体を操りつつも、その最後の一点集中攻撃を無理に成功させようとせずに、ヤマダインを足がかりにして敵の間接部を狙い、敵がバランスを崩したのを見てすぐさま合体フォーメーションに移行する。合体を阻止されなければ目的は果たされる、ということに気づいていた航は、こうして敵のスキをついて合体し、エルフィンシュッツで勝利することができた。燦緒は、「策士策に溺れる」か、と自らを振り返って笑うが、山田は努力が報われなかったうえにさっき自分が航の踏み台にされてしまって憤懣やるかたなく、また今回もプロテクト・ラースを用いた雛子は、やはり戦闘終盤でねむねむがいっぱいになってしまって兄の勇姿を見られず、後で大むくれとなった。
 その頃、皆井は東京で、問題集を読みながらいつものショーウィンドウの前を通り過ぎ、ガルバンを聞き流しながら「解き方なんて1つあればいいんだ」と独り言をつぶやいた。
 第4話 「5分だけわがままを」 2/25
「ぼくの活躍を見たいからって、力を使わない雛子ちゃん。幼稚園がたいへんだ!? 雛子ちゃん、悲しい顔して自分を責めないで。いつもみたく、げんげんげんきに変身しよう! ……変身?」
 技の発動とともに毎回眠ってしまう雛子は、公園でカズくん達とシュヴェスターごっこをしながらも最後の決めポーズを覚えておらず、幼稚園児の”パピーズ”トリオにそのことをからかわれてしまう。怒った雛子は、新たな敵バトルコートの出現にさいしても、プロテクト・ラースを使うことを拒む。駄々をこねる雛子を持て余しているうちに、シュヴェスターを狙った敵の攻撃の余波が、島の市街地、しかも幼稚園とケーブルTV局付近を襲う。その光景をモニターで目の当たりにした雛子は、損傷した敵バトルコートがとどめを刺されないまま撤退した後、すぐさまその現場へと駆けていく。幼稚園では、幸い園児達に被害はなかったものの、建物が大きく崩れ落ちており、瓦礫の撤去作業に航達も加わる。一方雛子は、ここでお世話になったことのある先生が怪我をしているのを見て「ごめんなさい」と泣きじゃくり、先生は雛子を抱きしめながら、みんなが無事だったことを喜ぶ。
 修理とさらなる改造を終えて、再び敵バトルコートが出現する。今度はわがままを言うことなく、みんなのために力を用いる雛子。プロテクト・ラースの輝きの中で、シュヴェスターは一気に敵を打ち倒す。その爆音も消え失せぬ前に、今度こそ眠るまいと頑張っていた雛子は、周りの花穂達の励ましも甲斐なく、やはり寝入ってしまう。夢の中で、雛子は自分のせいでウェルカムハウスが崩れかける瞬間に直面するが、そこに現れた航が雛子とともに家を支えて元に戻し、「無事でよかった」という先生の優しい声を耳にする。目覚めた雛子が見たものは、戦闘記録映像に、ケーブルTV局の編集と眞深のナレーションが入った、雛子のためのご褒美番組だった。さらに航達にも褒められて喜ぶ雛子は、しかし、幼稚園の者達になお申し訳なさを覚える。そこで突然現れたケーブルTV局のスタッフ凸凹コンビは、子供達を励ますためにちびっこ向けの島内番組を製作したい、ついては雛子達にも協力してほしい、とお願いする。航にどうしたいかを訊かれた雛子は、二つ返事で依頼を受ける。こうして、雛子達は島内テレビ作品『魔法のシスター マジカル☆ヒナ』に出演することとなり、公園では男の子がシュヴェスターごっこに興じる一方、パピーズたち女の子はマジカルヒナごっこをし始める。その様子を見つめながら、先生はウェルカムハウスの方に向かって微笑むのだった。
 その頃、皆井は東京で、参考書の古典文をつぶやきながらいつものショーウィンドウの前を通り過ぎ、しかし『マジカル☆ヒナ』が一瞬流れたのにつられて呪文を唱えてしまい、ふといぶかしげに振り返った。
 第5話 「ああ青春のホームラン」 3/4
「シュヴェスターに乗るのはどっちのチームか、野球で勝負することになってしまった。どうしよう……。しかも生まれて初めてやるっていうのに、エースで4番だって!? ぼくに打てるボールがあるものかなぁ……?」
 戦いに訓練にテレビ番組撮影にと、疲労が重なり学業に手がつかない航は、下校途中でふらつきながらも、心配する妹達に無理して微笑む。そこに麹町が率いる一団が立ちはだかり、島の安全のためには「へっぴり腰」の航達よりも自分達がメカを操るべきだと主張し、妹達と言い争う。ここで四葉の「それなら、スポーツで勝負デス!」という唐突な発案により、両グループは野球で勝負することになる。勝った方がシュヴェスターに乗りこむという異常事態に、航は頭を抱えるが、妹達や山田は盛り上がり、燦緒の熱血指導のもとで特訓が始まる。しかも航は否応なくエースで4番にさせられてしまう。
 そして試合当日。
白雪vsミナコのお弁当合戦は引き分け。相手チームにボブ・スタンバックスがいるのを見て山田は大喜び。当初やる気のない玲香は、敵軍に「ついうっかり」入ってしまってしかもホームランを放つ兄に激怒。試合は投手力の差で航チームの不利に進み、2点ビハインドで9回裏。先頭で代打眞深が起用されると、いきなり悪球をグワラグワキーンと場外へ。さらにボテボテのゴロをさばこうとした昇が玲香の一喝に思わずトンネルしたり、捕手のたか美がヒナ姿の雛子に見とれている間にランナー四葉が盗塁したりと、思わぬチャンスが転がり込む。2アウト二塁の場面で、3番燦緒は結局四球。ここまで4三振の航は応援を一身に受けて震え、ここで負けたら楽になれるかも、とふと思うが、四葉達の絶妙なダブルスチールや、応援する花穂達の懸命な姿を見て、弱気を振り払う。麹町のストレートをついに捉えた打球はしかしふらふらっと左翼に上がり、その途端に非常警報が響きわたる。航は瞬時にヘルメットを投げ捨てて麹町達に避難を命じ、妹達を連れて駆け出す。その迷いのない態度に呑まれた麹町は、我に返って「まだ勝負の途中だ」と吠えるが、昇がその肩を叩いて、もう勝負はついていると諭す。うなだれる麹町にボブが「ヘイ、ナイスピッチング!」と笑顔でサムアップし、暑苦しくも美しい男達の友情がここに結ばれる。
 火球を発射する敵バトルコートに苦戦するシュヴェスターは、地上からの麹町達の応援をうけ、昇のバッティングフォームアドバイスを伝えられ、さらに春歌の助けを借りて、敵の大火球を見事に剣で打ち返す。ぐらつくバトルコートをそのまま返す刀で切り伏せた航は、涙笑顔の麹町やボブのサムアップに、困惑しながらシュヴェスターの親指をびしっと向ける。しかし、これで一件落着と思ったその翌日、妹達と登校する航は、サッカーのユニフォーム姿で待ちかまえる麹町達を見て脱力するのだった。
 その頃、皆井は東京で、参考書を読みながらいつものショーウィンドウの前を通り過ぎ、ガルバンの時間を変更してサッカーの国際試合を放映していることにも気づかずに歩み去った。
 第6話 「You can do it ?」 3/11
「みんなと一緒に遊園地。白いお城、紫の薔薇、そしてお姫様と魔女。ってなんで二人ともピンチなの!? 舞台に立てばぼくも俳優、いま王子様が助けにいくからね! それと、大きな騎士様も。」
 眞深が学校の廊下で倒れ、航は慌てて保健室に連れて行く。軽い疲労ということでほっとする航だが、そこにやってきた燦緒は、「鬼の霍乱か」と笑って眞深の機嫌を損ねる。すぐに出て行ってしまう燦緒と入れ替わりに、可憐達が見舞いに訪れるが、春歌らがもし航に何かあったら自分が介抱を、と勝手に盛り上がり、眞深は「あんたたち、誰の見舞いに来たっつーの」と苦笑する。そんな眞深が皆の不安を取り除こうと人一倍苦労していることに、航はふと思いをいたす。ウェルカムハウスでは、可憐や咲耶が今日も大忙しで休む暇もない。そんな姿を見て、航は、彼女達に気分転換をしてもらえればと考え、休日にみんなでプロミストパークへ遊びに行こうと提案する。
 久々の遊園地ではしゃぐ妹達。年長者も年少者も区別なく、航は妹達を精一杯楽しませようと頑張る。眞深は燦緒と口げんかしながらも悪くない気分で、ただ、航と妹達の親しげな姿を眺めながら、昔のようにはそこに混じれないことに気づく。そんな眞深の複雑な表情をからかいつつ、咲耶は航をひっぱって新設の「フェアリーテイル・アクター」に向かう。パンフレットにも記載がないこの建物は、客がおとぎ話の登場人物となって楽しむというもの。そんな説明書きを読んでいた航と咲耶は、たまたま後ろにいた眞深ともども、受付役の服装をしたパペットによって、入り口の奥に引きずり込まれてしまう。建物の中で無理矢理に衣装を着せられ、王子役の航は、姫役の咲耶と魔女役の眞深と、いろんな童話をつぎはぎした物語を演じさせられる。だが、そこに現れる脇役が本物の刀で航に襲いかかるなど、シャレにならない舞台が進んでいく。何とか最後の場面まで乗り切ったとき、咲耶と眞深は突然処刑台に縛り付けられ、航は「どちらを助けるか」を迫られる。どちらかだけを選べずに刻々とタイムリミットが近づく中、眞深は航に咲耶を助けるように叫ぶが、航は動けない。
 そこに怒鳴り声が響き、建物の壁をぶち破って燦緒が現れる。眞深を救出に向かう燦緒を見て、航も弾かれたように咲耶を助けに走る。道化師姿のパペットサージェントが放とうとするボウガンから咲耶をかばって航は身を挺し、そのサージェントは燦緒と眞深によって倒される。脱出した航達は、敵バトルコート接近を知らされて各機体に乗り込む。妹を罠にかけた敵の卑劣さに怒り心頭の燦緒は、操縦席で何かの声を聞く。その声に導かれるまま、自分に任せるよう航に告げると、その初めての合体コマンドにしたがい3機は今までと異なる合体に成功、ここに燦緒がメインパイロットの人馬型リッターシュヴェスターが誕生する。ピエロのような敵バトルコートめがけて、リッターシュヴェスターは一気に駆け寄せ、ゼフィール・ブラストで洋上はるか遠くに吹き飛ばして粉砕する。シュヴェスターの新たな力に驚き喜ぶ航達、だがその一方で、眞深は自分を救った兄の愛を強く感じながらも航を意識し、咲耶は自分をすぐには選ばなかった航を誇らしく思いつつも心にしこりを残すのだった。
 その頃、皆井は東京で、問題集を読みながらいつものショーウィンドウの前を通り過ぎ、大道芸人のジャグリングのさなかを突き抜けてもなお気づかずに、そのまま歩み去った。
 第7話 「優しさが近すぎて」 3/18
「遊園地のこと、やっぱり怒ってるのかな……。咲耶ちゃん、そんなに無口でいないで。ぼく、格好いいお兄ちゃんになるって決めたから! そう、燦緒みたいに、きっと、そのうち、いつか……。」
 航がどれほど自分を大切に感じてくれているのか、やや不安に思えてきた咲耶。一方の眞深はといえば、あえて航と距離をおき、可憐と一緒に食料の買い出しに出かける。その帰路に、可憐が航のことを純真な表情で語る姿を見て、眞深はますます自分の想いらしきものを心の奥に封じ込めようとする。
 航は、咲耶や眞深が自分を避けているように感じ、やはり先日のあの1件が、とうなだれる。どちらもすぐに助け出せなかった自分に比べて、そこに飛び込んできた燦緒はあまりに格好よかった。これでは兄失格だ、と反省した航は、過剰な特訓メニューを実行しようとしてたちまち失敗し、勢い余って合気道場の昇に弟子入りを申し込む。たまたまそこにいた春歌にも醜態をさらしてしまったものの、航は妹達のために懸命に努力する姿を春歌に惚れ直してもらえ、また昇にも、効率的なメニューを作って励ましてもらう。家に戻ると春歌のお灸で脂汗を流しながら、航は決意を新たにする。
 そんな航をいまだ避けるようにしつつ、咲耶は表情を曇らせ続ける。その様子に気づいた鞠絵は、咲耶に絵のモデルになってくれるよう頼み込む。鞠絵の思わぬ願い出に、断り切れずに咲耶は春の女神の格好をさせられ、木陰に立つ。その姿に絵筆をとりながら、鞠絵は、「こんなふうに空の下で絵を描いていると、療養所の生活を思い出します」と微笑む。兄と一緒に暮らせないどころか、外に出ることも思い通りにならなかったあの頃。天気と体調のいい日には、こうして外の景色やミカエルや友人を描いていたこと。まだ見ぬ兄の姿を、こっそり想像で描いてみたこと。その兄に出逢えたとき、想像していたよりもずっとずっと素敵で、ずっとずっと幸せだったこと。そして今でも、兄と一緒にいられるその幸せに感謝し続けていること。鞠絵の穏やかな言葉に、咲耶は聞き入り、次第に表情を和らげていく。そんな咲耶に、鞠絵はキャンバスを示して、横にどなたかもうお一人いらした方がバランスがとれるのですが、とにっこり笑う。
 そこに鳴り響く非常警報に、咲耶は鞠絵の手をとってウェルカムハウスに戻り、いつもの咲耶らしくリーダーシップを発揮する。お灸のおかげで疲労が抜けた航も、くよくよせずに燦緒の指示に従い、敵バトルコートを迎撃する。リッターシュヴェスターに合体した後は、航はこの尊敬すべき親友の戦いぶりを学ぼうと努力する。精霊槍を構えたリッターシュヴェスターは、急降下に続いて敵直下で急上昇し、咲耶のエント・ランスで貫通、一撃でしとめる。その見事さに思わず拍手する航の純真さを見て、燦緒は溜息をついて苦笑する。
 帰還後、航は咲耶に連れ出され、鞠絵の絵のモデルにさせられる。疲れのためについ動きそうになる航の耳元で、咲耶は「あとでマッサージしてあ・げ・る」とささやき、動転して腕を振り回す航に、ミカエルは諫めるように吠え、鞠絵はもう少しで終わるから動かないようにとお願いするのだった。
 その頃、皆井は東京で、参考書を読みながらいつものショーウィンドウの前を通り過ぎようとし、ふと立ち止まって首を回すと、バキベキバキと凄まじい肩こりの音が響き渡った。
 第8話 「だめなダメな駄目な山田」 3/25
「山田、目立てないからってそんなにふてくされちゃいけないよ。もっとまっすぐに、もっとリアルに自分を見つめて。……って、山田ぁ。昇さんの方がパイロットにぴったりなんだってさ……どうする?」
 航や燦緒のように、自分がメインのシュヴェスターがあるはずだ、と息巻く山田。だが、鈴凛に調べてもらった結果、山田が機体の本来の力を発揮させられていないという衝撃の事実が突きつけられる。そんなはずはない、と目を背けたまま山田が街に繰り出すと、子供達がシュヴェスターごっこで遊んでいるのを見かける。そこに割って入り、自分が主役となるはずのガルバン的シュヴェスターを教え込もうとすると、パピーズの3人に馬鹿にされてしまう。パピーズのやすこは航、あいは燦緒のファンであり、昇ファンのしずかに至っては、山田の代わりに昇が搭乗すればいいのに、とまで冷たく言ってのける。
 幼稚園児にさえ冷たくあしらわれた山田は、家でガルバンを見ながら、「こうなったらみんなを見返してやる」とムキになる。そこにタイミングよく敵バトルコートが侵入し、山田は先頭を切って戦い挑む。だが、フォーメーションを守らない身勝手な戦い方はかえって不利を招き、かっこいいポーズばかりが先行するだけで被弾を回避できず、島に墜落してしまう。そのさい操縦席から転げ落ちて、山田は気絶しかけ、そこを狙ってパペットに襲いかかられたところを、よりによって昇に助け出されるありさま。お礼も言えない山田の独り相撲に愛想を尽かして、燦緒は昇に代役で搭乗してもらうよう勧め、コンピュータじいやもこれを承認する。昇は搭乗するなり機体の操作法を理解し、難なく戦闘に参加する。無事に合体したルフトシュヴェスターは、昇の的確な指示のおかげもあって、敵バトルコートをあっという間に撃破する。
 航達の帰還後、山田は昇にからみ、自分が乗っていればもっと楽勝だった、などとうそぶく。しかし燦緒に頭ごなしに怒鳴られ、その搭乗資格を剥奪されんばかりの物言いに航は山田をかばおうとするが、鈴凛がモニターしていたパワーゲージの上昇指数の高さや、コンピュータじいやが告げたシュヴェスターの秘密が、山田をさらに打ちのめす。シュヴェスターの駆動機関は、肉親とくにきょうだいの情愛によって、精霊エネルギーを変換するシステムである。それゆえ、きょうだいのいない山田は、本来シュヴェスターに搭乗する資格を持っていなかったのだ。たまたま最初に乗り込んでしまって以来、搭乗し続けていただけの山田は、もはやこの衝撃を受けとめられず、泣き喚きながら走り去るのだった。
 その頃、皆井は東京で、模試の成績票を開きながらいつものショーウィンドウの前を通り過ぎ、どの大学も合格圏内であることを確認して、あくまで当然の「エリートの資格」だと鼻で笑った。
 第9話 「ボキらしく誇らしく」 4/1
「辛い涙を呑みこんで、山田が走る。山田が燃える。漢の輝くときがくる、石ころからダイヤモンドになるそのときが。全国の山田ファンのみんなもお待ちかね! ……だよね、うん……。」
 先日のショックをくすぶらせたまま、山田は部屋にこもり続ける。今日も昇は航達とともに敵バトルコートを倒し、子供達もすっかりそれを受け入れ、パピーズは航、燦緒、昇のファンクラブを作ろうとする。気晴らしにでも行こうとそこを通りがかった山田は、子供達のひやかしに大人げなく怒るものの、自分の情けなさにやりきれない気持ちばかりがふくらんでしまう。一方、昇は燦緒達の信頼を得て、訓練を熱心に繰り返すが、機体のパワーゲージの上昇にもかかわらず、あと1種類あるはずの合体までどうしてもたどり着けない。それでも別段気にしない顔で航達と別れ、家路につく昇は、途中で待っていた玲香に小言をくらう。心配いらない、と妹を安心させようとする昇に、玲香は、にいさんがやらなくてもいいことなのに、と泣き声で駆け去ってしまう。両親を亡くしてしばらく孤独でいた玲香は、また兄をも失ってひとりぼっちに戻ってしまうのではないか、と不安でたまらない。その想いを突きつけられて、昇も、買い物袋を抱えたまま言葉を失う。
 3丁目のゲームセンターで普段通りお調子者らしく振る舞おうとする山田は、麹町と出くわし、ついけんか腰となって逆にのされてしまう。自衛団を組織している麹町は、男ならいつまでもクヨクヨせずに自分にできることを精一杯してみろ、と諭されるも、下宿に逃げ帰ってガルバンに見入る。そこに鳴り響いた非常警報に、山田は布団をかぶって耳を閉ざそうとする。だが、ミッチィの「今のあなたは偽物よ!」の言葉にはっと目を見開き、麹町の言葉を思いだし、ジャージ姿のまま家を飛び出す。「ボキにできること」と繰り返しながらあてどもなく町を駆け回ると、そこでは多くの人々が、みんなを守るために努力していた。そんな中、幼稚園の先生達がパピーズの3人を探しているのを聞きつけて、山田は3人がファンクラブ活動としてシュヴェスターの応援をしようとしていたのを手がかりに、一人で戦闘区域近辺まで走る。思ったとおりそこには、こっそり近づいたはいいものの恐くなって倉庫の陰に隠れておびえているパピーズの姿があった。
 流れ弾がそばをかすめるなか、山田は震える足を鞭打って影走り、3人のそばに駆けつける。その姿に気づいた昇は、一瞬の隙をつかれて敵の攻撃をくらい、倉庫のそばに墜落する。3人をかばって爆風を背中に浴びながら、山田は3人を安心させようとひきつり笑い、3人は泣きながら山田にしがみつく。腕を痛めて操縦席から転がり出た昇は、山田に後を託す。「だ、だけどボキは」とためらう山田は、パピーズの自分を見つめる瞳を見て、覚悟を決めて久しぶりの機体に乗り込む。その背中越しにかけられた3人の「山田にーちゃん、がんばって」の声に、山田ははっと顔を上げ、腹の底から奮い立ち、「この山田にーちゃんに任せたまえっ」と応えて勇躍発進。その隙だらけのところに敵バトルコートの攻撃を正面からくらっても、びくともしないほどにまで山田の機体はパワーゲージを振り切る。守るべき「いもうと」達ができたとき、その者達のせつなる想いを背に受けたとき、山田はその「きょうだい」との絆によって、シュヴェスター搭乗者の資格をようやく勝ち得た。遠くからの声を耳にして、山田はついに第3の合体を導く。初見参のアシュラシュヴェスターは敵バトルコートの一斉射撃を6本の腕で全て迎撃し、その勢いのまま敵に体当たりし、思いつきの自力技サラマンダー・ナックルで木っ端みじんに吹き飛ばす。飛び上がって喜ぶパピーズの歓声の中、山田は初めての決めポーズに酔いしれた。
 明くる日の公園。シュヴェスターごっこに興じる男の子達にまじって、パピーズは3人で重なり腕をほうぼうに伸ばして「あしゅらしゅべすたー!」と真似をする。敵バトルコートの役をやらされる山田は、3人にポカポカ殴られまくってたまらず叫ぶが、「だって、にーちゃんのがいちばん強いんだよ」と笑う声に、思わずにやけて「ならばもっと遠慮なくやりたまへー」と答えてしまい、それを聞いた周囲の子供達全員にのしかかられて潰され、横を通りがかった凸凹コンビに「にいちゃんモテモテだねぇ」「うらやましいかぎりだぁ」と言われるのだった。
 その頃、皆井は東京で、参考書を開きながらいつものショーウィンドウの前を通り過ぎ、ガソバルプラモの限定品プレゼントCMに立ち止まるものの、「何だ、パチモンか」とつぶやいて歩み去った。
 第10話 「赤い血潮はその色の」 4/8
「バトルコートがたくさんやってきた! 群がる敵へと身を躍らせてみたけれど、頑張りすぎると妹達が危ないなんて……。でもこのままじゃ負けちゃうし、どうすればいいんだ、教えてくれシュヴェスター!?」
 敵の秘密基地にてテイレクゼン博士は、これまでの戦闘記録を鑑みて、シュヴェスターのエネルギーの限界を見きわめるために複数のバトルコートによる攻撃を計画する。それを尻目にミストレスは娘の態度と能力についてぶつぶつ文句を言い、マスターは新たな部下獲得の算段について何気なくほのめかす。
 プロミストアイランドでは、鈴凛が発明した操縦者専用ブレスレットを試しつつ、軽く訓練する昼下がり。その合間に、航達はコンピュータじいやから新たな注意を与えられる。シュヴェスターは兄妹の絆をエネルギー変換の媒介にするが、そのシステムは各人の心身への影響をもたらしかねないものであり、とくに能力や技を用いたとき、その媒介者である妹に副作用が出てしまう。プロテクト・ラースのときに雛子が眠ってしまうのもその現れだ、と分かったのだ。航達は相談のうえ、妹達を心配させないように気遣いながら、みんなの身体検査を行うことにした。検査室代わりに用いるリビングの中から、衛が咲耶にブラをつけたらとからかわれて恥ずかしがる声や、春歌のプロポーションを褒め称える声、体重計に乗った花穂の悲鳴、四葉が可憐や白雪の下着をチェキする声などが漏れ出てしまい、廊下で航はやたらドギマギし、山田はこっそりのぞき込もうとして眞深とパピーズにはっ倒される。一応のところ、全く問題ないという結果は出て安心したものの、航達は、妹達にあまり無理をさせてはならない、と心に決める。
 非常警報とともに3人が出撃すると、そこには4体ものバトルコート「ブロッカー旅団」が待ちかまえていた。ただちにアシュラシュヴェスターに合体して、敵の四方からのクローアームを受けとめるが、敵はそのアームを通してシュヴェスターのエネルギーを吸収しにかかる。大技を出すことにためらい、またその実行も難しい状況で消耗するシュヴェスターは、とうとう合体が解けてしまい、個々の機体がバトルコートに襲われる。ついに敵の円月回転攻撃を回避しきれず、妹達の悲鳴の中でワタライダーが地面に叩きつけられて航は昏倒しかける。その瞬間、遠くに声が響き、ワタライダーの目が赤く輝いて雄叫びとともにパワーゲージを振り切ると、たちまち他の2体と合体してルフトシュヴェスターとなる。航は朦朧とした意識のまま、敵の再度のアーム攻撃を一振りでたたき斬り、衛の力であるブランシャール・ダッシュによって高速機動して敵を次々と屠っていく。その攻撃は、最後のバトルコートの背後に島があろうとも、構わず精霊弓の照準を合わせるという見境のなさで、咲耶や燦緒達の声にようやく我を取り戻した航は、慌ててプロテクト・ラースを用い、エルフィンシュッツで敵を射抜いた。戦闘終了後、航は自分のしたことに頭を抱えて苦悩し、出迎えた妹達の無事な姿に、安堵しつつも深く頭を垂れる。また、バトルコートの残骸を調べていた昇は、その中に気になる部品を見つけ、そっと懐にしまい込んだ。
 その頃、皆井は東京で、身体検査の結果表を開きながらいつものショーウィンドウの前を通り過ぎ、「また眼鏡を作り直さないと……」と面倒くさそうにつぶやくのだった。
 第11話 「恋は突然やってくる」 4/15
「衛ちゃん、胸のはしっこがウズウズするって、なにかの病気? うわぁっ顔も真っ赤だよ大変だ、すぐに病院に行かなくちゃ! ……え? 燦緒にしか治せないって、それどういうこと?」
 ある日の明け方、衛は、夢の中でお姫様の格好をして白馬の王子と出会う。あまりに少女趣味な夢に衛は飛び起き、照れ笑いしながら、いったいあの王子様が誰なのかと首をかしげる。朝のランニングに出かけるさいには、並んで走る航の横顔をつい盗み見たりもするが、亞里亞や雛子が読む本の影響かも、といったんは考えるのをやめる。ところが翌朝も同じ夢を見たうえ、その馬上の主が、なんと燦緒だったことに叫んでしまう。一度気になってしまうと、トレーニングなどで顔を合わせるのも恥ずかしく、どうにも落ち着かない。リビングでぐるぐる回っていると、可憐達が作っていた『マジカル☆ヒナ』用の衣装を試着させられ、ちょうど「花の女王コンテスト」のドレスを着せられたところを航と燦緒に見つかり、燦緒に何気なく可愛いと言われて、真っ赤になってリビングを飛び出す。呆然とした航達は、眞深にノゾキと思われたんだろうと諫められ、後で衛の部屋に謝りにいくが、衛は部屋から出てこず、ドレス姿のまま膝をかかえて座りこむ。
 夕方、普段は滅多に入らない台所で、衛は白雪に、料理のことなどいろいろと尋ねる。衛の珍しい振る舞いに、白雪は航に何か作ってあげたいのか、と訊くが、衛はうろたえてしまう。様子を妙に感じた白雪に相談された可憐と咲耶は、それとなく衛を見守ることにする。その咲耶は、防衛体制についての打ち合わせで、燦緒の気遣いに助けられる。兄の態度に眞深は何か感じるところがあるが、黙って眺めながら、何も気づいていない航の方をつい見てしまう。
 夜中、眠れない衛は家を抜け出して、マウンテンバイクで島の中を駆けめぐる。星空のもと、風を切ってどこまでも走り続ける衛。ところが、そこにパペットが出現し、非常警報が鳴り響く中、衛は必死に逃げるもののついに追いつかれてしまう。しかしそこに飛来したアキオーラスがパペットを追い払い、プロトメカの援護をうけて衛はウェルカムハウスへと帰還する。妹達が揃ったところですぐさま合体したリッターシュヴェスターは、不慣れな夜戦で敵バトルコートに翻弄されるが、衛のブランシャール・ダッシュで一気に距離を詰めると、咲耶のエント・ランスで敵を貫き、撃破する。皆が歓声を上げる中で、衛は、星空を駆けるリッターシュヴェスターを見つめながら、夢に出た白馬の王子を重ね合わせる。自分を救い出してくれた燦緒が、その人なのだ、と確信して。
 その頃、皆井は東京で、参考書を開きながらいつものショーウィンドウの前を通り過ぎようとするが、せっかく眼鏡を新調したのに、なぜか突然現れた暴れ馬に踏みつけられて台無しになってしまった。
 第12話 「夢の終わりは、夢の続き」 4/22
「今日もおかしな衛ちゃん。なにもかも上の空かと思ったら、突然張り切っちゃったり。そんな衛ちゃんに、ぼくは何をしてあげられるんだろう……。あ、もしかして、これってシュヴェスターのせいかも!?」
 せつない想いを胸に抱きながら、早朝のランニングに休まず参加する衛。一緒に走る兄の向こうに、憧れの燦緒の横顔がある。照れて口ごもったり、逆に目一杯明るく振る舞おうとしたりと、その感情の振り幅は大きく、航もその微妙さに気づく。可憐に尋ねてみるものの、可憐も心当たりがないと首を傾げる。そのとき航は、もしかしたら雛子と同じく力の行使による副作用ではないかと思い至り、コンピュータじいやに検査を依頼する。
 衛は鈴凛と四葉と一緒に屋外で発明品の実験に取りくむが、そこに燦緒がたまたま通りがかり、衛は舞い上がる。目の前の燦緒が優しく声をかけるのに、衛はついに勇気を奮い起こして、燦緒が好きだと告白する。驚いた燦緒は、優しくしかしきっぱりと、衛とはつきあえないことを告げて立ち去る。あっさりふられてしまった衛を鈴凛達は慰めるが、動揺した四葉のせいで妹達にそのことが知れ渡ってしまう。ギクシャクした雰囲気のまま、敵バトルコートの出現にシュヴェスターが立ち向かうが、一同の心がまとまらず苦戦する。それでも自分の務めを果たそうとする衛の姿に、妹達も想いを一つにして、ようやく敵を打ち倒す。
 帰還後、航はコンピュータじいやから、やはり衛がシュヴェスターの副作用による感情過多の影響を受けている、と伝えられる。衛が燦緒にふられたことを知らないまま、航は自分の責任でこのことを皆に告げ、シュヴェスターで戦うことの危険性を理解してもらい、できるだけ危なくないように頑張るから、と約束する。あまりに間の悪い真相告白に、妹達は、その事実に驚いたのもさることながら、衛の反応を固唾を呑んでうかがう。だが衛は「なーんだ、そうだったんだ。どうりでおかしいと思ったよ」と笑ってみせ、夕食の団欒も兄妹とともに楽しむ。しかし、風呂場で悲しみをこらえている姿を鈴凛に見られてしまった衛は、思わず彼女の胸にすがりついて肩を震わせ、それでも自分の想いの全部が嘘なわけじゃないんだ、と涙する。
 翌日、庭の木陰でうつむく衛に、航は一緒に走ろう、と語りかける。兄の優しい声に顔を上げた衛は、兄が自分の手を引いて起こしてくれることに、初めて兄にリードされる驚きと嬉しさを感じる。いくぶん元気を取り戻した衛は、このあとテニスをしよう、と兄に甘え、コートに行きラリーを始めると、そこに燦緒と眞深が偶然やって来てしまう。気まずさを感じた燦緒達に、衛は、「ダブルスで勝負しよ」と笑顔で呼びかける。燦緒も微笑んで応じ、白熱したマッチの果てに、衛と航は何とか勝利をものにする。ガッツポーズとともに、「ボクとあにぃは最高のパートナー」だと喜ぶ衛は、うなずく航に寄り添って、ふと自分と兄の姿を、夢の中の姫と王子に重ねてみるのだった。
 その頃、皆井は東京で、問題集を開きながらいつものショーウィンドウの前を通り過ぎようとするが、唐突に出現したパペットの群れに囲まれて、有無を言わさず連れ去られてしまい、後には問題集とボロボロの眼鏡だけが残された。
 第13話 「ああっとお待たせハイパー皆井」 4/29
「皆井はぼくの中学校時代のクラスメート。学校大好き優等生の君は、今もやっぱり勉強に励んでいるのだろうか。……亞里亞ちゃん、恐い夢を見たの? 大丈夫、ぼくや千影ちゃんが守ってあげるよ。」
 亞里亞はこのごろ独り寝が怖くなり、添い寝をしてもらいたがって航を独占しようとする。航もできるだけ亞里亞のためにと努力するが、さすがにあんまりなわがままは聞き入れようがない。普段よりも神経過敏で「くすん……」と泣きやすい亞里亞に、航も妹達も困惑するが、その態度の背後に「怖い夢」という何かがあることに気づいた千影は、自分の秘術を用いて、特別にその副作用を引き受けられないか、あるいはせめてその夢を覗きこむことができないか、と試みる。これに何とか成功した結果、千影は、亞里亞が見ていた悪夢を目の当たりにする。それは、妹達に似た顔の邪悪な存在が兄を奪い去ろうとするもので、夢の中で千影はその存在を撃退しようとするが、かえってその強大な力に屈しかける。闇に呑みこまれる瞬間を何者かの働きによってあやうく救い出された千影は、黄色い帽子の少女のおぼろげな後ろ姿を最後に見つつ、覚醒する。汗まみれになって起きあがった千影は、そばに控えていた航の声に薄く微笑んでその腕にもたれかかり、小さく溜息をつく。しかし千影は今後も時折、予知夢としての悪夢と白昼夢に苛まされることになってしまった。
 一方、敵の秘密基地に連行された皆井は、真新しい眼鏡をかけさせてもらい、マスターとミストレスによる勧誘を受けていた。航達やシュヴェスターとの戦いの記録映像を見せられながらも、馬鹿馬鹿しい、と嘲笑して取り合わない皆井だが、マスターは、そんな皆井がこの2年間、ライバル不在の空虚な時間を過ごしてきたことを鋭くえぐる。中学校で最高の競争相手だった航も、それに次ぐライバルだった燦緒も今はおらず、模試は楽勝な相手ばかり。本当なら美駆鳥居高校に1年遅れて入ってきた航を思いきり見下してやれたはずなのに、その航は島でのうのうと暮らし、さらにそのうえこんな戦いの日々を勝ち続けている。皆井のかつての対抗心は今もなお心の底でくすぶっており、、内心飽き足らないものを感じていたことに、皆井は言葉巧みに気づかされる。その闘争心や、再び航をうちのめしたいという歪んだ欲望を、マスターの催眠術によって煽られた結果、ついに皆井は、平凡な日常を超えて完璧なエリートとなるために、そして航を今度こそ完膚無きまでに打ち破り、自分の足下に跪かせるために、この組織に参入することを決意する。テイレクゼン博士による改造手術を受けた皆井は、冷徹な知性と鋼の意志、そして超人的な肉体能力を兼ね備えたコマンダー皆井として生まれ変わり、バトルコートを操ってプロミストアイランド攻撃の指揮をとることになったのだ。

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