この文書は、家庭内で無線LANを利用しているユーザを対象に書かれています。 対象としているOSは現状 Windows XP/2000 のみです(この文章は、UNIXを使う ような方にとって易しすぎて退屈でしょう)。よって、この文書は以下のよう な方たちを対象にしていません。
最近では複数のPCを持っている家庭も多いようで、それらのPCどれからでもイ ンターネットを利用したい、と思うのは当然でしょう。その目的で家庭内に LANを組むのも一般的になっているように見えます。それらのPCは、例えばリ ビングと子供部屋と書斎といったように、あちこちの部屋に分散して配置され ていることが多いと思われます。こういったPCをLANで接続する場合、 オフィスでは有線のLAN(IEEE 802.3)を利用するとが多いでしょうが、家庭で は、壁に穴を開けたくない(マンションや貸家などでは開けられない場合もあ るでしょう)とか、ケーブルを壁に這わせるのも嫌、と考える人が多く、そう いった人は無線のネットワークを利用する傾向にあります。無線でネットワー クを構築するための技術は何種類かあるのですが、家庭ではネットワークにそ れほどお金をかけられないという事情を考慮すると、自然とIEEE 802.11a/b/g(いわゆる無線LAN)が利用されるのは当然といえましょう。
さて、有線のLANの場合と違って、無線LANは電波で通信を行いますから、アク セスポイントのある程度近くに行きさえすれば、誰でもその電波を送受信する ことができます。もしも通信が暗号化されたりせず、無防備な状態にあったな らば、見ず知らずの人(Aさんとしましょう)でも、PCをあなたの家の近くに持っ ていくだけで(例えば路上駐車した車の中から)、あなたの家にあるPCから行な うのと同じように無線LANのアクセスポイントを経由してインターネットへと アクセスすることが出来てしまいます。また、あなたの家の中のコンピュータ 間でファイルを共有していれば、Aさんはその内容を見たり、改竄したりといっ たことも簡単にできてしまいます。Aさんがどこかのサーバに攻撃をしかけた 場合、犯人を調査するとあなたの家から攻撃がなされた、という結果しか出ま せん。その結果、あなたへの損害賠償請求へ発展する可能性は常にあります (まだ日本では前例はないと思われますが)。ともかく、無線LANは有線のLANよ りも危険である、という点は覚えておいてください。
無線LANを安全に使うための仕組みは、いくつか考えられています。オフィス では、IEEE 802.1xという技術を利用するという解決法をよく見かけますが、 このための機器は一般に高価で、個人が家庭で使うにはあまり向かないように 思います(さらに、IEEE 802.1xにも問題は存在します)。今1つの方法として、 VPN技術を利用する方法があります。これは、ネットワークの中にもう1つ、仮 想のネットワークを作り、データなどはその仮想ネットワークを通して通信す る、というもので、表のネットワークが危険であってもVPNの技術がきちんと していれば、中の通信は無事です。大規模なものは企業などでも使われていま すが、PC-PC間という小規模なVPNを構築することも可能であり、そうすれば、 危険なネットワーク(=無線LAN)を使いつつ安全な通信が行なえるでしょう。
一口でVPNといっても、実際にどのソフトを使うかということになると様々な ものがあります。ここで、「家庭で使う」ということから、どういう条件が必 要なのか考えてみましょう。