ナウなヤングは堕胎スキー

 

 2004年7月20日の朝日新聞に、「中絶胎児、「一般ごみ」で廃棄 横浜の医院、手足は切断」という記事が掲載された。横浜の「伊勢佐木町クリニック」が中絶胎児を一般ゴミとして捨て続けていたというもの。胎児や胎盤は廃棄物処理法上、「感染性廃棄物」に該当し、また人の形をした第12週以降の胎児は「墓地埋葬法」上「死体」として取り扱われる。また判例上、人の形をした胎児を切断すると死体損壊、廃棄すれば死体遺棄にあたる。院長は「12週以降の中絶を行っていない」と主張したが、「廃棄物処理法」違反の罪に問われることとなった。

 日本では妊娠22週までの人工妊娠中絶が母胎保護法によって認められている。1948年から厚生省は、優性保護法に基づいて都道府県から届け出のあった中絶件数を集計してきた。その後、法律は母体保護法に代わったが集計は続いており、結果は母体保護統計として公開されている。平成13年「母胎保護統計」によると、同年における人工妊娠中絶341,588件のうち、56.6%が満7週以前、37.8%が満8-11週、3.1%が満12-15週にそれぞれ実施されている。実施理由は「母胎の健康」がほとんどで、「暴行・強迫によるもの」が192件、「不詳」が114件である。以上の傾向はここ数十年、それほど変化がない。女子人口あたり中絶率は1955年から1995年の40年で1/5も減少し、ここ最近は「15-49歳女性の約1%が中絶経験あり」といった状況である。中絶率は全体として下げ止まっているのだが、15-19歳および20-24歳の年齢層については、1990年代後半以降、むしろ増加傾向にある。2001年における件数(シェア)はそれぞれ46,511件(13.6%)と82,540件(24.2%)である。

なおこれまで10代については一括集計だったのだが、最近の中絶低年齢化を受けて、2003年度は初めて10代につき、1歳刻みで集計を行った。すると10代全体で見ると前年度よりも中絶率は微減しているが、10年前の約2倍であり、19歳女性の50人に一人、18歳だと64人に一人が中絶体験者であることが判明した(「19歳の中絶、50人に1人 厚労省が初めて集計」デーリー東北 2004.11.2)。

東京都の公立学校職員団体「東京都幼小中高性教育研究会」が1981年から3年おきに行っている調査(都立校20校の生徒3,500名)を対象に行った調査によると1993年から3年ごとの高校3年生男女の性交体験率はそれぞれ「27→29→38→37%」・「24→34→39→46%」。初体験の時期は男女とも中三から高二にかけてが多く、相手の約半数は高校生だった。1999年調査における初交避妊率は全学年男子48%、全学年女子49%だが、2回目以降の常時避妊率は男子27%、女子23%だった。「日本性教育協会」も1974年から全国規模で同様の調査を実施しており[http://www.jase.or.jp/kenkyu_zigyo/2_f.html]、これによれば1999年の中学男女の性交経験率は4%,3%、高校では24%, 27%とされる。現状では高校3年生時点で少なくとも1/4の男女が性交を行っており、そのうち約半数以上は避妊を行っていないということである。日本には高校3年生女子が62万7千人(2003年)ほど存在するので、最低数の見積もりでも78,000回、妊娠の可能性のあるせくーすが行われていることになる。   

「人口動態特殊報告」には、年齢層別出生数が記載されている。この数字を用いて中絶数/(中絶数+出産数)」(=「堕胎率」)を計算してみる。これは本来生まれるはずだった子供のうち、どれくらいが親の都合で中絶されたかを示すものである。長期的なスパンで見ると30代以上は昔より子供を「生む」方を選ぶようになってきている。これに対して24歳以下、特に19歳以下の層ではむしろ「堕ろす」傾向が強まっている。