「義理妹と結婚」

 

 「学園」に通っているごく普通の学生に、突然、年齢の近い妹ができてしまう例として、もう一つのよく使用される例に、実親の結婚相手の「連れ子」が妹になるケースが挙げられる。「ホワイトブレス」(F&CFC02, 2004.7.23)を題材として、後者の場合について考えてみよう。

 

 現在、先輩・後輩の関係にある相模司と浅野ののかは、かつて兄妹として一つ屋根の下に住んでいたことがある。どういうことかというと、司の父とののかの母が結婚したため、その互いの連れ子である司とののかも兄妹になったというわけだ。しかしその後、父母が離婚し、それぞれが自分と血が繋がっている子供を引き取ったために、現在、二人は離れて暮らしている。

 

 司の父にとってののか母親は配偶者だが、その連れ子(ののか)との間には何の関係も存在しない。しかし養子縁組を行なうことで、彼女を実の子と同じにすることができる。その場合、司とののかは相続・扶養などに関してリアル兄妹と全く同じ扱いを受けることになるが、婚姻を妨げられることはない(民法7311項但書)。

 義理妹と結婚する以外に、次のような場合でも妹と結婚できてしまう。せっかくだから「CLANNAD」(Key, 2004.4.28)のキャラクターを使って説明しよう。

 

 岡崎朋也と、彼の親友の妹である春原芽衣が晴れて結婚することになった。その頃、娘の渚に死なれた古河秋生・早苗さん夫婦は、家業のパン屋を継がせるべく、養子を探していた。秋生は「俺と勝負して負けたら、うちのパン屋を継げ」と言っているようだが・・・。

 

 ここで朋也が勝負に負けて、芽衣が同時に秋生または早苗さんの養子に入ると、芽衣は朋也の「夫にして妹」ということになる。あるいは朋也もしくは芽衣が、古河家ではなく、相手の少なくとも片親の養子に入った場合でも同様である。なお、配偶者がある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得る必要がある(民法796条)のだが、別に養親夫婦揃って養子夫婦と縁組する義務はない。

 

 養子縁組によって生じた血縁関係は離縁によって終了するのだが、その例外が一つある。それは養親・養子の婚姻障害である(民法766条)。「奥様は巫女?R」(ぱじゃまソフト, 2004.6.25)の後日談ということで、例えば次のようなケースが考えられる。

 

 激しい男の奪い合いの末に吉野正太郎の奥様の座を射止めたのは鈴音だったが、晶はその後もメイドとして、彼の家で働いていた。鈴音はまだ正太郎が晶と続いているのでは、と思いつつ日を過ごしていたが、そんなある日、鈴音は余命幾ばくもないことを知ることになる。甲斐甲斐しく看護してくれる晶に感動したのか、鈴音は「晶さんを養女にお迎えしましょう」と語り、正太郎も「鈴音が死んだ後で離縁すれば、結婚できるだろう」と、これに同意した。

 

 夫婦の一方の死亡により、婚姻は解消するので、何もなければ正太郎は晴れて晶と再婚できる。しかしその前に晶を養子にしていれば、その後、離縁したとしても結婚は不可能である。何も知らない顔をしていた鈴音が実は一番、したたかだったのだ。ここで注意すべき点は、離縁後に婚姻できないのが養父母側当人とその直系尊属の集団と、養子のその配偶者とその子供および子供の配偶者の集団、それぞれの集団の間だけであるということだ。養子は法律によって血縁を作り出す行為であるため、養父母の実の子と養子は結婚できないのだが、養子関係が切れると同時にこの二人は婚姻が可能となる。なぜなら実の子は養父母の直系卑属に相当するため、民法736条の適用を受けないから。もう一点。養子とその実の親(およびその血族)との親族関係は特別養子縁組によって終了するが、その場合でも実方の直系血族又は3親等内の傍系血族との間では、婚姻できない(同734条)。