「ファミレス・コンビニ店員の雇用関係」

 

 多くの場合、フランチャイズチェーン(FC)の加盟店(フランチャイジー)と本部(フランチャイザー)は独立した事業体である。このようなケースでは、加盟店のアルバイト店員は、あくまでもその店舗のオーナーとの間に雇用契約を結ぶことになるはずで、店員と本部の間には何の労働契約も存在しない(本部の直営店舗で雇われオーナーだったりすると、バイトは本部と雇用関係を結んでいる可能性がある)。

 

 アルバイトでも正社員でも、雇用契約の締結に当たっては労働基準法15条が適用される。「明示」が義務づけられている内容は「就業規則」とほとんど同じなので、「一定規模以上の企業では」こちらを見せられることの方が多い。わざわざ「一定規模以上」と書くのは、常時10人未満の労働者を使用する使用者には、就業規則を作成する義務はないからだ(労基法89条)。口頭で労働条件を言っただけでは「明示」したことにならないのだが、実際問題としてアルバイトのケースなどでは文書を見せていないケースも多々あるらしい。ただし、「明示」と「交付」は意味が違うので、使用者が契約書を文書の形で交付する義務はない。ところが短時間労働者については「パートタイム労働法」の適用も受けるので、雇用者には「労働時間その他の労働条件に関する事項」を記載した「雇い入れ通知書」交付する「努力規定」がある。

 

ここまでは「雇用契約」の話だが、次は「懲戒」の話。通常、就業規則に「事業所内では黒のボクサーパンツを着用」なんてことは書いていないと思うが、何かの間違いでそんな規定が存在し、かつこれらの規定に違反していることが疑われる場合には、就業規則の「表彰および制裁の定め」に照らし合わせて解釈されることになる。髭については、タクシー運転手が「髭を剃れ」という実務命令に従う義務がないことを確認した判例があり(「イースタン・エアポート事件」東京地裁昭55.12.15)、「茶髪」を理由とする解雇が解雇権の濫用とされた東谷山家事件(福岡地裁小倉支決平9.12.9)もある。現行判例では「従業員の行為が企業秩序の維持の妨げになり、又は業務遂行において著しい支障を来す」ことが懲戒の要件とされる。これが証明できない場合は懲戒権乱用の法理によってその懲戒が無効とされ、場合によっては従業員側に不法行為に基づく損害賠償権が発生する。この手の裁判で最近、目についたのは女装出勤裁判(東京地裁平14.6.20)で、これは性同一性障害の男性が女装して出勤したことを理由にした懲戒解雇を無効としたものである

 

 なお、解雇に関しては、これまで条文規定がなかったが、判例上「客観的かつ合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は権利乱用として無効とされてきた(日本食塩製造事件、最判1975.4.25)。2003218日の労働基準法改正法案要綱には、使用者が「労働者を解雇することができる」という解雇自由の原則に続いて、上記判例の解雇三原則が続いていた。解雇権乱用法理に立つ場合、使用者側に解雇の正当性を立証する責任が生じるが、この法案では権利乱用の立証義務が労働者側に転嫁されることになる。そのため、この法案は労働側からの強い反対を受け、最終的に平成15年改正労基準法第18条2項から解雇自由の原則は削除されている。