某港にて。

らむだ:あー、長旅だった。
らむだ:日本の夏は、暑いな…

らむだ:ろんどんは冬だったもんなー
可 憐:ロンドンも北半球ですよ、お兄ちゃん?
らむだ:たまには地球も縦ロール
可 憐:最初の頃の白雪ちゃんみたい。
らむだ:それはそうと、ただいま可憐。
可 憐:おかえりなさい、お兄ちゃん!
らむだ:I shall return.
あんよ:それ違う。出て行くときの台詞。
らむだ:あうー
らむだ:何だ、君も出迎えに来てくれたのか

あんよ:「何だ」はないでしょうに。
可 憐:お兄ちゃん、長旅お疲れさま。
らむだ:いやーしんどかった
可 憐:可憐、とってもとっても不安だったの。でも、お兄ちゃんが無事に帰ってきてくれてよかった…。
らむだ:よしよし、心配かけたね。
あんよ:いいなー…。しかし飛行機かと思ったら船ですか。贅沢だなぁ。
らむだ:いや、安かった
あんよ:そんなはずないって。大体、時間もえらいかかるし。
らむだ:いや、ずっと寝てたから
あんよ:嘘つけ。どんな船だ。
らむだ:普通の客船。ただし2等寝台
あんよ:へえ、客船ってそういうのあるんだ。
らむだ:今朝久々に起きたら食事がカップ1杯だけでね、これが何とも味気なくて
あんよ:待て。『トラベラー』かっ。
らむだ:せめて『デュマレストサーガ』といってくれ
あんよ:同じだ。
可 憐:コールドスリープ、大変だったでしょ?
らむだ:身も凍るような思いがしました
あんよ:いや、凍ってたんだが。
可 憐:もしよかったら、可憐が温めてあげる。
あんよ:ぐはっ
らむだ:いや、だいじょぶだから。日に当たってればそのうち完全解凍するから
あんよ:まだどこか凍ってるのか。
らむだ:肝臓のあたりが何かシャリシャリと
あんよ:それ死ぬでは。
らむだ:「あたため」1分じゃ足りないよね
あんよ:人間レンジか
らむだ:731部隊みたいだよね
あんよ:うわ、帰国していきなりそういうネタを
らむだ:向こうの人たちって、こういう話通じなくて
あんよ:日本でも通じません。
可 憐:お兄ちゃん、はい。
らむだ:あ、ありがと可憐。
あんよ:何それ?
可 憐:お腹の中が暖まる飲み物です。
らむだ:「とんがらC」
あんよ:うあ
らむだ:ああ、効く…
あんよ:肝臓融けましたか。
らむだ:こんなに効いてインカ帝国
あんよ:あんた本当にロンドンにいたのか?
らむだ:何を疑う。ほらお土産も。
あんよ:あ、「ロンドン塔ペーパークラフト」…何て悪趣味な…。
らむだ:よくできてるよこれ。ほら、幼い兄弟の姿までここに
あんよ:やめれー。
可 憐:ロンドンタワーで売ってたの?
らむだ:うん。あとこの斧、あそこからこっそり持ってきちゃった。てへ
あんよ:返してこい。
らむだ:えーせっかく帰ってきたのに
可 憐:あんよさん、ひどい…。
あんよ:ああ、「あんよさん」に戻ってしまった…。でもその斧、きっと何か取り憑いているぞ。
らむだ:そう?
可 憐:お兄ちゃん、このナイフも?
らむだ:それは路地裏で拾った。えらい年代物っぽくて
あんよ:年代物のロンドンのナイフ…って…捨てろ!
らむだ:えー、もったいない
可 憐:お兄ちゃん、可憐もちょっと怖い気がするの。
らむだ:じゃ捨てよう。えいっ
あんよ:なむなむ
可 憐:お兄ちゃん、これはなぁに?
らむだ:PIAT
あんよ:あんた、何しに行ったんだ。
らむだ:だいじょぶ、弾は撃てないから
あんよ:そりゃ、まだ撃てたら不思議だが。横倒しにする対戦車砲とかもあった?
らむだ:あれはさすがに持って来れなかった
可 憐:わぁ、きれい…
あんよ:うわ、でかいブルークリスタルだな。
らむだ:それは可憐に。
可 憐:本当に?お兄ちゃん、ありがとう!
らむだ:むぎゅ
あんよ:いいなー…
らむだ:「ホープ」っていう宝石らしいんだけど
あんよ:それ呪われたブルーダイヤモンド。たちの悪いイミテーション土産だなぁ。
らむだ:アイルランドに渡ってタラの丘の近くを掘り返してたらさ、
あんよ:遺跡まで破壊してきたのか。
らむだ:失礼な、ちゃんと『古代への情熱』ぐらい読んではいる
あんよ:それ破壊者の自伝。
らむだ:で、そのまま野宿してたら、小人さんたちがわらわら現れて、向こうの地面を掘り返しているわけだ
可 憐:妖精さんがいたの?
らむだ:夢かと思ったんだけど。朝目覚めて、そこを掘ってたら、鍵つきの小箱が見つかって
あんよ:でどうした。
らむだ:鍵を斧で叩ききって、さっきのナイフでこじ開けたら中にこれが入ってた
あんよ:…まさか…。
可 憐:でも、どうして「ホープ」って名前が分かったの?
あんよ:あ、鋭い。
らむだ:小人たちが「パンドラの箱の宝物」って歌ってたから、そりゃ「希望」だろう、と
あんよ:話ができすぎだ。だいたい、ケルトの妖精がギリシア神話をなぜ知っているのか。
らむだ:あ、ばれた。
あんよ:ばれるわ。
らむだ:本当のことを言うと、スミソニアン流れの廃棄処分品を安く売ってたから、買い叩いてきた。
あんよ:それこそ嘘つけ。あるいはイミテーション確定。
可 憐:お兄ちゃんが可憐のために選んでくれたものだから、大切にしますね。
らむだ:うん
あんよ:…それは、そうか…。
らむだ:プレゼントは心だよ。君、シスプリでもそう言ってるじゃないか。ちゃんと観てるのかね
あんよ:あうー
可 憐:あんよさんをあまりいじめないでね、お兄ちゃん。
らむだ:あ、そだね。ぼくがいない間世話になってたわけだし
あんよ:可憐さん…。やっぱり優しい…。
可 憐:最近あまりいいことないみたいだから、追いつめると危ないと思うの。
あんよ:ぐはっ
らむだ:そうなんだ。
あんよ:酷いよ…。
らむだ:では、景気づけにこのエプロンドレスをあげよう
あんよ:うわ、アリスのだ。本物っぽい。
らむだ:実は、毎年開かれているアリスそっくりさんコンテストでちっちゃいこが着ていたものなのだ
あんよ:え、まじっすか。
らむだ:まぢ
あんよ:おおお。家宝にします。
らむだ:こっちはうちの未来のための市販品なのだ
可 憐:わぁ、かわいい。可憐も着てみたいな。
あんよ:萌え
らむだ:萌え
可憐:でも、コンテストの服って、どうやって持って帰れたの?
あんよ:あ、犯罪のにおい。
らむだ:失敬な。これを着けて何気なく脱いでもらいました。
可 憐:腕章?ええと、この英語は…「エプロンドレス回収委員会」
あんよ:待て
らむだ:一人くらいならごまかせますね
あんよ:やはりそれ犯罪。まさかそのうえ中身にまで手を出したとか。
らむだ:失敬な、君じゃあるまいし
あんよ:あんたにだけは言われたくないっ。
可 憐:あ、この服、名前が書いてありますよ。
らむだ:え、気づかなかった
可 憐:ウィリアム、ですって。
らむだ:え、あれ男の子だったの?
あんよ:これいらない。
らむだ:いや、可愛かったよ?
あんよ:そういう問題ではない。
らむだ:それにほら、ウィリアムなんて征服王の由緒正しい名前だし。制服王、なんちゃって
あんよ:これ制服と違う。
らむだ:誰かそういう幼稚園とか創ればいいのにね。
可 憐:うふふ、相変わらずね、お兄ちゃん。
あんよ:それ喜んでいいものか。
らむだ:いやーでもこういう会話ができるのは久しぶりだなぁ。やっと帰ってきた実感が湧いてきた
あんよ:やな実感だな。こっちはあんたの書いた文章で、「真性電波」呼ばわりされていたというのに。
らむだ:だってそうじゃない
あんよ:違うって。
らむだ:いいから言わせておけ。真実は兄妹の中にある。
あんよ:おお…。
可 憐:お兄ちゃん、かっこいい。
らむだ:えへへ
あんよ:うーむ
らむだ:君もそんなことを言ってるようでは、まだまだ修行が足りないようだね
あんよ:いあ、最近は考察書いて己を磨いてますよ。
らむだ:あれはまあ、なかなかのものだねぇ
あんよ:でしょ。
らむだ:無駄だがね
あんよ:なにー。あんたのえろげ雑感こそよっぽど無駄だっただろうに
らむだ:お、強気だね
あんよ:今では初代のあんたより、私の方が有名だし。
らむだ:でも可憐は君の妹じゃないけどね
あんよ:あうー
可 憐:お疲れ様でした。
あんよ:がーん
らむだ:とどめっぽい
あんよ:…ふ、ふふふ。
らむだ:あ、壊れた
あんよ:誰が
らむだ:失礼、それは前からだった
あんよ:うるさーい。私もあれ以来成長した、これくらいのことでへこたれはしないのだ。
らむだ:へたれはするけど
あんよ:それはそう。
らむだ:そいえば、君の一人称は「私」だったんだっけ
あんよ:はい。
らむだ:「ボキ」かと思ってた
あんよ:山田かい。
らむだ:では、その成長とやらを確かめてやろうかな?
あんよ:お、勝負するか。
らむだ:胸を貸してやろう
可 憐:お兄ちゃん、
らむだ:可憐、皆まで言うな
あんよ:萌え
らむだ:さすがに分かるようになったか
あんよ:私も伊達に「貧乳」を伝授されたわけではない。
らむだ:よくぞ言った。では、久しぶりに参ろうか。
あんよ:何で闘う?
らむだ:ここはオーソドックスに、「グッとくる言葉デスマッチ」
あんよ:了解ー。妹限定ですね。では、こい。
らむだ:「遠く離れていても、心は一つ、だよね?」
あんよ:あう
らむだ:どぞ
あんよ:「分かってるけど、だめ…だめなの…。」
らむだ:うは
あんよ:どうだ。
らむだ:なんの。「手をつなげば、一つになれるの。」
あんよ:お。「お兄ちゃん、疲れない?」
らむだ:どんな状況だ。「そばにいるって思うと、勇気が出てくるの。」
あんよ:「ほんとうのこと言ったら、きっと、お兄ちゃん…。」
らむだ:「夢に見ちゃった。」
あんよ:「お布団、暖めておいたから。」
らむだ:「今から編むんだから、マフラー買わないでいてね。」
あんよ:「お手々の比べっこ、しようか?」
らむだ:「妹からのお手紙で、がっかりしちゃった?」
あんよ:「お風呂うめちゃったから、ちょっとぬるいかもしれないけど。」
らむだ:「お兄ちゃんと同じ時間に起きてみようと思ったら、夜更かしさんになっちゃいました。」

          ※(省略されました…全て読むにはこちらをクリックして下さい。)

あんよ:…ちょっと待て。あんたの言ってるのって、全部ろんどん滞在中の実話?
らむだ:うん。手紙とか電話とか
あんよ:くわー
らむだ:よく分かったね、ってまさか貴様のも実話なのか
あんよ:私のは全部フィクションだよお。くそお。
らむだ:あ、そなの
あんよ:いきなり貴様呼ばわりですか。
らむだ:まあ気にしない
あんよ:それが本性なのね。だいたい可憐さんにそんなこと言ってもらえる機会なんてなかったし。
らむだ:きわどいのもあったけど、まあ妄念ならいいや
あんよ:それはそれで問題ですが。
可 憐:…あんよさん、酷い…。
あんよ:え?
らむだ:え?
可 憐:あんなことしておいて…。
あんよ:え?え?
らむだ:きさーん!
あんよ:うわー
らむだ:わしの可憐になんばしよっとー!
あんよ:あ、あんたどこの生まれだ。方言は正しく使わないと
らむだ:黙らっしゃい。覚悟はできているだろうね
あんよ:いや、何も心当たりないし。本当に。
らむだ:何もしていないことが問題ということもある
あんよ:え、それならちょっと嬉しいけど、でもだったら何かしてたら許してくれるわけ?
らむだ:極刑
あんよ:どっちみちだめぽ
らむだ:もっと早く始末しておくんだった
あんよ:あんた、こないだは自分から兄を任せたくせに。
らむだ:さもなくば、ほんとに分身を受け入れさせておくんだった
あんよ:やめれー
らむだ:チチ、チチチ
あにょ:しまえー
らむだ:で可憐、いったい何をされたんだい?
可 憐:あのね、可憐ね…。
らむだ:ふんふん
あんよ:鼻息荒いぞ。
らむだ:ハァハァ
あんよ:それじゃ二重セクハラ。
可 憐:可憐、考察の中で悪人扱いされたの…。
あんよ:あ、そのことか。
らむだ:なんだ、そんなことか
可 憐:だってお兄ちゃん…。
らむだ:大丈夫だよ可憐、あんな文章まともに受け取る奴なんていないから。
あんよ:うわ
可 憐:でも、もし可憐がひどい女の子だってみんなに思われていたら、どうしよう…。
らむだ:なに心配ない、それで可憐に近づく悪い虫が減れば結果おーらい
可 憐:でも、
らむだ:どのみちぼくは可憐のこと嫌いにならないし
可 憐:お兄ちゃん…大好き!
らむだ:むぎゅう
あんよ:あー…いいなー…。
らむだ:真実は兄妹の中に
あんよ:いや、それさっき聞いた。
らむだ:ああ、この、ない胸の感触が…
可 憐:…!
らむだ:あ、いや、その、
可 憐:お兄ちゃん
らむだ:ないのがいいんだ
あんよ:さすがだ。
可 憐:お兄ちゃんの、ばか!
らむだ:う゛
あんよ:あ、吹っ飛んだ。
らむだ:う゛ぉ
あんよ:あ、落ちた。
可 憐:お、お兄ちゃん!
あんよ:あ、浮いてきた。
可 憐:お兄ちゃん、大丈夫?
あんよ:あ、ナイフ刺さってる…って!
らむだ:ごふっ
可 憐:お兄ちゃん動かないで、いま止血と消毒するから!
あんよ:…何でそんな器具をお持ちで?
らむだ:あなたが落としたのは、このジャックナイフですか、それともこのスペツナズナイフですか?
あんよ:千乃ナイフ、なんちて。
らむだ:魔法陣グルカ兵…
あんよ:?
らむだ:クックリ…
あんよ:あんた大丈夫そうだね。
可 憐:お兄ちゃん、もし入院することになったら、可憐がずっと付き添っててあげるね。
らむだ:…ナースさん?
あんよ:萌え
らむだ:萌、ぐふっ…
可 憐:お兄ちゃん!
あんよ:うわ、血!血!
らむだ:…、…、
可 憐:だめ、お兄ちゃんしゃべっちゃだめ。
あんよ:え?何だ?
らむだ:…服は、白じゃなきゃ、いけない…
あんよ:医者はどこだ。

戻る