続いて第2クールの物語だ!

<第14話から第26話まで>
  話   数 放映日
概     要  (太字は予告)
 第14話 「さらば、優しき日々よ」 5/6
「勉強漬けだったけど、それなりに楽しかった東京時代。3人一緒だったあの頃には、もう戻れない、もう帰れない。いったいどうしてしまったんだ皆井、君と戦うなんて、そんな馬鹿な……!?」
 下校途中、航と燦緒は本屋で購入した参考書を手にして、皆井と3人でいた中学時代の昔話に花を咲かせる。あの頃を懐かしみ、皆井は相変わらず受験勉強に専念しているだろうかと想像しながら、航は、ずいぶん変わってしまった自分達の生活を振り返る。こんな戦い、いつになったら終わるのかな、とつぶやく航を励ましながら、燦緒は、それより敵の正体や目的こそが問題だ、と指摘する。敵の捕虜でも得られればいいのだがロボット(パペット)ではな、と険しい表情の燦緒に、航は、でも人間じゃないからいいこともあるよ、と笑う。この親友はどうにも心根が優しすぎると懸念する燦緒は、たとえ相手が人間でも敵ならば倒せ、と航を叱咤する。航は話を逸らそうと、来年はどうするか決めたのかと燦緒に問いかけ、それどころじゃない、と諫められたうえ逆に自分はどうなのかと聞き返されて言葉に詰まってしまう。
 数日後の学園、白雪のお弁当を食べようとする航達は、背後から重箱めがけて伸びてきた手を、山田のものと思ってあしらう。しかしその主は制服姿のパペットであり、驚いた航達はすぐさまこれを打ち倒す。学園の中に侵入したパペットは、サッカー部員姿や弓道部員姿、チアリーダー姿やおさげ委員長姿などで生徒に襲いかかる。対応に慌てる航達を屋上の陰から見下ろす謎の姿に、四葉は気づいて航達とともに追いかける。ついに図書室に追い詰めたとき、そこで悠然と振り向いた敵の姿は、美駆鳥居高校生のそれだった。皆井との予期せぬ再会に驚き、状況を忘れて近づこうとする航を、燦緒は制して皆井に問いただす。皆井は薄ら笑いを浮かべながら、「島で堕落した君達に本当のエリートの力を見せに来たんだよ、生まれ変わったこの僕の力をね」とうそぶく。そこに飛び込んできた山田と春歌は皆井に片手であしらわれ、航をかばうように構えた燦緒も、航もろとも一撃でのされてしまう。その無様なさまを[「格好悪いね」と嘲りながら、皆井は二人にとどめを刺そうとするが、ふと気が変わり、完璧な勝利を勝ち得てやろうとバトルコートを呼び出し、小型ポッドを用いて搭乗する。
 航達もただちにマシンに乗り込むが、合体するまで攻撃の手を加えようとしない皆井の態度に、航は躊躇し、燦緒と山田は激怒する。リッターシュヴェスターに合体して立ち向かおうとしたとき、航は、皆井が乗っているバトルコートを攻撃することはできないと言い張る。甘い考えを捨てろと叫ぶ燦緒も、妹達の力を使えずに防戦一方となり、皆井のパワーに押し切られそうになる。そのとき、モニターを見つめていた四葉が「兄チャマのために皆井さんをチェキするデス!」と体を輝かせ、彼女の力「シーリー・スコープ」を初めて発揮する。敵バトルコートのどこに皆井がおり、さらにどこに機体の弱点があるかをも察知した四葉の指示をうけて、燦緒は皆井を狙わないと航に約束しつつ攻撃許可をとりつけ、エント・ランスをフェイントに用いてゼフィール・ブラストで敵の弱点を粉砕する。シュヴェスターの巧みな攻撃に動揺した皆井は、屈辱をこらえながらポッドで脱出し退却する。これを捕らえようとする燦緒は、しかし図書室でのダメージが今になって響き、追跡できずに終わる。燦緒は雪辱を期し、山田は航に皆井のことを問いつめ、航はただ皆井の消えた空の彼方を見つめる。
 帰還後、事情を聞いた妹達は兄を気遣い、航はコンピュータじいやに改めて敵の正体が何なのかと詰め寄る。眞深は兄を治療して「あんまりカリカリしてるとまた足下すくわれるよ」と息を抜かせつつ、航のことを慮る。そしてコンピュータじいやは、航の苦悩を慰めながら答えをはぐらかし、心身ともに傷ついた航を妹達に委ねて休ませる。その後ろ姿を見送るじいやのサブモニターには、アンティークショップに隠された「海神家」の書が映し出されていた。
 その頃、皆井は敵基地で、テイレクゼン博士の悪罵を「今日はほんの小手調べだ」とかわし、マスターとミストレスからの期待の言葉に、任せておけ、と不敵に笑う。その傲慢な後ろ姿を見送りながら、ミストレスは唇の橋を歪めて微笑むのだった。
 第15話 「強くなるチャンス」 5/13
「友達と戦うことに悩むぼくを、みんなが心配してくれる。傷ついたときにしか見えないものが、衛ちゃんを強くする。眞深ちゃん、ぼくはやっぱり弱虫なのかな……?」
 皆井のことで悩み落ちこむ航と、それに苛立つ燦緒を見て、眞深は何とか場を明るくしようと努力するが、空回りしてしまううえ、航のことをつい意識してぎこちない。ベンチで缶の緑茶を飲みながら溜息をつく眞深に、サイクリング中の衛が気づいて、どうしたの、と声をかける。別に、とごまかす眞深は、あんたはいつも元気だねぇ、と衛をからかいつつ、その衛が先日は燦緒と一悶着あったことを思い出して口ごもる。衛はとくに気にする様子もなく、元気がとりえだもんね、と胸を反らし、そういえば燦緒さんはどう、と尋ねる。あのときの痛みを感じさせずに、また4人でテニスやろうよ、と笑う衛を見て、眞深は、その屈託のなさに眞深も呆れながら微笑む。しかし衛は、あのとき自分を引っ張ってくれた兄を今度は自分が引っ張ってあげなくちゃ、そのためにはボクが元気でなくちゃね、と大人びた表情を見せ、眞深ちゃんもあにぃを励ましてあげてね、と言い残して去る。兄のために笑顔でいつづけようとするその後ろ姿に、眞深は言葉を詰まらせて返事もできない。
 公園までやって来ると、チアリーダー姿の花穂が熱心に練習している。以前よりもずいぶんと上達したことを、眞深は拍手で褒める。照れ笑いを浮かべた花穂は、でも本当は早く自分の力が使えるようになりたいの、でもなかなか出てきてくれなくて、とうつむく。衛の言葉を思い出した眞深は、いまは花穂ちゃんの応援が一番の励みになるよ、と明るく答え、なんとなく納得した花穂も、お兄ちゃまがはやく元気になれますように、と願いを込めて再びバトンを空に飛ばす。
 その空を横切るように、突然皆井が飛来し、彼から逃げようと駆けてきた航が這々の体でやって来る。驚いて妹達をかばいながらも、航は皆井と戦おうとしない。皆井は航の言葉を負け犬の遠吠えとして聞き流し、航をじっくりいたぶろうとする。そこに到着した衛は「あにぃを困らせるな!」とマウンテンバイクで皆井に突っ込むが、皆井の片手ではじけ飛ばされ、あわやというところをちょうど駆けつけた燦緒に抱きとめられる。それを見た眞深は航の肩をつかみ、妹達を危険な目にあわせていていいの、そんな意気地のない航なんか嫌いだ、と激しくなじる。あんたが戦わないんならあたしが戦う、と皆井に向かっていこうとする眞深を、だが航が震える手で引きとめる。衛と花穂の応援をうけて、航は皆井に飛びかかり、そしてたちまち倒される。それでも立ち上がり、「分かってほしいんだ」と叫びながら向かってくる航に、皆井はとどめを喰らわせようとするが、その不意を打った燦緒の一撃によろけてしまう。そんな馬鹿な、と動揺し、二人がかりとは卑怯な、と罵る皆井は、「そんな機械の体でなければ戦う勇気もでないお前の方がよほど腰抜けだ」と燦緒にあざ笑われ、さらに憤る。昇達の援軍に退こうとしながら、皆井は、航よりも先に燦緒を倒すことを誓う。がっくり膝をつく航は衛と花穂が無事だったことに安堵しつつ詫び、眞深が厳しい言葉をかけてくれたことに感謝する。居心地悪そうだった眞深はその言葉に大いに慌て、すぐバトルコートが来るよ、と皆をせかす。
 その通りに襲来した皆井のバトルコートを、疲労激しい航達は山田に任せてアシュラシュヴェスターで迎撃する。出番がなかった分やる気満々の山田のナックル攻撃は、しかし皆井によって全てかわされてしまう。窮地に陥ったシュヴェスターと、その中で苦しみながらも諦めない航の姿を見て、応援していた花穂は「お兄ちゃまー!」と叫び、その体が輝き出す。花穂の技「グロース・フローラル」によって拳の速度を増したアシュラシュヴェスターは、シーリー・スコープで看破した敵バトルコートの弱点を、山田自称技「スペシャル・ローリング・サラマンダー・ナックル」によってピンポイントで打ち砕き、怒りに震える皆井を退却させた。
 帰還後、鞠絵の治療を受けつつ花穂にお礼を言っている航を見つめて、眞深は小さく溜息をつく。その横では燦緒が、航にまとわりついている咲耶を黙って眺める。一方、花穂はえへへと照れ笑いしながら、突然おなかがぐーと鳴り衛にからかわれてさらに真っ赤になってしまい、白雪達は慌てて夕飯の仕度に走った。
 その頃、皆井は敵基地で、体のパーツを交換しつつ、燦緒の言葉を思い出して歯がみし、雪辱を期すのだった。
 第16話 「優しい心を振りまきながら」 5/20
「今日もなんだか色っぽい春歌ちゃん。ドッキリするほどきれいな瞳、ビックリするほど鋭い長刀、って危ないよ!? 花穂ちゃんと一緒に止め……られるかなぁ?」
 最近、能力行使の春歌はしばしお色気たっぷりの酩酊状態に「ポポポッ」と陥るが、じつはこの副作用は表面的なものにすぎず、彼女の心の奥底では闘争本能がパラノイックに激しさを増していく。燦緒の断固たる敵殲滅の言葉に煮え切らない返事を返してきた航に対して、春歌はそんな兄を自分が守ってやらねばならない、と思い詰めてしまう。一方、これまでさんざん迷ってきた航も、みんなを守れるだけの力と、それ以上の暴力を抑えられる精神とを鍛えようと決意し、燦緒や春歌に特訓を頼む。
 同じ頃、花穂は副作用で食欲が増進しすぎて、どうしても我慢ができず夜中に冷蔵庫をあさってしまう。その現場を、夜中に長刀の稽古で闘争心を発散して戻ってきた春歌に見られてしまい、恥ずかしさと情けなさに泣きじゃくるが、春歌は優しく、自分も幼い頃にこっそりやっていたことがあった、この機会にご一緒させていただけますか、と言って蜂蜜入りのホットミルクを作る。春歌の意外な側面にも触れて花穂は「春歌ちゃんは優しいねっ」と笑顔を取り戻し、春歌はその笑顔を見て穏やかに微笑む。翌朝から、春歌は白雪達とともに料理の献立をあれこれ工夫することになる。
 それからしばらくたったある日、街中で春歌は、からかい半分で航に柔道技をかけようとした麹町らに、突然本気で敵意を露わにして襲いかかる。誰の制止をも耳に入れず長刀を振りまわす春歌の暴走をくい止めようと、航は習いたての剣術で春歌に立ち向かい、なんとその長刀をうち払う。それは兄の姿に春歌が一瞬手を緩めたおかげの幸運だったが、兄に刃を向けたうえ負けた自分がこのうえ兄を守れるはずもないと感じた春歌は、一転して落ち込んでしまう。そんな面持ちで自室にこもる春歌に、花穂は、自分も強くなりたい、それに運動すると太らなくてすむし、と稽古をつけてもらおうとする。さっぱり長刀の才能がないどころか自分から転んでしまうありさまでも、涙をこらえて頑張る花穂の姿に、春歌は、何もできなかったけれど未だ見ぬ兄のために一生懸命だった幼い頃の自分の姿を重ね、忘れていた大切な心を教えられる気がした。
 道場からの帰り道、潜入した皆井率いるパペットに町の人々が襲われているのを目にし、花穂は怯えながらも子供達をかばって長刀を構えようとする。そこに伸びるパペットの手を、春歌はなぎ払い、蹴散らし、さらに皆井に向かって打ちかかる。皆井にほとんど拮抗する速度で長刀をふるう春歌が、燦緒達の来援に退却する皆井を追撃しようとした瞬間、花穂の声が春歌の耳に届く。我に返った春歌は足を止め、自らの衝動を兄妹への想いで何とか抑え込み、花穂に振り向いて「お怪我はないですか」と優しく微笑む。花穂は春歌ににっこりお礼を言い、春歌に手をとられてただちにウェルカムハウスに向かう。
 皆井はバトルコートに乗り込んで再び来襲し、航達もこれを迎撃する。四葉のシーリー・スコープによると、皆井の操縦席はエネルギーコアの近くにあり、うかつに狙うと誤って皆井を巻き込んでしまいかねない。手を出せないままルフトシュヴェスターは危機に陥るが、自分を信じてくれるようにと言う春歌の真摯な瞳を見て、航は精霊弓を構える。春歌のトリガーで狙い澄まして発射されたエルフィン・シュッツは花穂のグロース・フローラルで速度を倍加され、敵バトルコートが高速移動中にもかかわらずその急所の中心を瞬時に射抜く。驚愕の皆井が脱出するのを確認して、航はほっと体をくつろがせ、春歌は花穂と顔を見合わせて一緒にガッツポーズをとる。そして花穂のお腹はまたもぐーと鳴り、春歌は兄の勇姿に心底ポポポッとなるのだった。
 撃墜されたバトルコートやパペットの残骸を調べていた昇は、今回も再び気になる部品を発見する。そこに刻まれたマークのいくつかは、昇の記憶では、確かに滝神家系列会社のものに違いない。疑惑をおさえきれなくなった昇は、玲香を何とかなだめつつ、島を離れて自ら養家の調査に赴くのだった。
 第17話 「ハートの回路が乱れます」 5/27
「鈴凛ちゃんの発明品はとってもすごいけど、あんまり物騒なのはどうかなあ? 可憐ちゃんはちょっぴり純情モーションだし、二人ともちょっと落ちつこうよ、ね?」
 敵の新たな脅威に対抗するため、鈴凛はシュヴェスターのさらなる分析や発明に取り組む。だが、それは彼女の副作用、つまり技術的進歩のために一切を犠牲にする独善性の発現だった。発見された知識を鈴凛が応用するとき、それはただちに眼前の戦いを有利にするための兵器改良などに向けられ、彼女本来の「誰かの喜ぶ顔が見たくて」という発明はすっかり影を潜めてしまう。兄妹達が修理をお願いする日用品には目もくれず、ついにはメカ鈴凛やプロトメカまでもが武装させられるが、なぜかメカ鈴凛達はパペット相手にも十分な能力を発揮できず、鈴凛はとうとう彼女達に「失敗作」の烙印を押しかけてしまう。一方、可憐は今までの平和な生活からどんどん遠ざかっていくことへの不安が堪えきれなくなり、現実から目をそらそうとする。この逃避衝動もやはり彼女の副作用によるものだったが、ファンシーな振る舞いに執心する可憐の言動に航は最大限応じるものの、パペットや敵バトルコートの来襲にもピアノのそばを離れようとしないその姿を見て、メカの不調に苛立つ鈴凛は激しく叱責する。航は両者の顔を立てようとするが、可憐は泣くばかりで鈴凛はとりつくしまもない。
 そこに仲裁に入ったのは、春歌だった。自分の発明が戦いにどれほど貢献しているかを訴え、その期待に応えないメカ鈴凛達を冷たくあしらう鈴凛を、春歌は鋭く平手打ちする。メカへの愛情を見失った鈴凛に対して、メカは手をあげることも文句を言うこともできない、だからワタクシが代わりに、と。衝撃を受けた鈴凛は、メカ達を避けるようにして自室にこもる。そこへおずおずとやってきた雛子は、以前作ってもらったマジカルヒナ目覚まし時計を鈴凛に修理してとお願いする。鈴凛の手際を驚きの目で見つめ、再び鳴り動くようになった時計に大喜びする雛子の姿に、鈴凛はふと幼い頃の自分の姿を重ね、自分に機械いじりを教えてくれたジジの言葉を思い出す。「発明というものは、新しい幸せを作り出せるものなんじゃ。人にも、機械にもな。」そのとき、隣室のラボでガチャガチャいう音が響いてくる。ラボへの通路をくぐると、そこでは、メカ鈴凛が自分の体を改良しようとスパナを握り、しかし片腕を外したところでこれ以上どうしていいのか分からず、停止していた。やってきた鈴凛を見て、メカ鈴凛は、スパナを差し出してじっと主の顔を見つめる。その無言の懇願に、鈴凛はしっかと抱きついて謝りながら泣きじゃくり、そばに控えていたプロトメカはそっとハンカチを差し出した。
 可憐もまた、自室でピアノを弾きながら憂いにとらわれるが、そこに鈴凛が謝りに訪れ、可憐にぜひ見てもらいたいものがある、とその手をひいてワタライダー格納庫に連れて行く。戦争の道具になんか近寄りたくない、と嫌がる可憐に、鈴凛は機体の作業用ハッチを開けてその奥に隠されたあるパーツを指し示す。それは、ハーモニーユニットと名付けられた、いくつもの弦の張られた装置だった。シュヴェスターはこの装置が共鳴し合うことで能力を発揮するらしいが、この頃の激しい戦いの中でその調律が微妙にずれてしまってきている。そのことを波長計でつきとめた鈴凛は、この調律は可憐にしかできない、と頭を下げる。それでも尻込みする可憐は、鈴凛に、こんな装置がついているシュヴェスターが戦争の道具であり続けるはずがない、これを使うのはアタシ達とアニキ達なんだから、と訴えかけられ、思わず自分の指を見る。ユニットの弦に触れると、そこから響く音の苛立ちと悲しみに、可憐は自分の心の中を見るような思いがして、その調律とともに、本来の優しい微笑みを取り戻していく。
 敵バトルコートの接近に、可憐も鈴凛も航を心から支えようと張り切る。敵の弾幕を防ぎきれず、あわやという瞬間に、可憐の体が輝いて、精霊盾パック・フロントがルフトシュヴェスターの左腕に出現する。敵の弾幕を受けとめた盾は、そのほとんどを敵めがけてはじき返す。皆井が動揺する隙に換装したリッターシュヴェスターは、ゼフィール・ブラストでバトルコートを撃破する。喜ぶ鈴凛と微笑む可憐の姿に、航はほっとしながらお礼を言う。戦い終わって夕暮れ、航達が雛子達やメカ鈴凛とプロトメカと一緒になわとびをして遊び、鈴凛が春歌と一緒にお風呂のボイラーを直す中、可憐が奏でるピアノの音がウェルカムハウスを包み込んだ。
 その頃、昇は東京で、パペットの部品の出所らしき滝神家系列会社を見張り、怪しい姿の顧客を発見して尾行を開始する。その昇からのメールを読みながら、島に残る玲香は不安げにぬいぐるみを抱きしめるのだった。
 第18話 「深い闇をこえて」 6/3
「ぼくと燦緒を倒すのが、そんなに大事なことなの? 心を迷い迷わされて、皆井は妹を人質にしてまでぼくに勝とうとする。亞里亞ちゃん千影ちゃん、気をつけて!」
 無様な戦いぶりをテイレクゼン博士になじられた皆井は、自らの復讐心や航達へのコンプレックスをミストレスに煽られて、妹達を人質にとるという卑怯な作戦をとうとう実行に移す。プライドをかなぐり捨てるまでに追いつめられた皆井に、ミストレスは「勝てばいいのよ、勝てば」と毒を含んで微笑みかける。
 エゾリスのピクピクと遊んでいた亞里亞は、餌にあげるための木の実を探して林の中に入り込むが、この季節では何も見つからずにしょんぼりする。そこに現れた老紳士は、帽子の中からクルミを取りだして亞里亞を喜ばす。樹の精霊である老紳士は、ここで皆井の接近に気づき、亞里亞に逃げるように促すが、たちまちやってきた皆井の方が一歩早く、亞里亞を捕らえてしまう。老紳士は皆井に見えない姿のまま、ピクピクに指示して誰かを呼びに行かせ、自らは亞里亞を落ち着かせながら木々の葉の色を変えていく。ここ数日の悪夢で睡眠不足の千影は、ベンチに腰掛けてうとうとしていたが、ピクピクにくすぐられて目覚め、その仕草を見て何事かを悟る。水晶玉に映るその場所を探し求めてほどなく、千影は、木の葉の色を頼りに亞里亞を発見し、そばに近寄ろうとする。その瞬間に彼女の背後をとった皆井は、亞里亞の反応にいいかげん業を煮やしており、代わりに千影に航か燦緒をここに呼び出すよう脅迫する。しかし千影はざわめく木々に何かを感じ、フッと笑うと足下の落ち葉を宙に散らす。そこに突如発生したつむじ風が落ち葉を巻き上げて皆井の視界を遮り、その隙に千影は亞里亞を引いて駆け去ろうとする。すぐに気づいた皆井は二人を追いかけ、再び捕らえようとする寸前で、三人は木のうろに転がり落ちる。
 起きあがったそこは、島とは異なる見知らぬ緑と水の世界だった。驚く皆井は、まとわりつく木の枝や足を呑みこむ沼などを避けつつ、千影達を必死に探す。やがてたどり着いた王宮の中で、玉座にもたれて眠る亞里亞とその前に立ちはだかる千影を発見した皆井は、背後から老紳士が繰り出す手管を火炎剣で焼き払い、広がる炎を突破して千影達に迫る。老紳士は傷ついてもはや防げず、皆井はすでに戦う理由を忘れるほどに航達への憎悪に支配されて、千影の喉元に切っ先を突きつけようとする。だが、そこにふんわりと割って入ったのは、目を覚ましたばかりの亞里亞だった。怯えながらも千影をかばい「だーめー」と睨む亞里亞の姿に、皆井はなぜかためらいを覚えて剣を向けられない。にわかに上を覆う雷雲から降り注ぐ雨に炎はかき消されていき、老紳士は亞里亞の姿に見入ってただうめく。異様な不安を押さえ込みながら、そこをどけ、と怒鳴る皆井が剣を振り上げた瞬間、そこに一条の雷がとどろき落ちる。凄まじい衝撃を受けた皆井の脳裏に、自分はなぜこんなことをしているのか、と疑問が閃く。マスターによるマインドコントロールが落雷で弱められ、航達への歪んだ闘争心が薄れていく。再び気を失った亞里亞と、それをかばうようにして倒れている千影を見下ろしながら、皆井はこんなか弱い者を狙った自分の狭量さを恥じ、そのまま手を出さずに立ち去る。いつの間にか島に戻っていた皆井は、それでもなお航と燦緒への本来の競争心だけは失うことのないままに、隠蔽していたバトルコートによろけながら乗り込む。
 ピクピクを追いかけてきた航達は、並木道の傍らで千影と亞里亞を発見し、ウェルカムハウスに収容する。ほどなく目覚めた二人とも大過なく、千影は見えざる助け手にひとり感謝する。すぐさま精霊合体したルフトシュヴェスターは、皆井の満身創痍ながらの怒濤の攻撃にたじろぐものの、シルフィード・スマッシュでなんとか勝利する。その勇姿を、千影は亞里亞とともにモニター越しに、老紳士は木立の陰から、黄色い帽子の少女はマッキー像の上から見つめていた。
 敵基地に帰還した皆井は、テイレクゼン博士の罵詈雑言に何も言い返さずに部屋に戻り、自分の体を修理する。その体をあざ笑った燦緒のかつての言葉を思い出しつつ、奴に何が分かる、とうめく皆井の眼鏡は瞳を垣間見せ、そこに昨日までの邪悪な輝きはかき消えていた。一方、その様子を冷たく見つめていたミストレスは、それじゃこっちの出番かしら、と誰にともなくつぶやいた。
 その頃、昇は首都郊外で、尾行の結果行き着いた工場に潜入する。そこに見いだしたものは、作業員として働くパペット達の姿だった。衝撃を受けた昇は、いよいよ本家に潜入しなければならないと心に決める。その昇からのメールを読みながら、島に残る玲香は落ち着かなげに、山なすプチプチマットをつぶし続けるのだった。
 第19話 「温もりのなか」 6/10
「笑ったり泣いたり怒ったり、女の子ってよく分からない……燦緒なら分かるのかな? 恋なんてピンとこないけど、だけど気になる、昨日よりもずっと。みんな、甘いものはほどほどに、ね?」
 学校で心ここにあらずな玲香を励まそうと、ウィンドショッピングに誘う咲耶は、下駄箱の中のラブレターに溜息をつき、校門で待っていた山本五衛を軽くあしらう。その手慣れたさまに、相変わらずもてるわね、と玲香はからかい、咲耶は、こっちの身にもなってよ、と愚痴をこぼし、どちらが慰められているのか分からなくなる。一方、咲耶を見つけた燦緒は、自分を囲む女子生徒達を袖にしてやって来る。咲耶は自分のことを棚上げにして燦緒をからかうが、燦緒の反応を横目に見て、玲香は彼の咲耶への好意に気づく。さらに商店街で、航と可憐、眞深の一団に遭遇すると、咲耶は「ずるい」と可憐達に文句を言い、航は課題のことを燦緒に相談し、眞深は兄達の色気のなさを揶揄する。お前だって色気ないだろうが、と言い返す燦緒に同意を求められて航は困惑しつつ「そ、そんなことないと思うけど」と曖昧に答え、それを聞いた眞深はつい照れてしまう。一部始終を見ていた玲香は、買い物袋をぶら下げて部屋に帰ると、こじれたら面倒くさそう、と溜息をつく。そして、こんなときに兄がいたら相談できるのに、と一瞬考えたものの、昇の朴念仁ぶりを思い出して「役に立たないわね」と打ち消し、しかし、それでもいてくれればいいのに、とうつむいた。
 翌朝、下駄箱の中に入っていた「放課後プール裏で待ってます」との手紙を読んで、玲香は初めての大事件に動揺する。胸をドキドキさせて放課後おもむくと、そこに待っていた石川祐規は、こともあろうに、咲耶の親友の立場から自分の恋愛成就に協力してほしい、と切り出す。言葉もなく立ちつくす玲香は、ひたすら懇願し続ける祐規についに怒り心頭、「ふざけるなー!」の雄叫びとともにジェットアッパーでKOする。倒れる祐規の傍らにもう一人、綾小路も昏倒したのに気づいた玲香は、その向こうにちょうど眞深がハイキックをかました姿勢でこちらを見つめて固まっているのを発見する。眞深もまた自分と同じように、可憐の当て馬にされようとしていたことを知った玲香は、眞深と一挙に意気投合する。肩を並べて愚痴を言い合い帰路につく二人の前に、可憐と咲耶と航がたまたま現れると、二人は目と目で了解に達し、航を置き去りにして可憐と咲耶を連れ去る。事情も分からぬままに「パフェ食べ放題」をおごるはめになった咲耶達は、そのうえ文句を聞かされて困り果てるが、しまいに「あんたたちが彼氏を作らないからこっちが迷惑するんだ」とまで言われて、さすがに咲耶が憤慨する。三人がああだこうだと言い争っている間、可憐はあいづちをうちながら黙々とパフェを食べ続けるが、何か言えと眞深にせっつかれて、「ええと、でも可憐、やっぱりお兄ちゃんが好きだから」と微笑み、全員どっちらけとなる。グダグダな雰囲気のなか、やがて各人は自分の兄の話をし始め、玲香もまた、昇のことを忌憚なく打ち明ける。最後に、「結局みんな同じ穴のムジナか」とあきれる眞深に、全員が心から笑うのだった。
 そこに鳴り響く非常警報に、四人は慌てて店を出て配置につく。発進・合体したルフトシュヴェスターは、敵バトルコートから放たれた精神破壊光線「ゾル結界」に捕らわれてしまい、航達は苦悶に叫ぶ。皆井は、命令にしたがいこんな兵器に頼らざるを得ない自分を罵りながらも、航達がそのくびきをはねのけることを内心で望む。苦痛のあまりに島を攻撃しかねないシュヴェスターに、鞠絵は必死に呼びかけるが、その通信機を奪った咲耶と眞深は、兄達を「何やってるの!」と叱りとばす。その声に一瞬動きが止まったシュヴェスターを見て、皆井は接近戦を挑もうとするが、航達は未だゾル結界の支配下にある。そのとき、白雪の体が輝いて、「にいさまに心の栄養でぃすの!」と手を差し出し、「メルシュディック・ハーベスト」によって航達の精神を強化する。たちまちゾル結界の影響を脱した航達は、目の前に迫る敵バトルコートに、見事カウンターを決めて撃破した。
 なんか誰かに怒られたような、と首を傾げながら帰還した航達を待っていたのは、副作用で強迫的に料理を作り続ける白雪と、その成果である夕飯とデザートの山だった。もう今日は食べられない、と胸焼けで倒れる咲耶と眞深の横で、花穂は悲鳴をあげながらフォークを動かし、お呼ばれしたパピーズ達、そして可憐と千影と亞里亞は、黙々とデザートを片付ける。玲香も平然とケーキにフォークを刺しながら、この暖かな雰囲気を静かに噛みしめ、咲耶のツッコミを笑って聞き流していた。
 その頃、とある山中の屋敷の中では、ポニーテールの少女が「もうすぐ、帰ってきますのね」と密やかに微笑みながら、写真立てを手にとって見つめる。そこには少女に腕を抱かれて照れ笑う、昇の姿が映し出されていた。
 第20話 「盗まれた過去」 6/17
「昇さんが育てられた滝神家。さよならは言ったはずの昔の日々が、昇さんを引き留めようとする。だめだ昇さん、罠にはまっちゃ! 玲香さんのことを忘れないで!」
 こっそりと移動を続けながら、ようやく昇は、山間部のとある湖畔に威容を誇る滝神家の屋敷に到着する。周囲の警備員に見つからないようにしつつ屋敷の中に侵入した昇は、滝神家の女当主でもあるかつての義母の執務室へと近づく。だがその途中で、昇のここでの義妹だった亜唯子(あいこ)に見つかってしまう。義兄との再会に喜び泣きつく亜唯子に連れられて、昇はやむなく乗馬やクリケットをともにする。夕暮れに帰宅した義母は、かつて家を無断で出たはずの昇をいたって穏やかに迎え、夕食の席で久しぶりの会話を楽しむ。夜半、玲香にメールを送ろうとしていた昇は、一緒に寝ようと部屋にやってきた亜唯子に邪魔されて送信できずに終わる。背中合わせに寝ながら、今まで寂しかった、と涙ながらにささやく亜唯子に、昇はいたたまれない思いを抱く。だが、島に行こうとした半年前、亜唯子も義母も自分を外出できないように企んでいたのではあったが。
 翌朝目覚めた昇は亜唯子にかいがいしく世話されて、滝神家の次代当主として生活していたあの頃のままの日常が始める。しかしその生活にもはや違和感を拭えず、また部品の一件を忘れることもできずに、昇は亜唯子の手製のお菓子が食べたいと懇願して義妹をキッチンに遠ざけ、その間に義母の執務室に侵入する。捜索のさなかに偶然発見した隠し扉の向こうには、通信装置と暗殺道具の数々、そして新たなバトルコートらしき竜型マシンの設計図が備え付けられていた。それらを前にたじろぐ昇は、背後に気配もなく現れた義母の手で昏倒させられてしまう。朦朧とした意識の中で、昇は、通信装置の映像として浮かび上がったマスターの声を聞く。その催眠術によって、昇の記憶の奥底に隠されていた戦闘技術や知識が呼び起こされ、それと同時に滝神家への忠誠心を、いつの間にか腕にすがりついていた亜唯子への愛情を媒介にして定着させられようとする。しかし、亜唯子が昇に差し出すクッキーの甘い香りが、プロミストアイランドで玲香と出会えたあのときの妹手製のお菓子の記憶を、そしていま部屋でひとり自分を待っているはずの妹の姿を、昇の脳裏にひらめかせる。意志を失ったように立ちすくむ昇を、義母と義妹は別室に連行しようとする。そこで昇を皆井と同じ組織のコマンダーに改造し、バトルコートの操縦者に仕立て上げようというのだ。だが催眠術を既にはねのけていた昇は、義母達の計画をそこまで聞き出すと、すぐさま優れた肉体能力で拘束を破り、屋敷から脱出する。
 義母は亜唯子に昇を捕らえ、もし捕縛不可能なら殺すように命令する。亜唯子が出て行った後、義母の姿はミストレスのそれへと変わり、マスターと亜唯子の能力の頼りなさを皮肉る。一方、昇は、追いすがるパペット達を振り払っているうちに崖沿いの道で亜唯子に追いつかれ、またも涙目で「戻ってきて一緒に暮らしましょ」と訴えかけられる。昇は、義母に育てられ亜唯子と暮らした日々のことを懐かしく口にしながらも、その日々が自分を戦う道具にするためのものだったこと、邪悪な組織の一員に仕立て上げるためのものだったことを激しくなじる。そして、自分にはお互いを思いやりながら一緒に暮らせる者がいる、と続ける昇に、亜唯子は「そんなにあの女の方がいいの」と冷たく尋ね、それならあなたの父親と同じところへ逝きなさい、と睨みすえる。まさか野神家の父の死因が滝神家に、と問いただす前に、上空に飛来した竜型バトルコートから昇めがけて凄まじい電撃が放たれる。もはや消滅した崖の跡を見つめて、亜唯子は「分からずや」と小さくつぶやいて去っていく。屋敷で昇の死亡を報告する亜唯子に、ミストレスは島への潜入を命令する。亜唯子は不敵に笑いながら、ポニーテールを解き、本来の外ロールの髪型に戻る。そして、先ほどの崖のはるか下方では、木の枝にぶら下がって失神している昇の姿があった。あわやという危機から敵に気づかれずに彼を救ってくれたのは、そのそばに身をかがめる忍者姿の謎の女性だった。
 その頃、玲香は島で、かつて一度受け取った「あいこ」名義の滝神家義妹からのメールを受信し、そこに昇が亡くなったとの報せを読んで卒倒しかける。だが、その直後に受信した「心配しないで」という差出人不明のメールに、玲香は肩を抱きしめるようにして堪えると、写真立ての中の両親に、にいさんを守って、と祈るのだった。
 第21話 「わるいこさんにはめっしちゃお」 6/24
「可愛いぬいぐるみが、なぜか島中で大暴れ!? こんなピンチのときこそ、魔法のシスターの出番だよ。さあよいこのみんな、いっしょにお願いしようよね。ね?」
 竜型バトルコートの最終チェックがうまくいかないテイレクゼン博士は、苛立ちながらプロミストアイランドの最新情報に目を通す。そこにマジカルヒナやぬいぐるみのCMを見つけた博士はヒントを得、ストレス解消とばかりにぬいぐるみ型パペットを量産し始める。異世界での一件以来、自分の行動を問い直しつつある皆井は、バトルコートに着ぐるみを着せたものをあてがわれて唖然とする。馬鹿にしているのかと文句たらたらの皆井の前に、ミストレスが派遣した亜唯子が姿を現す。自らを”ブラックスノウ”と名乗り挨拶するその出で立ちは、航のとある妹そのままであり、驚きつつも不審な表情の皆井に亜唯子は不敵に微笑む。
 島では、番組の撮影を終えた雛子達が帰宅しようとするところ、山田がクレーンゲームの景品を抱えて通りかかる。動物達のぬいぐるみを羨ましがる雛子に、山田はパピーズの分以外から1個選ばせ分けてやる。雛子は喜び、花穂や四葉はいよいよ自分達の変身話が近づいていることにはしゃぎつつ、家に着く。いつもと同じ楽しい夕べに、だがミカエルは落ち着かず、雛子のぬいぐるみに噛みつこうとする。犬のぬいぐるみへの対抗意識か、などとからかわれ、鞠絵にも叱られるが、ミカエルは収まらない。自室に戻った鞠絵は、ミカエルの態度に困惑しながら、もしや、と思いつく。その頃、すでに寝入った雛子の足下で、犬のぬいぐるみが目を赤く輝かせて動き始める。足をニョキニョキ伸ばして雛子のベッドによじ登ろうとするぬいぐるみは、しかし部屋に飛び込んできた鞠絵と鈴凛に目撃され、ミカエルに胴体を噛み裂かれる。そこには明らかに機械のボディが隠されており、鈴凛が窓の外に投げ出すと、脱兎のごとく逃げ去る。ただちに航達は島に非常警報を発するが、すでにぬいぐるみ達はあちこちで暴れ始めていた。山田の下宿は半壊し、山田からぬいぐるみを唯一受け取ったやすこは、一度はそれを吹っ飛ばしたものの、涙目のぬいぐるみが可哀想でそれ以上手が出せずにいる。出動した自衛団や航達も、子供達がぬいぐるみをかばうためになかなかはかどらない。さらに多くの自衛団員は、助けを求める少女のもとに駆けつけては、その少女に背後から昏倒させられてしまう。
 子供達の心をもてあそぶ敵の作戦に憤るも、群れをなすぬいぐるみに打つ手のない航達の中で、鞠絵は千影のアイディアをうけて冷静に作戦を編む。これに基づいて、すぐさま雛子と亞里亞はマジカルヒナとリリカルアリアの姿に着替えて登場し、BGMに乗って決め台詞を叫ぶ。「みんなをいじめるわるいぬいぐるみさんは、マジカルヒナがめっしちゃうよ?」バトンを振ったそのとき、ミカエル、プロトメカ、そして大きなクマの着ぐるみを着た眞深が、ぬいぐるみの群れの中に突入する。「おねがいパワーだ!」と大喜びのパピーズ達に、つられるようにして他の子供達もマジカルヒナ達を応援し始める。ほどなくぬいぐるみ達は一掃され、袋に詰められてプロトメカが運び去る。そしてシャドウ役の航はミカエルに追われて逃げ去っていき、拍手と歓声の中でめでたしめでたしとなる。その一幕の陰で、番組ではまだ登場前だから、と出番のなかったファンシーカホこと花穂と美少女怪盗クローバーこと四葉は、路地の入り口でがっくり肩を落とす。その路地の奥に白雪らしき姿を認めた四葉は声をかけるが、相手は振り向きもせずに消えてしまう。首を傾げる二人の背後から、白雪が「お疲れ様でぃすの」と呼びかけ、驚いた四葉はどんなトリックを使ったデスか、とはしゃぎ、白雪はただ小首を傾げる。その賑やかな場所を遠くに見て、もう一人の白雪が闇の中に浮かぶ。まずは小手調べというところね、と唇を歪めて笑うその表情は、だが航の妹のそれでは決してない。亞里亞と千影がふと見上げた屋根の上には、すでにその姿は消えていた。
 そんな折りに出現した皆井のバトルコートは、皆井自身のやる気が払底していたこともあり、たちまちアシュラシュヴェスターによって蹴散らされる。山田は子供達の声援に応えてマジカルヒナの決めポーズをとるが、パピーズの3人に気持ち悪がられる。一方、敵基地に帰還した皆井は、ブラックスノウに出迎えられ、次は共同作戦よ、との命令口調に言い返すも、マスターの指示をうけて不承不承うなずくのだった。
 その頃、玲香は自室で、兄からの連絡のないメール場面を見つめてため息をつく。その床には、フライパンでぺちゃんこにのされたタヌキのぬいぐるみが転がっていた。
 第22話 「イリュージョン」 7/1
「四葉ちゃんとケンカして、家を飛び出してしまった白雪ちゃん。新たな敵が背中から君を追いつめてる、その敵の姿は……って白雪ちゃん!? そんな馬鹿な!?」
 四葉のチェキはこのごろ激しさを増し、しまいに航のトイレ具合まで調べようとする。航や咲耶にたしなめられるものの、また敵の卑劣な陰謀に引っかかってはならないとばかり、逆にいっそうのチェキに邁進してしまう。一方、白雪は、最近どうにも宿題が手につかず、兄との物語を空想してはノートにしたためる。今日もバトルコートを撃破した後、スパイが侵入していなかったかとウェルカムハウスの全ての部屋をチェキする四葉は、千影の部屋で厳しい警告を受けはするものの、懲りずに巡回して白雪の部屋で秘密のノートを発見し、我慢しきれずに中身を読んでしまう。そこに戻ってきた白雪は、四葉の仕打ちにあんまりでぃすのと泣きじゃくり、何事かと集まってきた航達も、四葉に謝るように諭す。だが四葉は、物語の内容がけっこう面白いだけでなく、この中にきっと副作用のヒントも隠されている、と言い訳し、さらにそのために内容のいくつかをペラペラしゃべる。恥ずかしさに顔もあげられない白雪は、泣きながら家を飛び出してしまい、はっと我に返った四葉は、皆の視線の中、「四葉、そんなつもりじゃ……」とうつむく。
 家を駆け出た白雪は、途中でカズくんにぶつかり、泣き顔を心配される。何でもない、とごまかし、また明日の日曜日に、と言い残して逃げ去り、公園のブランコに独りたたずむ。そこに突然現れたのは、先の戦いの間に島に潜入していた、自分にうり二つの少女と、コマンダー皆井だった。悲鳴をあげようとする白雪を皆井は昏倒させ、公園の木々がざわめき黄色い帽子の少女が見下ろすなかを、島内の隠れ家へと連れ去る。白雪と服を入れ替えたブラックスノウは、皆井に作戦を確認する。自分がウェルカムハウスに潜入したのち、皆井がバトルコートで出撃し、潜入した自分が妹達を無力化する間に、迎撃に現れても合体できない航達を皆井が各個撃破する。白雪を捕縛している以上は精霊合体が不可能なのかもしれないが、さらに念を入れたこの作戦に、しかし皆井は面白くない顔をする。航を倒せればいいんでしょ、あなた用にとっといてあげるから、とからかうブラックスノウに、皆井は何も答えない。
 ブラックスノウは白雪になりきってウェルカムハウスに入るが、航も咲耶達も彼女が敵のスパイだと気づかずに慰めようとする。四葉は、自分の過剰なチェキこそが詮索衝動という副作用だったことが分かったいま、そのことを伝えつつ先の件を詫びる。このとき、偽白雪の軽く許す言動に違和感を覚えた四葉は、また自分の副作用が出たかと思ってこらえるが、可憐や亞里亞、ミカエルの態度から、自分の直感が間違っていないという確信を得る。日曜日の約束を破られたカズくんと偶然出くわしてその話を聞いたとき、四葉は自分の疑念をこっそり打ち明け、カズくんと協力体制をとる。一方、偽白雪は共同生活に巧みに順応し、自分の知らない白雪の振る舞いや兄妹の情報も探り出すほか、味付けの違いを「これも副作用かも」と言い訳することで逆に兄妹の同情まで集めることに成功する。そんな姿をじっと観察する四葉は、咲耶達に気づかれぬように苦労するものの、再び白雪の部屋に忍び込んだときに戸口に咲耶の声を聞き、慌てて窓辺から逃げようとして3階から落ちてしまう。その体を柔らかく受けとめたのは、メカ鈴凛とプロトメカが広げた布団だった。四葉をこっそり救いつつ、自分からあらためて諭そうと思っていた鈴凛は、四葉が真剣に語りかけるその言葉を聞いて、じっと考えを巡らす。
 作戦成功を確信したブラックスノウは、一度隠れ家に戻って皆井と作戦経過の確認をとる。彼女の傲慢な態度に皆井は腹を立てるが、ブラックスノウはわざと煽るようにさらに不遜に振る舞う。さらに、意識を取り戻し怯えていた白雪に、料理しかできないお前よりも自分の方がはるかに役に立っている、お前よりも自分の方がずっと妹に相応しい、となじって強い衝撃を与える。これを聞いた皆井は、白雪の真似でしかない奴が威張るな、とあざ笑うが、ブラックスノウは鼻で笑い返しつつ、これが自分の本当の姿だと肩をそびやかす。そして白雪を傲岸な憎悪に満ちた目で見下ろしながら、白雪とここまでそっくりなのは自分が白雪のクローン体「白雪α」だからだ、と告げたとき、白雪はさらなる衝撃に打ちのめされるのだった。
 その頃、昇は山中で、女忍者と隠密行動を共にしていた。手慣れた所作を学び取りながら、相手の正体を知らないままに従う昇を、女忍者は滝神家の秘密工場へと導いていく。そこに完成間近のバトルコートを遠く確認した昇は、女忍者に、なぜこんな場所を知っているのか、あなたは何者なのか、と問うが、相手は何も答えない。そして昇からの連絡がないままの島の玲香は、宿題をちょっと進めては受信ボタンをクリックし、を続けるのだった。
 第23話 「笑顔が一番」 7/8
「自分よりも優れたもう一人の自分。でも、ぼくに心の栄養をくれる白雪ちゃんはただ一人。悲しい気持ちに負けないように、あきらめないで白雪ちゃん!」
 翌日も自分がいかに兄妹にとけ込んでいるかを、ブラックスノウは隠れ家の白雪に自慢する。もう本物のことなんて忘れられてるんじゃないの、入れ替わった方がみんなのためよね、というその言葉に、憔悴した白雪は何も言い返せない。傷に塩をすりこむように冷たい言葉を連ね、自分の優秀さを吹聴するブラックスノウに、皆井はなぜか我慢がならず、そのへんにしておけ、と口を挟むが、ブラックスノウは、性能の悪い者は憐れんでやらないとね、とまた勝ち誇る。だが、テイレクゼン博士から事情を聞いていた皆井が、お前も性能が悪いから兄に捨てられたんだろう、と言い返すと、ブラックスノウは突然激高し、自分を認めなかった奴は兄なんかじゃない、と喚き散らす。気圧された皆井と白雪の沈黙に、ようやく我に返ったブラックスノウは、航を自分の思うとおりに兄にしてみせる、と勢い飛び出していく。
 呆気にとられた皆井に、白雪は、ブラックスノウが実兄に嫌われたのだとすれば可哀想だ、とつぶやく。憐れみか、と尋ねる皆井は、自分も兄に嫌われたら辛いから、という白雪の答えに、航を奪おうとしている者に対してよくそんなことを思えるものだ、と首を傾げる。その後、偵察に出かけた皆井は、ウェルカムハウスの様子をつい見に行って燦緒に不意を打たれてしまう。たちまち隠れ家に舞い戻った皆井を白雪は心配し、手当をする、と言い張る。皆井の腕が機械であることに驚きつつ、せめて顔の傷だけでもと消毒して皆井が痛がると、白雪は詫びながら、鞠絵ちゃんならもっと上手にお手当できるんでぃすのに、としょげる。皆井は、なぜ敵を気遣うのか、と問いただすが、白雪は「だって、にいさまのお友達なんでしょ?」と答え、さらにご飯を支度すると続けて皆井を心底驚かす。なぜか許可してしまった皆井は、あり合わせの材料でも楽しげに作られた料理を口にして、「……うまい」とつぶやく。安堵する白雪の笑顔を前にして、こんな食卓の記憶がない皆井は、いつもこんな食事なのか、と尋ねる。白雪は訊かれるままに、毎日の食卓や生活のこと、兄が自分に与えてくれる幸せ、そしてその兄のために「心の栄養」をあげたいことなどを話す。聞くうちに航に対して言いようのない怒りを抱いた皆井は、体の修理も完全でない状態でバトルコートに乗り込み出撃する。
 ブラックスノウは偽白雪として航達にお菓子を作り、皆に感謝されることを快く思う。それは、滝神家で昇とともに暮らしていたときの、そして本来ならばいまも得られていたはずの、温もりだった。だが、咲耶に励まされる玲香を見て心を凍らせた偽白雪は、つい冷たい態度をとってしまい、また眞深が航に惹かれているらしいことを咲耶にほのめかすなど、妹達の間に不和をもたらして航を独占しようと始める。そこに来襲したバトルコートを航達が迎え撃つものの、いまの白雪とともに地下管制室に行くことを危険に思う四葉と鈴凛は咲耶達に急かされ困惑する。だが二人に目で合図をした千影は、亞里亞がトイレから戻ってこないことを咲耶に淡々と伝える。咲耶は慌てて女子トイレに走り、偽白雪はじりじりと待つが亞里亞はこない。精霊合体できない航を皆井は狙い続けて悲鳴をあげさせ、ついにその致命的一撃をくらわせる寸前、ワタライダーに白雪の笑顔が重なり、皆井は攻撃を外してしまう。これを修理不全のせいにしながら皆井は撤退し、咲耶達はトイレ前でへたりこみ、ようやく出てきた亞里亞も一緒に座る。
 帰還した航達は、敵の不自然な行動を怪訝に思うが、偽白雪が用意した夕飯を一緒にとろうと席につく。だが、そこで四葉が突如立ち上がり、食事の前に今日の無事を感謝してお祈りしまショウ、と提案する。可憐達の賛同を得て、四葉は手を組んでお祈りの文句を唱える。この文句が、先日四葉が読み上げてしまったあの白雪の秘密ノートの文章だということに気づいた航達は、即座に顔を上げて四葉と偽白雪を見、そして偽白雪のキョトンとした顔に驚く。四葉が意地悪げにそのノートを懐から取り出してさらに文句を唱えると、事情を推測した偽白雪はすぐさまごまかそうとして、もうやめてくれと泣きじゃくる。しかし、いま続けた文句が元のノートにない自分の創作だと告げた四葉は、千影の「この料理には薬が入っている」という一言に勢いづけられ、罠に引っかかった偽白雪を偽者と断定する。一同の視線を浴びながら偽白雪は立ち上がり、でも航は気づかなかったじゃないの、と冷たくつぶやく。衝撃をうけつつも、本物の白雪ちゃんはどこなんだ、と問う航をあざ笑い、偽白雪は燦緒や春歌の攻撃をすり抜けて外へと逃げ出す。追いかける燦緒達よりも速く、プロトメカに乗った四葉は航を拾い上げてローラーダッシュで追跡し、そのうえわざわざ着替える。あやうく見失いかけたところを見張りのカズくんの指示で敵隠れ家へと直行し、そのままプロトメカの体当たりで突入する。そこではいままさに偽白雪が白雪を壁に押さえつけており、驚く二人もろともに勢い余って壁を突き破り、全員泥まみれとなる。すぐ飛び起きた航は、もつれたまま本物を主張しあう二人の白雪に混乱するが、一方がとっさに差し出した泥団子を見て、その白雪を抱きしめる。愕然とするブラックスノウは、その二人の姿に昇と玲香をも重ねて叫び刃を振り上げるが、美少女怪盗クローバーに扮した四葉とプロトメカに遮られ、さらに春歌達が到着したところを皆井に抱えられて退却させられる。
 自分を抱きしめながら繰り返し詫びる航に、白雪は涙ながらにしがみつく。その傍らに立った美少女怪盗クローバーは、秘密ノートをそっと差し出しながら、神妙にお縄につきマス、と小声で謝り去ろうとする。呼び止めた白雪は、助けてくれてありがとうって四葉ちゃんに伝えて、と頼む。美少女怪盗クローバーは振り返らずに肩を震わせて、必ず伝えマス、と言い残して駆けてゆく。帰宅後に妹達に囲まれながら、白雪は、遠く鈴凛の陰でうなだれる四葉に、いまドーナツを作りますの、と微笑みかけ、四葉ははっと顔を輝かせて、白雪ちゃんのドーナツは世界一デス、と嬉し泣いた。
 一方、ブラックスノウは、かつて昇にも妹と認めてもらえず、いま航にも看破されてしまったことへの怒りと悔しさを、心の底から泣きじゃくりながら皆井にぶつける。あんな性能の悪い奴らに、と悪罵するその声に、皆井は、「性能、か……」とつぶやいた。
 第24話 「許してほしい、あやまちを」 7/15
「燦緒の大けがに責任を感じて、山田は命を捨ててみんなを守ろうと決意する。乾いた大地は、どれだけの涙を呑みこむのだろう……。山田にーちゃん、早まっちゃだめだ!」
 捕虜の白雪の枷を外したのが皆井だったことを白雪から知らされた航は、皆井の本心を想像して喜ぶ。そして、ブラックスノウの正体を白雪から知らされないままに、偽白雪ともやはり戦わずにすむ可能性があるのではないか、と皆に訴えかける。しかし燦緒は航の考えを言下に否定し、そんな甘すぎる考えでは敵につけこまれるだけだ、と叱りとばす。さらに、妹達の前で航の味方をしてポイントを稼ごうとした山田をも罵倒する。そのあまりに攻撃的な振る舞いを見かねた眞深は、自らの優越性を示すために力をふるう今の皆井の姿が、昔の自分と似ているから許せないんだろ、と兄を諭す。思わぬところを突かれた燦緒は、あんな奴と一緒にするな、とかえって耳を閉ざしてしまう。そしてまた、最近航の肩ばかり持つじゃないか、と燦緒に揶揄された眞深も、つい機嫌を損ねて兄を突き放してしまう。
 一方、ブラックスノウはミストレスの期待になんとか応えようと、再び島に潜入する。収まらない憎悪のはけ口を求めるが、白雪には常に同伴者がいるため機会を得られず、しかも燦緒に見つかってしまう。だが、燦緒を抑えて自分を説得しようとする航の優しさを目の当たりにして、ブラックスノウはかえって憤る。そこから逃走した後には玲香を狙おうとするものの、そこにたまたま山田がうろちょろして苛立つ。だがここで一計を案じたブラックスノウは、山田が一人になったところを見計らって現れる。同伴者がいないことで相手が偽者だと判断した山田が騒ぎ立てる前に、ブラックスノウは山田にいきなりすがりつく。間近に触れる女の子の感触にのぼせ上がる山田の耳にささやかれるのは、偽白雪の兄が敵組織に人質にとられており、やむなくこうしてスパイをさせられていること、何らかの成果を上げれば自分も兄も解放される約束であること、そのためにはもはや山田を頼るしかないこと、といった作り話だった。涙混じりの懇願に、すっかり舞い上がった山田は「ボキに任せたまえ」と胸を叩き、次の戦闘で敵バトルコートにわざと負けるふりをしてあげよう、と請け合ってしまう。「素敵で格好いい山田さん」に抱きついてまで感謝し、「二人だけの内緒」と約束してさんざ愛想を重ねたあげくに立ち去ったブラックスノウは、山田の愚かさにほくそ笑む。
 皆井はブラックスノウからの通信を受けて、不承不承バトルコートで出撃し彼女を拾い上げる。アシュラシュヴェスターを操る山田は皆井の攻撃をわざと喰らおうとして体勢を崩し、予想以上のダメージをうけてシュヴェスターは合体が解けてしまう。山田を罵りながら燦緒がアキオーラスを制御しようとしたとき、敵の一撃に機体を貫かれて墜落する。勝手に射撃を行ったブラックスノウが哄笑するのに「男の勝負に手を出すな」と怒鳴りつけ、皆井は仕切直しとばかりに後退する。墜落した燦緒は重傷を負って倒れ、眞深や航の叫び声と山田の惑乱した悲鳴が通信機から響き渡る。
 病院に収容され絶対安静の燦緒の手を、眞深は悲痛をこらえて握りしめ、航達は言葉もなく、山田は皆に一切を白状した後、深い罪の意識にとらわれ、パピーズにも責められる。燦緒が復帰するまでの間、昇がいない以上はアキオーラスを任せられるだけの代役はおらず、いたとしてもどのみち精霊合体はできない。ブラックスノウからの報告を聞いたテイレクゼン博士は、この機に乗して独断で空中機動要塞を指揮し、プロミストアイランドに襲来する。航達が全力を出せない状況で気乗りのしない皆井は、なぜかマスターから戦闘に参加せずともよいと伝えられ、その意図をいぶかしむ。航と山田は何とか迎撃しようとするものの、敵要塞の巨大さに圧倒されてしまう。コンピュータじいやは島民を地下に避難させ、マッキー像を発射して無線誘導する。巨大な質量をぶつけて撃破しようとするこの緊急措置をうけて、航と山田は敵要塞の回避運動を阻止しようとするが、テイレクゼン博士からの罵声を浴びせられた皆井が、マッキー像の推進装置を狙撃して粉砕してしまう。航達が絶望しかけた瞬間、失速するマッキー像をヤマダインが空中で背負い、凄まじい馬力を発揮して敵要塞に突進する。無茶はやめろ、と叫ぶ航に、山田は「男の意地を見せてやる」と叫び返し、敵から離れるように言う。島から届いたパピーズの3人が自分を呼ぶ悲鳴を聞いて、山田は、「駄目なにーちゃんでごめんな、航達のいうことをよくきくんだぞ」と言い残し、通信を切る。敵要塞に突入の寸前、接近する皆井のバトルコートにもはや目も向けられず、「かあちゃん……!」と涙ながらにつぶやいて、山田はヤマダインもろとも大爆発の中に消える。敵要塞は大きく傾いて撤退し、後には呆然とする航達と、泣きわめくパピーズ達が残されたのだった。
 その頃、昇は敵秘密工場の中で、まさにあの竜型バトルコートを巡り、パペット達と戦っていた。女忍者に指示されて操縦席に飛び込んだ昇は、そこがヤマダインのものと似通っていることに疑問を感じる暇もなく、体が動くままにマシンに火を入れる。そして玲香は島で、パピーズ達を慰めながら、自らもじっと耐えるのだった。
 第25話 「稲妻轟く」 7/22
「山田がいなくなっても、攻撃続くプロミストアイランド。ぼくがなんとかしなきゃ……。そこにやってきたあのマシンは敵なの、それとも? 竜の叫びを耳にして、風よふけふけ嵐よ叫べ!」
 四散したヤマダインはあろうことに凄まじい速度で自己再生していくが、そこにはもちろん山田の姿はない。その悲しみに打ちのめされつつ、航は、いまみんなを守れるのが自分一人しかいない以上、自分もいざとなれば命を投げ出しても、と思い詰める。そんな険しい表情を、不意に背中にすがりついた可憐がそっと解きほぐす。「可憐達を、おいていかないでね」と訴えかけるその声と温もりに、航は小さくうなずいて答える。一方、鈴凛は四葉達とともにヤマダインの状態をチェックしながら、シュヴェスターマシンに秘められた力の恐ろしさを感じとる。パピーズの3人は、船着き場に座り込んで泣いてばかりいるが、そこに雛子と亞里亞がやってくる。雛子は、山田がまだ生きているらしい気配を亞里亞が感知していることを伝え、みんなで山田さんが帰ってくるようにお願いしよう、と励ます。半信半疑の3人だったが、やがてそれぞれ、おやつやゲームやお昼寝をがまんするから、とお祈りを始める。やがて5人でなぜかてるてる坊主を作り出し、これがウェルカムハウスの軒先に鈴なりにぶら下げられていく。
 燦緒はようやく意識を取り戻すなり、眞深に戦況を尋ねる。口ごもる妹に何事かを悟った燦緒は、病院を抜け出そうとして途中で衛に見つかってしまう。衛は、「いま燦緒さんまでいなくなっちゃったら、あにぃもぼくも泣いちゃうよ」と諭して連れ戻す。己の格好悪さを自嘲する燦緒は、でもそんなところも燦緒さんらしい、と屈託なく笑う衛に、ついつられて微笑む。同じ頃、鞠絵は久しぶりに体調をやや崩し、航達に心配をかけまいとしながら、自室で休む。小雨が降る窓の外を眺めながら、鞠絵は貝殻を胸に抱き、そこにわだかまる言いしれぬ不安を振り払おうとする。そこにやってきた花穂と雛子が、窓辺にてるてる坊主をぶらさげて、鞠絵ちゃんも早くげんげんげんきになってね、と励ますのに、鞠絵も微笑んで応える。
 雨が激しさを増す中、ついに敵バトルコートが現れる。航は単独で防衛戦に挑むが、やはりワタライダーだけでは戦力不足で圧倒されてしまう。自分を犠牲にせずに敵を撃退するには、と焦る航は、皆井を今度こそ説得できないものか、と試みる。だが敵搭乗者からの反応はなく、そこに燦緒が病院から、敵の動きが皆井のものと異なることを伝えてくる。以前の操縦者不在のバトルコートと同じ機械的なパターンを読みとった燦緒は、航に的確な指示を与え、敵の間接部を狙わせる。しかし、この攻撃が功を奏する前に、レーダーに新たなバトルコートの反応が出現し、航は絶望的な思いにとらわれる。だが、再び無理にでも出撃しようとする燦緒を制したのは、そのバトルコートから響く昇の声だった。それと同時に、麹町達を追いつめていたパペットの群れを、疾風のごとく現れた忍者姿の女性が瞬時に駆逐し、燦緒と眞深に迫っていたブラックスノウをも、赤子の手をひねるように撃退する。介抱されながらも怪訝な燦緒達に、その人物は忍者装束を解き、初めて顔とメイド姿をあらわにする。「亞里亞様がお世話になっております」とお辞儀するその正体は、なんと亞里亞のじいやさんだった。ワタライダーにかわって敵に挑みかかった昇マシンは、雄叫びとともに敵バトルコートを掴みあげて空中に放り投げ、サンダー・ブレスで一撃のもとに葬り去る。新たな味方マシンの登場と昇の帰還に、航達は喜び安堵する。だが、四葉によってさっそく昇竜ノボルガーと名付けられたこのマシンを見上げながら、玲香は複雑な思いで「にいさん……」とささやき、パピーズの3人は、きっとにーちゃんも帰ってくるよね、とお互いを励まし合いながら、再び夕焼けの空に向かってお祈りをするのだった。
 そしてちょうどその頃、ようやく目覚めた山田は思わず「……生きてる」とつぶやいた。しかしそこは敵基地の中。じつは山田はあの特攻のさいに致命傷を負いながらも、やはり大爆発に巻き込まれた皆井の攻撃によってたまたまそぎとられた操縦席ごと回収され、その無謀な勇気とタフさを評価したテイレクゼン博士の手によって、半ばサイボーグ化され蘇っていたのだ。窮地に一生を得たことに泣きながら喜ぶものの、山田の体にはテイレクゼン博士に逆らえないようにショックサーキットが埋め込まれており、その電気ショックに脅されて、山田はシュヴェスターの情報を吐かされる。しかし、たいした知識も持っていないと判明した後は、奴隷サイボーグ「R・山田太郎」として敵基地内で重労働にこき使われることになる。その無様な姿をあざ笑うブラックスノウに、山田はこないだの借りを返そうとして逆に痛めつけられる。その情けない有様を皆井は無言で見つめ、ふと眼鏡をかけ直す。そしてじいやさんに復讐を誓うブラックスノウに、ミストレスは、お前では無理よ、とそっけなく応えつつ、遠く思いをはせるのだった。
 第26話 「瞳そらさず」 7/29
「新たなマシンとの新たな合体。でも敵の攻撃のなか、はたしてうまくいくのだろうか? 昇さんを信じて玲香さん、兄妹が胸のリズム合わせたら、できないことはないんだから!」
 ノボルガーの内部に精霊エネルギーサブシステムと基本的な精霊合体システムを発見した鈴凛は、敵の潜在的な力に不安を抱きつつ発憤され、昇やじいやさん達と協力して改造を試みる。なんとそれは、いま行動可能なワタライダーとノボルガーを合体させようというものだった。あまりに無謀では、と躊躇する航達に、鈴凛は自分達に任せて、と自信満々に笑う。じいやさんの手はずにしたがい、島には次々と資材などが運び込まれ、マッキー像もパペットレーダー装備の2代目が既に島頂上に設置されていた。頼りがいのあるじいやさんに、航達はじいやに次ぐ保護者を見いだした気持ちになるが、亞里亞のしつけを厳しくチェックするじいやさんは、航達にもまた容赦なかった。
 そんなじいやさんと昇が親しげに打ち合わせる姿を、玲香は沈んだ表情で見つめる。兄が無事帰還できたのはじいやさんのおかげだと聞いて頭ではそう理解していても、モヤモヤが払拭できない。親友を気遣いながら「ひょっとしてやきもち?」とからかう咲耶に「咲耶じゃあるまいし」と返しつつ、実際そうであることを認めようとしない。そして、兄が戦いに参加することにはどうしても絶対反対の態度を捨てられず、不満の矛先をじいやさんや鈴凛に向けてしまう。妹をたしなめる昇に、玲香は「にいさんは私に何も話してくれないじゃない」と叫び、駆け去っていく。困惑する昇に、咲耶は、玲香が昇のことをどれだけ心配していたかを打ち明け、ひとりぼっちにしないであげて、とお願いする。妹を大切に思いながらかえって妹を蚊帳の外に置いていたと気づいた昇は、急いで帰り、部屋で布団にもぐった泣き顔の玲香に、全てを聞いて自分と分かちもってくれるか、と問いかける。当たり前でしょ兄妹なんだから、と憤然とする玲香に、昇は感謝しつつ話し始める。一切を伝えられた玲香はさすがに衝撃を抑えきれないが、それでも兄こそ養家の恐るべき正体に傷ついていると感じて、兄を慰めようとする。だが昇は、だからこの自分の手で過ちを正さないといけないんだ、と決意を告げ、玲香は言葉を失う。
 翌日、玲香はウェルカムハウスを訪れてじいやさんに謝るが、それでも自分は兄を戦わせたくない、と正直に告白する。じいやさんは、それならあなたが代わりに戦いますか、と淡々と問いかけ、玲香は噴き出す感情を必死にこらえながら、どうしてこんなことに、いったい誰のせいなの、と肩を震わせる。そのうつむいてこらえる姿を見つめていたじいやさんは、そっと玲香を引き寄せて無言で胸に抱く。驚きつつもその胸で泣きじゃくる玲香に、歌の練習をしていた亞里亞はハンカチを差し出し、それに微笑んでうなずいたじいやさんは、ふと遠い空に瞳を向ける。
 じつは疲労の限界に達していた昇を無理矢理眠らせて、玲香は、夜っぴいてノボルガーの改造に取り組む鈴凛に夜食を差入れる。なぜ航のためにそこまでできるのか尋ねると、鈴凛は、戦いを早く終わらせたいとかみんなを守るためにとか、そういうきれいごとだけじゃなく、兄が戦わなければならないのなら、自分も一緒にその罪や苦しみを分かち合いたいから、と答える。兄が、敵の人でさえ傷つけまいと頑張っていること、そのために航自身が傷ついてもなお耐えようとしていること、しかし妹の自分達を守らなければならないということとの板挟みになっていること。そして、それは昇にもあてはまるだろうということ。「アニキの次ぐらいに、いいお兄さんだと思うけどナ」と笑う鈴凛に、玲香は肩を落とし、そんな兄をもった私はどうしたらいいの、と口をとがらせる。「とりあえずそこのドライバー取って」と答えつつ再び回路をいじり始める鈴凛の後ろ姿に、ふとおかしみを感じた玲香は、そこにやってきたメカ鈴凛とプロトメカ、そして千影とつなぎ姿の可憐と眞深に微笑む。可憐と千影はノボルガーのハーモニーユニットを調律し、眞深と玲香は鈴凛の指示で手を貸し、それぞれの兄のために妹達は力を合わせる。
 翌早朝、昇が眠い目をこすりながら様子を見にきたとき、そこには新生ノボルガーが完成していた。完徹続きでハイテンションな鈴凛は、昇に新能力の説明をしながら、玲香の助力に感謝する。その玲香は、徹夜の重労働を終えて、可憐達と相重なるように寝入っていた。眼鏡のずり落ちた妹の寝顔に、昇はおかしさと愛しさを胸に抱くが、鈴凛にお礼を言おうとする間もなく、非常警報が鳴り響く。最終チェックが完了していないものの、ただちに出撃する昇、そして航。今度の超重装甲バトルコートを操る皆井は、ワタライダーはもちろんノボルガーの攻撃さえも鼻で笑いながら、奪われた竜型マシンを奪還しようとアームを伸ばす。鈍重な敵ながら打つ手に困った航達に、鈴凛が新たな合体を指示する。目覚めた玲香がモニター越しに見守る中、昇は航とともに初めての合体をコマンドするが、ノボルガーの変型機構が作動せず、バトルコートは見る間に迫り来る。玲香は絶望にとらわれかけ顔を背けるが、周りの鈴凛達も、敵の眼前にいる航達もあきらめない姿に励まされる。玲香が兄に「私も一緒に戦うから」と叫び、昇が未だ抱いていた滝神家へのこだわりを妹への愛で打ち破ったとき、黄色い帽子の少女が公園の樹上に踊り、亞里亞の体が輝きだす。この光にあの夢の中での救いの力を感じとった千影は、すぐさま魔法陣を描いてその上に亞里亞を浮かばせる。亞里亞が穏やかな表情のまま目を閉じて、胸元でそっと両手を握り歌声を響かせると、その頭上に成人した亞里亞のごとき幻像が現れ、操る精霊のないままに精霊合体を導く。ノボルガーとワタライダーはたちまちハーモニーサーキットを共鳴させ、ここにドラッヘンシュヴェスターが誕生した。
 全身に雷をまとわせて、ドラッヘンシュヴェスターは敵バトルコートに体当たりをくらわせ、皆井の反撃をものともせずに、プロテクト・ラースに包まれた空間をパラス・ライトニングで充満させ、敵の分厚い装甲を木っ端微塵に吹き飛ばす。皆井は歯がみしながら脱出し、ウェルカムハウスは危機を脱する。帰還した昇は、玲香に「何をぐずぐずしていたの」と怒られて必死に言い訳をし、そんな親友に咲耶は「まったく素直じゃないんだから」とあきれ顔で笑い、他の徹夜組と雛子はテーブルに突っ伏して寝入ってしまった。
 その頃、山田は敵基地で、怒れるテイレクゼン博士のはけ口として、パペット・サージェントにドラゴンスープレックスをかけられて悶絶する。そしてブラックスノウは、昇の生存と戦闘参加の事実をミストレスから失望とともに伝えられ、愕然としながら憎悪の炎を燃やすのだった。


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