これは、桜井のりお先生の作品『僕の心のヤバイやつ』(秋田書店・マンガクロス)の登場人物による
『ふたりはプリキュア』(ABC・東映アニメーション)パロディ二次創作のはずでしたが、
さらに同先生作品『ロロッロ!』(秋田書店・週刊少年チャンピオン)の登場人物も出演させてみたところ、
どうにもニチアサで放送できない内容になってしまいました。



僕がプリキュアでヤバイやつ


<タイトルロゴ募集中!>



<あらすじ>

中学2年生の陰キャ男子・市川京太郎とその同級生の陽キャ女子・山田杏奈が、
謎の怪物の襲撃をきっかけに偶然プリキュアとなっていろいろするうちに、
お互いの心のなかに甘酸っぱい秘密を育んでいく。


<主題歌>
オープニング「DANGER!僕らはプリキュア」 エンディング「あ゛あ゛あ゛がぐぐぐ」

プリキュア プリキュア プリキュア プリキュア  
どうして こんなことに 僕らは プリキュア
一袋空けたらもう一袋 ぶっちゃけ食い過ぎ
いい顔してても中身は むちゃくちゃガキだし
お互い接点はなかったはずなんだが
すごく ぬめる 手汗 (ニチャア)
Your Heart My Heart 生きてるだけで
がんばるつもりは一切ない
笑う声を聞くと笑われてる気がする
ネガティブが身上 男は黒に染まれ
命がいくつあっても足りないだろこれ 責任者誰だ 
プリキュア プリキュア プリキュア プリキュア
それでも なぜだか 僕らは プリキュア

ポテチとか プルーチェとか 食べてるときはゴリラの鼻歌なの
今日もふわっとした女子の空気は守られたよ(ウフフキャウキャウ) 
地球のため みんなのため 全部どうでもいいが
何事にも一生懸命なのに上手くいかないことの方が多いようだ
胸がどうとか気にするな あらゆる感覚で意識するな
ごくふつうの中学生男子みたいなつもりでは決してない
だってやってられるかこんなん 隠キャの仕事じゃないだろ
うまい棒くわえて喜んでる それが元気のもとではあるお互い
絶対間違っている だが平和で脳天気に暮らしてもらわないと
絶対困るので しょうがないから手を貸してやるだけだ
なのにどうして 今日もこうして とても捗る はか どる




<登場人物設定>
市川京太郎(いちかわ きょうたろう) 陰キャ。殺人妄想をもてあそぶ中二病真っ盛りだが、性格は優しく繊細。変身すると技能・支援系のキュアシルエット(黒)になり、影を操る。操作能力は経験を積むにしたがい向上。なお、山田と手を繋がないと変身できない。
山田 杏奈(やまだ あんな) 陽キャで雑誌モデル。見た目は完璧だが残念美人。変身するとパワー系・タンク系のキュアスイーツ(白)になり、格闘戦を専らとする。戦闘中でも食べることで急速回復する。なお、市川と手を繋がないと変身できない。
小林 ちひろ(こばやし ちひろ) 「ちぃ」。クラス女子で山田グループ。山田の親友。彼氏さん。バスケ部員で面倒見がよく負けず嫌い。
関根 萌子(せきね もえこ) 「萌子」。クラス女子で山田グループ。彼ピッピがほしいと言っているがビッチではない。要領がよく成績優秀。
吉田 芹那(よしだ せりな) 「にゃあ」。クラス女子で山田グループ。威圧感があるがヤンキーではない。友達思いの照れ屋。
足立(あだち) バカその1と目されるクラス男子。明るいスケベのお調子者。
大田(おおた) バカその2と目されるクラス男子。足立・神崎とよくつるんでいる。
神埼(かんざき) ブス専ではないクラス男子。マニアックな性癖を堂々と口にする猛者。原さんといい関係になる。
原(はら) 原さん。ぽっちゃり系で穏やかな性格。美術部所属で絵が上手い。神崎といい関係になる。
金生谷 倫(かなおや りん) クラス女子で、山田たちとは別グループ。小学生時代は芹那と仲良しだった。
担任の先生 市川・山田たちの担任。体育が専門。生徒思いだが、暑苦しいとウザがられがち。
保健室の先生 市川も山田もよくお世話になる。コーヒーうめえ。
南條(なんじょう) ナンパイ。山田にしつこくからんでくる。
おねえ 京太郎の姉。大学生で軽音サークル所属。弟を溺愛しているが、弟からはウザがられている。
市川母 京太郎の母。主婦。娘・息子の目元は母親似。
市川父 京太郎の父。穏やかでわりと無口。
山田母 杏奈の母。容姿端麗。外では娘に厳しく振る舞うが家の中ではわりと甘い。
わん太郎 山田家のペット犬。性格は飼い主に多少似ている。
あおい 妖精界ヨヨッヨから逃げてきた妖精。王女マリエンヌの幼馴染。マリエンヌの脱衣を諌める常識人。妖精界を破壊しかけた姉の暴走に心を痛めている。人間の姿をとることができ、そのときの名前も「あおい」。『キラキラ☆プリキュアアラモード』の主要登場人物と名前が被っているが、ごめんねあおちゃん。
マリエンヌ 妖精界ヨヨッヨの王女。すぐ脱衣する。幼馴染のあおいに恋心を抱き、ついに婚約にまでこぎつけた。人間の姿をとることができ、そのときの名前は「華(はな)」。『HUGっと!プリキュア』の主要登場人物と名前が被っているが、めちょっく。
アネポリス あおいの姉。元は妖精界ヨヨッヨの公序良俗を厳格に守る警備長だったが、溺愛する妹をマリエンヌがたぶらかしたと思い込んで逆上し、妖精界を暴力的に制圧した。妹を連れ戻すためには手段を選ばず、多元世界の破滅もいとわない。
タイホーダ 怪物。秩序を乱す危険存在と見なした対象を攻撃する。
シャサツーダ 怪物のパワーアップ版。後半から登場。たいてい銃器を所持しており凶悪。





<全49話構成 各話内容>
 話数・
 放映日
 
各話あらすじ・サブタイトル
第1話
(3/8)
 今日もクラスの自席でひとり『殺人百科』などを繙く市川。昼休みに図書室に行くと、そこには普段接点のない山田がおにぎりや駄菓子を頬張る姿が。動揺する間に他言無用を約束させられ、二人きりに耐えられず図書室を出た市川は、自分の居場所を奪った山田に殺意を抱き壁を蹴る。そのとき突如出現した怪物タイホーダが学校を襲う。皆が悲鳴をあげて避難する中、市川は怪物が図書室に向かっていることに気づき、なぜかそちらへ駆けていく。図書室では、逃げ込んできた妖精あおいを庇って本棚に隠れる山田が怪物に発見された。足がすくむ山田に、駆け込んできた市川がとっさに手を伸ばした。Karte.1「僕はありえない」
第2話
(3/15)
 とっさに伸ばされた手を握った瞬間、妖精あおいの力で市川と山田はプリキュアに変身。俺は男だぞ……!? とツッコミ入れる暇もなく怪物と戦闘開始。スイーツがポテチを補給しながら攻撃をすべて受け止め、シルエットがその隙を狙って影で封印して退治した。とたんに学校の被害はかき消えて元通り、困惑する教師生徒たちをよそに山田は大はしゃぎ。こんなの金輪際関わりたくないと背を向けようとする市川は、あおいの懇願と山田の笑顔に、やがて長い溜息をついた。Karte.2「僕はあきらめた」
第3話
(3/22)
 放課後の図書室であおいが語る妖精界の事件。王女マリエンヌはすでに敵の虜囚となり、人間界に逃げてきたあおいも捕らえようとつけ狙われる。人間界的には迷惑では……山田のフォローを自分が相当しなければいけないのでは……いやそもそも王女を救出するなど無理では……と市川は黙考。翌日、またも学校を襲う怪物をなんとか退治できたものの、これが続くのかとげんなりする市川に、あおいは自分のせいで迷惑をかけてしまってと俯き詫びる。山田はあおいを励まそうとチョコをすすめ、市川は気まずそうに椅子に座り直すと「……計画が要る」と呟いた。Karte.3「僕はノートを開いた」
第4話
(3/29)
 図書室で発表資料をいきあたりばったりで作成する山田。本棚の陰から覗く市川はカッターナイフを貸してあげたくなるが、自分などプリキュア以外では山田と無関係だ、刃物を持ってると知られたら余計に気持ち悪がられる、と遠慮する。そんなとき怪物が学校近辺に出現、ただちに変身する二人だが敵の猛攻にスイートの体力がぐんぐん奪われる。補給のポテチ大袋が……うまく開かない! 無理やり開けると勢い中身がばら撒かれてしまう! ピンチに陥ったスイートを救うべく、シルエットは咄嗟に影のカッターナイフを編む。ようやく退治なった後、山田はまだ食べきってないポテチ袋をあおいに、そしてふと市川にも差し出した。Karte.4「僕はおすそ分けされた」
第5話
(4/5)
 クラスでプリキュアが評判になり、足立たちが「どっちがエロい?」と雑談しているのを耳にして、市川は居たたまれなくなっていく。その連中の一人神崎が、原さんと図書室で待ち合わせ。出会わせた山田は市川を巻き込んでなんだかんだお節介し、いい雰囲気になったことに満足げ。ところが一緒に下校した神崎と原さんが怪物に襲われる。原さんを庇って怪物に立ち向かう神崎は力及ばず倒され失神。プリキュアが怪物退治した後、神崎は原さんの膝枕の上で目覚める。さらにいい雰囲気の二人を遠く振り返りながら市川は、自分の先を歩く山田もあんな男らしい行動を好むのだろうか、と思いに沈んでいた。Karte.5「僕は腕立て伏せした」
第6話
(4/12)
 筋肉痛がする腕をさすりながら、いや自分の持ち前は頭脳とテクニックだろう……と思い直す市川。気分転換に立ち寄った本屋で偶然、山田が自分のモデル写真の載った雑誌のあたりをウロウロしているのを発見。山田が立ち去った後で雑誌に手を伸ばしかけるが、買えずじまいで帰宅する。自室でもやもやする市川のもとへあおいが現れ、怪物出現を伝える。現場は別の本屋、山田はそこでも自分の雑誌を平積みに広げようと画策していた。退治後に何か言いたげな山田を横目に、市川は「まあ……責任上、汚れた商品は買ってあげないと……」と呟きつつ財布をバリバリ開いた。Karte.6「僕は購入した」
第7話
(4/19)
 自室に戻り雑誌を開くと、そこには見たこともなかった山田のモデル姿。自分と住む世界が違うんだ、プリキュアだけの関係だ、とあらためて実感した市川は、早く王女救出してこんな異常事態を終わらせよう、とノートを開く。しかし、救出のアイディアよりも山田の華麗な姿ばかりが思い浮かび、ついノートにスケッチしてしまう。翌日、山田から計画ノートを見せてと言われて市川はしどろもどろ、怪物出現でもごまかせずとうとうノートを差し出すことに。俯き震える市川に、山田は「絵、上手いじゃん!」と素直に驚き、自分もけっこう上手いよ、と猫カマキリを黙々と描き始めた。Karte.7「僕は見せられない」
第8話
(4/26)
 変身するたび手を繋ぐことに耐えられなくなりつつある市川。そんなある日、図書室に逃げ込んだ山田を追いかけて小林が登場。市川との何気ない会話の中でも、山田を親身に思う小林の気持ちが伝わってきた。僕より彼氏さんの方が山田のペアに相応しいのでは? 山田ももっと力を出せるのでは? 放課後、山田があおいに「ちぃもプリキュアになれない?」と尋ねてるのを目にして、市川は(ああ 山田もそう思っていたんだ)と悄然として踵を返す。そこに出現する怪物。駆けつけた山田が手を伸ばすが、市川は応えることができない。むしろ自分がここで倒されれば、入れ替わりに小林がプリキュアになれるのではないか……。迫る怪物の手、「市川!」と叫ぶ山田の声。Karte.8「僕は理解した」
第9話
(5/3)
 終わった。これでいいんだ。そのはずだったが、市川は山田に横跳びに抱え倒され、怪物の手を免れていた。体を強く打ち顔をしかめる山田に、市川は自罰の念に打ちのめされ、助けを求めて叫ぶ。聞きつけた小林は市川共に山田を抱えて木陰に避難させ、先生を呼んでくる、と駆け去った。その後姿を見て山田は、自分がちぃだったらもっと上手く戦って皆を守れるのに、と悔しそうに呟く。山田も自らの非力を嘆いていた、山田が自分を拒絶していたのではなかったと気づいた市川は、己を恥じて山田の顔を見られないまま、おそるおそるながらも彼女の手を探した。Karte.9「僕は手を伸ばした」
第10話
(5/10)
 給食の時間、それは山田の至福のひととき。しかし、まさにいただきますのタイミングで出現する怪物。憤るスイーツはとっとと片付けて戻ろうとするが、空腹なのに頑張りすぎてたちまち失速。焦るシルエットは一計を案じて、教室から影触手で運び出した給食一人前をスイーツに食べさせることに。だがそのためには、防御しながらあーんするスイーツに一口ずつ食べさせてあげねばならないという巨大な罠が……。ようやく退治し終えたものの気力を使い果たした市川をよそに、山田はわかめご飯を3杯おかわりしていた。Karte.10「僕はおなかいっぱいだ」
第11話
(5/17)
 休み時間、萌子は山田たちに理想的な彼ピッピについて得々と語る。その流れでクラス男子の品定めが上位から順に始まるが、評価はどんどん厳しくなるばかり。聞き耳を立てていた市川は、自分の名前が出ずに終わったことに、まぁそうだよなと納得する。だが萌子が山田にイケメン芸能人と出会う機会を根掘り葉掘り聞き始めたとき、市川はなんとなく落ち着かなくなってしまう。やがて休日、ナンパを求めて山田を連れ出した萌子を怪物が襲うも、山田とたまたま古書店から駆けつけた市川が変身して撃退。その勇姿に見惚れた萌子は月曜の教室で、「プリキュアくらい強くないと」と彼ピッピ基準をさらに釣り上げていた。Karte.11「僕は名前が挙がらない」
第12話
(5/24)
 登校時、後輩女子にキャッキャと囲まれて愛想よく応じる山田。だが前日の撮影の疲れもあって、授業中に山田は居眠りしては叱られる。昼休みの図書室でも、山田は机に顔を伏せて寝息をたてる。折り悪く怪物が近所に出現し、市川は山田の寝顔にドギマギしながら起こそうとするが、山田は変身してもなお寝ぼけて「おんぶしてって」とせがむ。シルエットは盛大に動揺したあげく、スイーツをなんとかお姫様だっこして怪物のもとに到着。退治後にようやく目覚めたスイーツは、それじゃ帰りは私が、とシルエットをお姫様だっこした。Karte.12「僕は起こせない」
第13話
(5/31)
 迫る学園祭。クラスはプリキュア調査発表をすることになったが、発案者足立の狙いは山田のコスプレ。しかしプロモにつき有料という理由で却下され、くじ引きで芹那と金生谷が担当と決定。仲間に面白がられる芹那だが、小学生時代に仲良しだったのに今はやや疎遠な金生谷とどうもぎこちなく、衣装合わせでは口論まで始めてしまう。このままでは本番が危うい、そんなときにも遠慮なく怪物襲来。買い出しの山田が戻るまで変身不可能。そんな危機を前に、芹那と金生谷はプリキュアのふりを演じて怪物を校舎から引き離すことに成功する。やがて本物のプリキュアが登場して無事退治、芹那たちも思わず笑顔。からかう足立にこれまた息ぴったりで蹴りをかました。Karte.13「僕は平和を好む」
第14話
(6/7)
 登校中、南條先輩が山田に馴れ馴れしくSMS交換を持ちかけてる姿を目撃する市川。そういうの自分には関係ないし……とは思うものの、気になってしかたなく何となく後ろをつけてしまい、すぐ山田に気づかれる。山田はほっとした表情で市川に話しかけ、市川は自分が山田にとって便利な助け舟なんだな、と半ば納得しつつモヤモヤ。昼休みに山田からSNS交換を持ちかけられた時もプリキュア業のためだろうと理解しつつ、しかしさすがに動揺を隠せない。怪物退治後にもう一度問われて、ついに交換。夜、自室でスマホを前に正座する市川は、山田からの着信に瞬時に反応。それがあおいのメッセージの伝言だと知って落胆悶絶しかけるが、「杏奈がたいへんなの!」との表示に、市川ははっと目を見開いた。Karte.14「僕は承諾した」
第15話
(6/14)
 何かと思えば、テスト勉強がたいへんなのだと聞いてがっくりする市川。だが山田は次のテストの結果が思わしくないと、仕事の制限や塾通いを命じられるかもしれない。それはプリキュアとしても困る、とあおいが相談を持ちかけたのだが、市川は図書室に山田が来なくなるかも、と焦りを感じた。そんな身勝手な自分に嫌気を覚えつつも、市川は山田のテスト対策を図書室で行うことにした。初めて山田の隣りに座ったことを意識すまいと市川は努力するが、やっと問題が解けた山田の笑顔の眩しさにしばし見とれてしまう。おかげで山田は普段より良い成績を収め、これでもう教えるのも終わりかと思いきや、その後も山田は勉強の助けを求めるようになり、市川は顔がニチャァとしないよう己を戒めるのだった。Karte.15「僕は並んだ」
第16話
(6/21)
 勉強の成果も出て、無事にオーディションを受けられることになった山田。図書室でもその準備に余念なく、駄菓子さえ手にしていない。市川はその横顔を目にして、山田の真摯さとプロ意識に心打たれ、そして自分との距離がますます遠くなっていくことを予感する。やがてオーディション当日、怪物襲撃に駆けつけた二人だったが、予定時刻まで余裕がないスイーツは焦ってうまく戦えない。ようやく退治したものの、もはや移動が間に合わないと気づき、スイーツはぐっと涙をこらえる。「……まだだ!」叫んだシルエットはスイーツを抱え上げ、自らの影を力の限り伸ばして、オーディション会場めがけてスイーツを精確に投げ飛ばす。こちらを一瞬振り返り手をふるスイーツの姿が遠ざかるのを見つめて、シルエットは(ああ 僕は山田が好きなんだ)と気づいた。Karte.16「僕は見送った」
第17話
(6/28)
 先日のオーディションは不合格。仲間たちに残念がられながらも、山田はいつもの調子で笑っている。市川はなんとなく気まずく、山田と普段通りに言葉を交わせない。昼休みに図書室に向かうと、ちょうど出てきてトイレに向かう山田の横顔に涙の筋を認めて立ち尽くす。せめて自分にできることは、と思いあぐねた末に、市川は全ての席に「ご自由にお使いください」と記したティッシュを並べた。戻ってきた山田はその光景に驚き、1つ手にしてくすりと微笑む。本棚の陰に隠れていた市川は、やがて小林が山田を慰めに来たことに気づいて(しまった、机の上を見て気持ち悪がられる……)と後悔したが、ティッシュは全てどこかに消えていた。Karte.17「僕は何もできない」
第18話
(7/5)
 モテる男の身長はどれくらいか。足立と大田が相変わらずの話題で盛り上がり、彼女が背伸びして届くくらいがいいんだよと話すのを耳にして、市川はつい山田と並ぶ自分を想像してしまい、慌てて首を振る。軽い怠さを感じて保健室で休んでいると、ふと身長計が目にとまり、試しに測ろうとしたところになぜか山田が現われる。見られたくない場面を見つかり赤面する市川を、山田はそのまま立たせて身長を測りつつ、体調を尋ねる。(まさか僕の様子を見に来たのか……?)いやいやあり得ない。そうするうちに出現した怪物を退治し、一息つくシルエットにスイーツは「疲れてない?」と優しく微笑みかける。思わず目を反らしながら、シルエットは小さく頷いた。養護教諭はコーヒーが美味い。Karte.18「僕は届かない」
第19話
(7/12)
 休日の市川は、姉に無理矢理連れられてハンバーガーショップに。折悪しく同じ店にやってきた山田たち。市川は山田と目が合ってしまうが、席が少し離れているのを幸い、できるだけ気配を消そうと身を縮める。それでも居たたまれずに、追加の品を買ってくるふりをして席を離れるが、なぜか山田も後を追ってカウンタに並ぶ。山田は普段通りに振る舞おうとするが、市川の同伴者が誰かをとうとう聞けずに戻る。そこに怪物が出現し、恵姉が危機にさらされるのを見て思わず「おねえ!」と叫んでしまい、退治後になぜか安心した表情の山田からそのことを言われて苦悶にのたうつのだった。Karte.19「僕は見つかった」
第20話
(7/19)
 体育のプール。山田が仕事で遅刻のため水着姿が見られない、と悲嘆に暮れる足立たちをよそに、市川はファッション雑誌今月号に掲載されていた山田の姿を反芻する。夏のリゾート地で輝く山田のそばに、自分のような者の居場所はない。そんな考えをぐるぐる巡らすうちに、市川は熱中症で倒れて保健室に運ばれる。やがて目覚めた市川は、心配そうに見つめる山田と目が合い悲鳴を抑える。なぜか同じく動揺する山田は、「ほ、ほら、こんなとき出てきたら大変だし」と言いつのるが、その言葉通りに怪物が出現。退治した勢いでプールに落ちた二人は、なんとなく水に浮かんだまま、黙って青空を見つめていた。Karte.20「僕は見上げた」
第21話
(7/26)
 夏休みはだらだら過ごす。そんなつもりの市川に、山田はお互いの予定を確認しようと言い出す。どちらかが旅行中に怪物が出たら、という理由に市川もしぶしぶ納得するが、山田は遠出の計画だけでなく毎日の過ごし方なども聞きたがり、市川を困惑させる。一方の市川も山田の予定が仕事や仲間との約束などでびっしり埋まっていることを知り、陽キャと自分との差に気が滅入っていく。怪物退治後にスケジュールを見直すと、何も予定のない1日を見つけて、山田は市川と必ず会う日にしておこう、そのほうが確実に変身できるから安心だし、と言い始める。その早口に気圧されるように、市川は自分の手帳に二重丸を書き入れた。Karte.21「僕は計画した」
第22話
(8/2)
 夏休み、山田と会う約束の日。心臓ばくばくさせて出かけた市川は、気がつけばおかしのまちおかで一緒に駄菓子を選ぶことに。山田のおすすめの品を教えてもらいながら、ようやく買い終えて店から出れば強烈な日差し。木陰で一息ついた山田は2本組アイスを取り出して、片方を市川に差し出す。反応できずに固まる市川をよそに出現する怪物。その攻撃を受け止めつつ回復用の駄菓子を次々と所望するスイーツに、シルエットはさっきのアイスをも食べさせるほかなくなり、安心と残念が入り交じる。退治が済んでふとアイスの棒を見ると「あたり」の文字。大喜びの山田は市川の手をとって駄菓子屋に駆け戻っていった。Karte.22「僕は半分こだ」
第23話
(8/9)
 図書館に来た市川は、あおいのお供でやってきた山田と出くわす。あおいは自分が元の妖精界から逃げ込んできた経路を探すため、この地域の伝承を調べているらしい。黙って見守っていると、目星のつけた場所を一緒に探索することになり、市川は嬉しい気持ちを無理にごまかす。途中で買い食いしたりしながら、最後に訪れたのは神社裏の岩室。その奥から響くかすかな物音に耳をそばだてていると、不意に怪物が躍り出る。狭い空間でもみくちゃになりながらなんとか退治すると、あおいは王女マリエンヌが助けを求める声を掴んで奥へと突進。後を追うシルエットたちが虹色にきらめく門をくぐると、そこは見知らぬ妖精界。はびこる怪物どもを倒しながら進んでいくが、敵の罠によってスイーツとシルエット・あおいは分断されてしまうのだった。Karte.23「僕は探検した」
第24話
(8/16)
 あおいから与えられたヒントを手がかりにして、スイーツは迷宮を進み、ついに牢囚の王女マリエンヌを発見する。マリエンヌはあおいたちが道に迷い怪物の群れに襲われている映像を観せられて絶望の嗚咽にむせぶが、スイーツは取り出した「ご自由にお使いください」ティッシュでその涙を優しく拭い「このティッシュはね、勇気の魔法がかかってるの」と励ます。そして気合を入れて立ち上がり、牢獄の壁をひたすら殴り続ける。最初は無駄と感じていた王女も、しだいに声をあげて応援を始める。だがスイーツを排除しようと襲来する守備隊の怪物ども。その危機を救ったのは、スイーツの殴打の震動を頼りに牢獄へとたどり着いたシルエットたちだった。あおいとマリエンヌが、シルエットとスイーツがお互いを呼び手をつないだ瞬間、凄まじい光と影の螺旋が放たれて怪物を殲滅し、そこに開いた門をくぐって4人は元の神社へと帰還した。Karte.24「僕は迷った」
第25話
(8/23)
 無事の再会に、あおいとマリエンヌは抱き合い嬉し涙にかきくれる。しかし妖精界はまだ解放されず、二人はしばらくこの世界にとどまることになるが、山田の部屋でかくまうのはそろそろ無理。そこでマリエンヌは王女の空間操作能力でポケット空間を創造し、そこであおいと共同生活を始めた。どこにでも行けると聞いた市川は、これでどこに怪物が出現しても対応できると安堵するが、山田は旅行したかった場所を巡ろうと提案。あおいの抵抗をよそに、大賛成のマリエンヌは各地への門を開いて、おいしいものツアーを始めてしまう。身バレを恐れない王女に苦労させられながら、市川も山田との旅行を少しだけ、ほんの少しだけ、満喫していた。Karte.25「僕は旅立った」
第26話
(8/30)
 夏休みももうすぐ終わり。宿題が残っている山田は市川の助けを求めるが、図書館は満員だしお互いの家に行くわけにもいかない。マリエンヌは山田の頼みに気安く応えて、二人の勉強・相談用の小部屋空間をしつらえる。(山田と僕だけの部屋……)懸命に表情を引き締める市川に、山田は数学の解き方を教わろうと身を寄せる。そのうえこの小部屋と扉1枚でつながる向こう側からは、王女とあおいのイチャイチャ声が漏れ聞こえ、市川は背中をこごめて耐える。そんな市川の横で山田は「あの二人、仲良いよね……」と誰ともなく呟き、手を隣へと伸ばしかけてふと止めた。市川はそれに気づかずトイレに向かった。Karte.26「僕はもう終わっている」
第27話
(9/6)
 王女を取り逃がした妖精界の怪物どもは、主・アネポリスの帰還に身を震わせる。彼女jが犯罪的だと決めつけた別の異世界に乗り込み、あるべき秩序を暴力で押し付けて戻ってきたのだ。妹あおいをたぶらかす王女を監禁したこの張本人は、あおいたちの逃走経路を調べ、それはそれとして守備隊を拷問尋問するが、居場所まで特定できず癇癪を起こす。その激情から生まれたパワーアップ版怪物のシャサツーダは、犠牲者を求めて街を襲撃。その見境いのない暴力に圧倒されかけたシルエットとスイーツは、マリエンヌの加護によって再びあの光と影の螺旋を放つ。見事に退治できたものの、今後の戦いに不安を抱く二人だった。Karte.27「僕は無実だ」
第28話
(9/13)
 怪物のパワーアップに対抗するため、マリエンヌは市川と山田に特訓を命じる。あおいが立てた計画に従い、筋力・瞬発力・持久力を鍛えさせられる二人。マラソンの途中で山田は音を上げ、市川も脱落しかけるが、山田をも守るためにはと踏みとどまる。そんな姿に山田も再び走り出すものの、市川の肩を掴んで「引っ張ってもらおう」と笑い、ふと市川の右目が隠れていないことに気づく。そこに出現した怪物に、疲労困憊の二人はかえって苦戦するが、掴まれた肩の熱さを感じたように、横顔をじっと見つめたように、シルエットとスイーツは意識を集中させて互いの手を握り、光と影の螺旋を初めて二人の力だけで放つ。怪物を消滅させ、ふらふらになりながら帰路につく二人は、手をそのまま握っていることにも気づかなかった。Karte.28「僕はふらふらだ」
第29話
(9/20)
 市川たちのクラスに短期留学生が突然やってくる。その正体は、この世界の学校生活に興味をもったマリエンヌ。止めきれなかったあおいは自らも留学生として別のクラスに入りつつ、二人には王女の面倒をみてくれと懇願する。しかしマリエンヌは授業中に教師を叱責したり、男子の着替えをガン見したり、給食に文句をつけたり、美術部のモデルになるべく服を脱ぎ始めたりと大暴走。尻ぬぐいに追われる市川と山田は、半裸のマリエンヌを隠すために備品倉庫に逃げ込む。王女がもう飽きたと姿を消すと、残された二人は狭いスペースで向き合ったまま見つめ合ってしまう。山田が何か言いかけたとき怪物が出現し、慌てて退治したもののさっきの言葉を続けることはなく、市川はとりあえずトイレに向かった。Karte.29「僕はへとへとだ」
第30話
(9/27)
 珍しく図書室で読書する山田。しかしそれは上北ふたご『ふたりはプリキュア 1』(講談社プリキュアコレクション 2014年 ISBN978-4-06-337813-9)だった。呆れる市川を、これも山田なりにプリキュアらしさを学ぼうという努力の一環なの、とあおいがたしなめる。(ふ、ふーん……?)と首をかしげる市川は、読み終えた山田からこの単行本を無理やり貸し与えられ、しょうがないので自室で読んでみることにする。すると幼児向け漫画なのに「期待や要求で相手を束縛せず 思いやりをもってお互いの幸せをねがってればいいんじゃない?」(p.81)「相手に対する素直な気持ちを口に出せば それいいんじゃない?」(p.107)といった台詞を目にして、(素直な気持ち……)(幸せを願って、か……)と思いに沈んだ。Karte.30「僕はステマした」
第31話
(10/4)
 社会見学で東映動画に行くことになった市川・山田班。班決めのときから山田は市川を誘おうと画策し、めでたく一緒に見学と決まって小躍りする。だが見学中に山田はプリキュアのにわかファンぶりを発揮し、それに巻き込まれかけた市川にそっぽを向かれてしまう。一転して落ち込んだ山田にどうしたらいいのか分からず、市川はますます距離をとるしまつ。そこに出現した怪物から逃げ惑う群衆にもまれて小林たちとはぐれ、さらに市川と山田も引き離される。人の波に押しつぶされそうになりながらも市川は腕をねじこむと、その手が誰かのぬるりとした手に触れる。(……手汗!)直感した市川はその手を握りしめ二人変身、怪物を無事に退治する。連絡のとれた小林たちが来るまで一息入れる山田の顔は赤く、体調を心配した市川がおずおずと差し出した冷たいミルクティー缶に、さらに激しく紅潮するのだった。Karte.31「僕はいたたまれない」
第32話
(10/11)
 三者面談日、順番を待つ山田とその母の姿に格差の源を見て取る市川。だが二人の番が来る前に、なんとアネポリスが自らこの世界に乗り込んで破壊行為を繰り広げ始める。変身して駆けつけた二人をたちまち圧倒し、とどめを刺そうと銃器の狙いをつけたそのとき、あおいが割り込み、姉に保護者として学校の面談に参加するようお願いする。よく分からないが最愛の妹に言われるがままに学校におもむいたアネポリスは、教師からあおいの品行や勉学のさまを褒めちぎられてご満悦。そのまま機嫌よく妖精界に戻っていくが、しかしマリエンヌは許せん、と怪物を置き土産に残していく。どうにか退治し面談を受ける市川は、自分の進路を教師に尋ねられて口ごもるのだった。Karte.32「僕は夢がない」
第33話
(10/18)
 秋の校内絵画コンクールに向けて画用紙を広げるクラス一同。適当に済ます足立、美術部の本気を見せる原さん、その姿を描こうとする神崎。やる気のない市川は、なぜか山田の求めで学校の絵になる光景を探すはめになる。しかたなく選んだのは陰のある場所ばかりだが、山田は不満を表すどころか、なぜそこを選んだのか興味津々で尋ねてくる。さらに市川がノートに描いていたイラストのことを言いかけるが、市川がたまらず顔を背けようとしているのを見て、急いで口をつぐむ。やがて山田はもごもごと詫びながら、「でも私、好きだな」と呟く。(えっ!? ……ああ、イラストが、ね!)そう気づいたものの耳が真っ赤に染まる市川。そんな二人の姿を甘酸っぺぇーという眼差しで覗き見ていた怪物は、二人に気づかれたとたん瞬殺された。Karte.33「僕は本気じゃない」
第34話
(10/25)
 学年後半イベント、席替え。内心期するものがある市川は、山田……ではなくマリエンヌの隣と決まり肩を落とす。しかも王女の言動は最初よりも落ち着いたとはいえハラハラさせられ通しで、市川に気の休まる暇がない。そんな市川のなんだかんだで面倒見のいいさまを、山田は遠く見つめて微笑んでいたが、そのうちにだんだん面白くなくなっていく。次の授業の教科書を忘れて市川に見せてもらおうとするマリエンヌに、山田は自分の教科書を貸してしまう。給食の苦手なおかずを王女が市川に譲ろうとするのにも、ご飯おかわりして戻る山田がひょいパクと横取りする。そんな山田の振る舞いに感づいたマリエンヌは、午後の授業でわざと煽りはするものの、担任教師にこっそり願い出て山田と席を入れ替えてもらうのだった。Karte.34「僕は祈った」
第35話
(11/1)
 バスケ部の試合の日が近づき、小林も遅くまで練習に励む。昼休みも山田にシュートのチェックをしてもらい、山田も親友のために協力を惜しまない。しかし学校で市川と過ごす時間は減ってしまい、言葉をかわすことも少なくなる。これも元に戻っただけのことだと達観する市川は、昼休みに訪れた図書室、山田のいないいつもの席に目をやり、ふとノートにスケッチをし始める。いないのが当然なんだ。いつまでもいるわけじゃないんだ。しかし、描いたその光景には、いつもの席で微笑む山田がいた。試合当日、応援に声を張り上げる山田。そこに怪物が襲来するが、万一に備えて観客席のはじっこにいた市川の機転で瞬殺。試合もなんとか競り勝ち、女子の平和は保たれたのだった。Karte.35「僕はひとりでいい」
第36話
(11/8)
 マリエンヌはわん太郎を気に入り、山田の代わりに散歩に連れ出す。よその家の飼い犬とすれ違うと、わん太郎はそちらを振り向いて心残りがありそうな顔。ピンときたマリエンヌは山田たちを巻き込んで、恋のキューピッド作戦を開始する。しかし相手の飼い犬は何をしてもつれない態度。ヤケになったマリエンヌは、魅了の矢を放ってまで無理矢理に恋仲に仕立てようと画策するが、さすがに市川に阻まれる。「銃刀法違反の凶悪犯だな?」突然出現したアネポリスがマリエンヌに銃を向ける。悲鳴を上げて逃走する王女、姉を止めようとするあおい。そのときスマホから警報が響く。地球に巨大隕石が落ちてくる。あおいの懇願を受けてアネポリスは宇宙へ飛び、隕石を一発で粉砕。地球の平和は保たれた。わん太郎の恋はこれからだ。Karte.36「僕はツッコむ気力もない」
第37話
(11/15)
 原さんが市川にひそひそ話。じつは神崎へのプレゼントで悩んでいるのだが、足立や大田では内緒にしてくれなさそうなので、市川に相談を持ちかけたのだ。市川は無難に答えるつもりながら、それなりに真面目に考えてアドバイスし、原さんの感謝の言葉にパアアといい気持ち。だが、その光景を遠くから見つめていた山田の視線に原さんは気づき、たちまち背筋を凍らせる。咄嗟のフォローもできないままチャイムが鳴り、授業中に恐る恐る様子を伺うと、山田が市川にぐいぐいと仕掛けて息をつかせる暇も与えない。見ている方が赤面にながらも、そうなんだあれくらいやっちゃっても男子は気づかないかもしれないから積極的にいったほうがいいんだ、とひとり納得。プレゼントの買い物中に出現した怪物はとっとと退治された。Karte.37「僕はうろたえた」
第38話
(11/22)
 「Gカップお姉さんに個人指導してもらえるんだぜ!」足立の雄叫びに市川は耳をそばだてる。(いや、興味はない。ないが……)しかし足立と太田が向かった施設の正体は、この世界の風紀乱れた住人を暴力的に鍛え直して治安要員に仕立てようと目論むアネポリスアカデミーだった。Gカップどころか自分の胸に風穴が開きそうな足立たちは、悲鳴を上げて逃げ惑う。あわやという瞬間に駆けつけたシルエットとスイーツ。命を救われた足立は恩知らずにもスイーツのボディラインを目に焼き付けようとするが、このことあるを予想したシルエットは自分の胸にパッドを入れておき、足立の視線を惹きつける。翌日の教室で「シルエット隠れ巨乳だぜ!」と叫ぶ足立の声に、市川は鳥肌が立った。Karte.38「僕は増量した」
第39話
(11/29)
 山田がテレビ番組に出演していると知り、慌ててリビングに陣取る市川。本日の話題はなんとプリキュア。活躍する二人の映像説明ののち、出演者はシルエット派かスイーツ派かで大騒ぎ。山田がスイーツ派を名乗るのを観た市川は、自分推しとはいかにもと納得しかけるが、山田のボードにはスイーツの可愛さアピールではなく「シルエットのベストパートナーだから」と書かれていて、その後もシルエット派の出演者を威嚇するような態度を繰り返す。戸惑う市川のあずかり知らない場所では、同じ番組を観ていたアネポリスが「なぜあおいを推さないのだ!?」と放送局にクレームを入れたあげくに怪物を送り込んでいた。やれやれ。Karte.39「僕は視聴した」
第40話
(12/6)
 ポケット空間部屋で山田の勉強をみていた市川は、気怠さを感じて一息入れる。しかしそれは、先日マリエンヌが発症していた妖精風邪のしわざだった。熱をみようと山田が市川のおでこに手をあてたとたん、二人はおとぎ話の世界へと引きずり込まれてしまう。巨人から身を隠し、女王の癇癪に逃げ惑い、悪戯好きな小人たちを山田がティッシュで作ったなれはてで追い散らす。やがてたどり着いたお菓子の家に、市川が止める暇もなく山田はもがーとかぶりつき、たちまち魔法の眠りにかかって倒れる。慌てふためく市川の耳元に(お姫様の目を覚まさせるのは、王子様の、熱いキッス……)と囁く声。心臓ばくばくさせた市川はふと気づいて声の主マリエンヌを捕縛し、この夢の世界から脱出する方法を聞き出す。ようやく元の部屋で目覚めた市川は、山田がまだ眠ったままだとおろおろするうちに、寝たふりの山田の肩が震えだした。Karte.40「僕は夢を見た」
第41話
(12/13)
 ファッション・テレビの雑誌に掲載された山田の写真などを、市川はこっそり収集している。そのスクラップブックを、計画ノートと間違えてポケット空間部屋に持ってきてしまうという痛恨のミス。急いで隠そうとするがそんな市川の挙動を山田の目は逃さない。「ねーねーそれ何?」と見たがる山田を何とかかわそうと、市川はシャツの中にしまい込む。それでも手をわきわきさせながらにじり寄る山田。怪物出現の連絡に市川はほっとして出撃したものの、怪物にコスチュームを引き裂かれてスクラップブックの中身が宙にばらまかれてしまう。退治後、コレクションを失ったあげく山田の顔も見られず体を震わせる市川に、無言の山田はスマホで自分の画像をいくつも送信する。市川は意外なプレゼントを凝視してパァァと喜ぶが、その様子を微笑んで見つめていた山田は、やがて我慢できずに市川の顎をクイして「実物は見ないの?」と問いかけた。Karte.41「僕は保存した」
第42話
(12/20)
 クリスマス、それは犯罪者逮捕のかきいれどき。アネポリスは賑わう繁華街に降り立ち、治安紊乱・犯罪行為と睨んだ者たちを次々と襲撃していく。フランチャイズ店にケーキ売り上げの無茶なノルマを課す企業社員、あらかじめ値上げしておいてクリスマス半額セールを謳う業者、シングルを見下すにわかカップル。(今日はほっといてもいいのでは?)市川はそう感じるがあおいに叱られてしぶしぶ出撃する。なんとかお引き取りいただいた頃にはもう夕暮れ、帰宅しようとする市川を山田は引き留めてしばらく街中をぶらつき、寒がる市川の首にマフラーを巻いてやり、きらめくイルミネーションの下でツーショット写真を自撮りする。スマホに送信された画像を自室のベッドに寝そべって繰り返し眺めながら、市川は様々な思いを巡らせてのたうち回った。Karte.42「僕らは見送った」
第43話
(12/27)
 年末恒例の秋田帰省の帰り道、市川は山田へのお土産にと秋田犬のキーホルダーを購入するが、はたして渡せるものか、渡していいものか判断がつかない。そうするうちに年が明け、市川はマリエンヌに呼ばれてポケット空間部屋へ入ると、そこでは着物姿の妖精二人がすっかり正月気分に浸っている。もしや、と思ったが残念ながら山田は普段着。しかし年初の挨拶をすませると山田はエプロンをつけて、母に教わってきたという雑煮をぎこちなく作り始める。だがそのとき、あおいからの年賀画像を受信したアネポリスは、その写真がマリエンヌ匂わせであることに気づいて激高し、「これがお前らのお年弾だ!」と初襲撃を開始する。ようやくご帰還いただいて炬燵でぐったりする市川は、雑煮めいた何かのお椀を運んできた山田に、懐のキーホルダーをおずおずと差し出した。Karte.43「僕はおめでたい」
第44話
(1/10)
 迫る学力テスト日。山田は市川に教わりながら、次の映画オーディションのことで言葉が弾む。だがその映画『犯人(ホシ)よりも遠い場所』は、アネポリスによるプロパガンダ用作品だった。当日の会場は、理不尽な命令で応募者が次々と倒れていく大惨事。駆けつけた市川は、オーディション内容とも状況とも無関係に濡れ場を演じようとするマリエンヌを反省させたうえで粛々と怪物退治に入る。一段落したスイーツは気分転換したいと言い張り、シルエットの手を引いてロケ予定地の南極へと空間移動する。凍えないかと恐れるシルエットは、極点の夜空に波打つオーロラの美しさに驚きしばし見つめるが、不意にスイーツが「やっぱりちょっと寒いね」と体を寄せてくるのに意識を全て持っていかれるのだった。Karte.44「僕は捗った」
第45話
(1/17)
 山田がアルバムを持ってきた。おお、これが幼少期の山田……。だが山田はもちろん市川のも見せろとせがむ。自室に戻ってなるべく問題のない写真を選びだそうとしていると、なんと山田たちが待ちきれずに空間移動でやって来てしまう。山田関連雑誌も出しっぱなしの有様を見られるくらいなら、とやむなくポケット空間部屋に戻り、アルバムを奪われて諦念に沈む市川。綴じられた写真には、様々な場所で姉の手を握る幼い市川の姿があった。「……こないだ撮った写真は?」なぜか不機嫌になる山田。だがそこに姉からの通知が届く。添付画像には、なぜかアネポリスと共にポーズを決める姉と軽音サークル一同の姿があった。「この飛び入りボーカルの人めちゃアツい! 警察官にはもったいないよ!」そうじゃないんだよ。Karte.45「僕は忘れていた」
第46話
(1/24)
 朝の学校、山田の靴箱の中にラブレター発見。小林たちは大いにはしゃぎ、市川は必死になって無視しようと努める。じつは南條が、こういう古い方法のがかえって断りにくいと考えての策略だった。偶然そうだと知った市川は半ば安心するが、山田は図書室で「……どうしたらいい?」と市川の顔をうかがう。それは山田が自分で決めることだろ、としか言えないことに、市川は悔しさを覚えて山田に背を向け立ち去る。突き放されたと感じた山田はひとりうつむき、ふとポケットをまさぐるが、あのティッシュは残り1つだけしかない。そのときアネポリスが、ついに決着をつけるべく怪物の大群とともに襲来。急いで駆けつけた市川と山田は互いの手をとるが、しかし変身できない。はっと顔を見合わせる二人をアネポリスは容赦なく攻撃し、山田をとっさにかばった市川は一撃を浴びて気絶。なんとか変身のためのエネルギーを、と割り込んだマリエンヌともども、アネポリスに連れ去られてしまうのだった。Karte.46「僕は関係ない」
第47話
(1/31)
 目を覚ました市川は、妖精界の迷宮牢獄に囚われた自分に気づく。巡視に訪れたアネポリスがかけた恐るべき自白の呪いによって、市川は心に積み重なるヤバイ痛みをえぐられ、しだいに抵抗の気力を失っていく。アネポリスは別牢のマリエンヌにも同じ仕打ちを与え、両者の自由意志を消し去ったうえで結婚させることで、王女を完全に遠ざけてあおいを取り戻そうと企んだのだ。変身できない山田が、あんなに冷たくしてしまった山田が、自分を助けに来るはずもない。何より会わせる顔もない。市川の心を絶望の闇が覆っていく。ついに結婚の日、式場に単身飛び込んできたあおいは姉に自分が戻るからもうやめてと懇願するが、アネポリスは確実を期すため儀式を続行。新郎市川が新婦マリエンヌの手に指輪を近づける。
 そのとき、はるか遠くから響いてくる小さな音。繰り返しくりかえし、諦めることなく何度でも、式場を囲む結界を殴り続ける拳の音。……さっきあおいが密かに市川の手に託した紙切れに、市川は目を落とす。「ぜったい いくからね」。裏返すとそこには、「ご自由にお使いください」の文字。瞳の闇が消えて影が蘇る。影は光とともにあるからだ。市川の心のヤバイやつが、山田のそれと鼓動を合わせた。変身! Karte.47「僕はもういやだ」
第48話
(2/7)
 (僕はこんな人間だ)離ればなれの二人がプリキュアに変身し、(それでも 僕は)怪物の群れを式場の内と外から切り裂いていく。(こいつが こんなにも)ついに互いの手が強くつよく結ばれて、光と影の渦がほとばしる。((好きだ))シルエットのコスチュームに光の筋が、スイーツのコスチュームに影の波が走り、影を光が、光を影が支え力づけていく。変身できないはずのプリキュアの登場に動揺していたアネポリスは、たちまち憤怒に身を染めて、凄まじい火力のすべてを二人と王女に向ける。だが、シルエットとスイーツはそのすべてを跳ね返す。それぞれのコスチュームに混じり合った光と影から相手の匂いをうっすら感じとったおかげで、二人の心はそれどころでなくヤバイからだ。だがアネポリスは臆することなく、自らの生命エネルギーを最期の一撃に込めようとする。姉を制止しようとするあおいの涙の叫びも届かない。そのときマリエンヌがいきなり全裸になり、アネポリスが「Porno Show !!」と一瞬気を取られた隙に、シルエットとスイーツの手が恋人つなぎで握り合わされ、ふたりの渾身の一撃が放たれた。Karte.48「僕らは手を伸ばした」
第49話
(2/14)
 最後の戦いからしばらくして。妖精界では王女マリエンヌとあおいの結婚式の準備が順調に進んでいた。アネポリスはプリキュアの一撃で浄化され、目覚めたのちに妹の願いをしっかり受け止めて、王女との結婚を認めた。いまは元通り警備長として、妖精界の風紀と治安を守ることに尽力しているが、妹と離れることの寂しさを表に出すまいと仕事に専念しているかのよう。そんなアネポリスを気遣った王女は、あおいの懸念にもかかわらずハネムーンの警護をも依頼して、アネポリスを発憤させた。もちろんベッドの中も警護するつもりである。そんなこんなでいろいろあるが、おおむね平和が戻ってきた。
 あれから市川と山田はなんとなく気恥ずかしく会話もできない日が続いていたが、招待されて列席。結婚する二人の幸せな笑顔に、山田は目をうるませ、市川は小さく溜息をつく。式の最後にマリエンヌとあおいが投げたブーケは、見事な弧を描いて飛んでいった。
 妖精界の一同に別れを告げて帰り道、山田はブーケを抱えてずっとご機嫌。その言葉に生返事ばかりの市川は、ふと山田がブーケに顔をうずめて涙を流していることに気づく。またいつでも会えるけれど、それでもあおいたちとの別れが寂しい。……いや、それだけなんだろうか、山田は。……僕は。それだけじゃ、ない。
 山田の指に、市川の指が触れる。はっと顔を上げた山田が、その指におそるおそる指をからめる。「あー……向こうが落ち着くの、いつ頃かな」「……春休みに入ったあたり、かな」「ふーん……」「……」「とくに、予定はない……かな」「……! じゃあ明日、図書室で」と言いかけたところでおなかがくーと鳴る。一瞬の沈黙、二人は吹き出す。山田はポケットをまさぐり、やっと見つけたチョコを半分に折って、片方を市川の口に押し込んだ。山田のはにかんだ笑顔が市川を照らす。二人の影が長く伸び、お互いの手は離れない。Karte.49「僕らはゆっくり歩いていく」



(2020年9月6日公開・くるぶしあんよ著)

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