(3)「根っこ」な活動たち

 川越「根っこの家」ではウイークデー集会や「サンデーパーティー」「サタデーナイトパーティー」等が行われており、ここで知り合った「根っこ夫婦」は2000組を越える(「友情Dream」Vol.430)。ロッテのサンデー小野(晋吾)の両親もその一組である。最近の集会の中味は歌唱教室(金城広子)、俳画教室(三浦嘉子)、盆踊り教室(三浦絹代)、「夜のおたのしみミーティング」(コーラス、ダンス、ゲーム)などなど、ナウなヤングが喜びそうなものばかりである。「暗黒太極拳」で知られるギャルゲー「センチメンタルグラフティ」のコピーは「せつなさ炸裂」だそうだが、この論理でいえば根っこイベントは「たのしさ炸裂」とでもいえるのではなかろうか?これは決して誇張した表現ではない。例えば「友情Dream」Vol.421(1999.2)に「根っこの家 サヨナラ1998年 こんにちは平成11年!」集会特集という記事があり、「凄い!最高だ!こんな楽しさが、とれたての魚や新鮮な野菜のように、ピチピチと躍りあがっていたなんて!」というキャプションが入っている。
 最近はシブヤ・ハラジュウでピンポン(卓球)がブームだそうで(「根っこの会」調べ)、若者文化の最先端を行く「根っこの家」でも「ピンポンパーティー」を行っているらしい。、根っこな仲間たちが「信じられない。何とゼイタクなァ!待たずに凄い卓球台でピンポン出来るなんて!」と、大感動で3台の卓球台を囲んでいるそうだ。ちなみに老人看護業界でもぼけ防止にピンポンが注目されているらしいですねえ。

 ちなみに、根っこな活動家になるためには「根っこの会」に入会することが必要である。半年単位1,800円を(財)根っこの家に振り込むと領収書兼会員証が送られてくるが、その裏面に書いてある「約束 Creed」というのがイカしている。

創造 Creativity なにはなくても希望と工夫があれば、いつでも今から始めよう、幸せな青春をつくり出すために。
自由 Freedom はてしない宇宙に、のびのびとひろがる大きな人生を生きよう、平和な世界を作り出すために。
友愛 Friendship たすけあい、はげましあえる出会いの中から愛を育てよう。すばらしい人生をつくり出すために。
 会員証の裏には「切り取って定期入れのにでも入れて下さい」と書いている。実際、「根っこの家」にはラミネーターまで常備しているそうなので、根っこな人たちはこんなものをいつも持ち歩いているのだろう。ともあれ「根っこの家」や会活動参加の際にはこれが必要であるらしい。

 また毎年12月第1日曜に「ライブ青春」が開催され、会員有志によるダンスや会にゆかりのあるゲストのショーが行われる。もともとは8月下旬の「やぶいり根っこ大会」が前身であり、「友達の日全国大会」、「青春博」を経て現在の名称に至った。かつてはMALTA(1984)、杉本彩(1989)、田村英里子(1990,91)なども呼ばれていたが、最近は清田東鎧先生の「いろはにほへと」の詩吟や川瀬一雄先生の「相撲甚句」など渋めの路線で攻めているらしい。98年度は青山円形劇場で「ミュージカル風な表現」のライブ青春が行われており、99年度は10月24日安田生命ホールにて「友よ、明日は晴れる!」というミュージカル風即興実験劇場が行われた。

 根っこの会は毎年5月のゴールデンウイーク期間中に「洋上大学」を行っている。これは1972年から実施されたグアム・サイパン9泊10日の洋上研修である。第23回(1991年)からは豪華客船「ふじ丸」を使用しており、晴海埠頭から出港している。そもそもこの案は1963年の創立10周年全国大会(「やぶ入り根っこ全国大会」)で創立20周年に実施することが提案されたのだが、当時は大部分の会員の反感と無関心をかった。しかしおりからの高度成長を受けて予定よりも一年早く実現が可能となったものである。7月の台風シーズンの中、海員組合のストライキを破って第一回洋上大学が決行され、マニラでは船上にアキノ元大統領も招いている。
 「海の彼方から、日本および日本人、世界および地球をみつめよう。(中略)海から青春をみつめよう!海から人生をみつめよう!一万トン余りの客船で太平洋を南に渡っていこう!きっと変わる!おたがいの行き方が!!」という発想は当時としては斬新だったのだろうが、一方で「南十字星をみつめながら、再び帰ることのなかったわたつみたちの貴い犠牲を想う」という、少なくとも今の若者の感性ではシンクロが困難な側面ももっている。なお根っこの会ではこの洋上大学に極めて大きな思い入れをもっており、「洋上大学なくしては、根っこの家の存在も若い根っこの会の今日もありえなかった」とさえ語っている。しかし1999年の第31回洋上大学は折りからの不況の影響からか講師、添乗員等を含め、参加者377名(400名を切ったのはこれまで2回だけ)であり、出航前2週間の緊急会議では「船会社にペナルティーを払っても中止したらどうだろう。このまま私財を投げうっての出航なかつての特攻に等しい。」という意見も出たそうだ(機関誌Vol.423)。

 根っこの会の最近のトピックとしてはハカラメネットワークが上げられる。これは1995年に加藤会長が沖縄のみやげ売り場で買ったハカラメの葉3枚(300円)を増やし、その生育状態などを知らせ合うというものである。ハカラメは葉から芽という俗称の熱帯植物(セイロンベンケイソウ)で、その葉を持ち帰った若い女性は、「本当に葉から芽がで、白い根っこが出てきて思わず可愛い〜い!と叫んでしまった。」とか。そこで凶悪化する少年犯罪など「生き物のいのち」を育てるやさしさを喪失した時代にこの面白い植物を育てることで「いのち」を大切にする運動を展開し、やがて少年少女の心に地球と人間を考える心を芽生えさせよう、という壮大な計画なのである。

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