「鍵占星術」の読者から「美汐さんの性格が合ってないぞ」という反響があった。私もこの点は前から気になっていたのだが、基本的にはアセンダンス(ASD)の問題だろうと考えていた。ASDとは、生まれた瞬間に地平線から上ろうとしている星座の位置を示すもので、その人の「かくあるべき」と考える対社会的な姿、すなわち「ペルソナ」がここから読み取れる。ASDは1日で360度動き、2時間で一つの星座を移動する。このために出生時間がわからないと全く検討違いの結果が出てしまうので、上記の解釈には利用していない。惑星の配置から具体的な事件の内容を予想するには、惑星の入っているハウスの情報が必要であるが、そのハウスカスプの計算にも同様のことが言える。ゆえに「○月○日に何か悲しいことが起こりそう」までは予想できても、それが事故なのか病気なのか、それとも失恋なのかまでは予想できない(実際の人を占う場合には、「レクティファイ」と言って、それまでに実際に発生した事件から出生時間の推定も可能である)。ちなみに四柱推命では出生時間がわからないと時柱が立たないので、人生の流れまでは読めても、その「最終結果」がわからない。
ところが、ネイタルチャートをより詳しく読んでみると、思わぬ所に落とし穴があることが判明した。小惑星「カイロン」(キロン)の位置が、重要な意味を示していたのだ。この小惑星はその人の「心の傷」を象徴し、これが他の主要惑星とアスペクトを作っていると、特にその作用が大きくなる。カイロンの性質はのイージーアスペクトでもハードアスペクトでも大差ないが、イージーアスペクトの方が当人にとって気づきにくい分、たちが悪いとも言える。
美汐さんが生まれた日、カイロンは牡牛座24度にあった。この位置は獅子座24度の月とオーブ0度のスクエア。またオーブ2度で蠍座26度の木星と衝、また月と木星もスクエアであることから、カイロンと月・木星はfixed T-squareを形成している。彼女は幼少期の母親離れるがうまく行かなかった様子で、「母親から拒絶された」という思いを抱えている様子。普段、本人は気づいていないが、その思いはかなり深い。周囲の人の感情に敏感で、悲しそうな人を見ると自分が母親代わりになろうとする傾向がうかがえる。また「見えないもの」に対する感受性が強く、自分の傷を昇華するために、自分の作り出した物語に過剰にのめり込む危険性が指摘できる。美汐さんのチャートの特徴として射手座に星座が集まっていることがあるのだが、これらの星はすべて射手座の支配星である木星の影響を受けるので、その性質にカイロンの影響が及ぶ。そのために「未来志向で前向き」という基本性格に変わりはないとしても、それに深い同情心が加わってくるわけだ。
更にカイロンはオーブ3度で山羊座27度の火星とトラインであるために、自分の内にある男性像(アニムス)にもこれが影響する。そのために傷ついた男性に心引かれる傾向がある。更に重要なのは、月が入っている獅子座は火星が支配しているので、この月は二重にカイロンの影響を受けている点である。獅子座の強い自己主張傾向は自分に対する自信のなさの裏返しなのだが、美汐さんの場合はこれほどドラマティックに自分を出していくことは考えにくく、むしろ自己評価の低さという点が強目に出る可能性がある。また七瀬(ONE)のように高圧的な態度と妙に子供っぽい態度が交互に出るのも獅子座の太陽や月の特徴だが、同様の理由から後者の要素が強くでているような雰囲気もある。
以上の話でカイロンの位置が重要であることが示唆されたので、次にこれを利用して、いつ美汐さんの「キツネ事件」が発生したのかを推定してみよう。これには「トランジット法」という未来予測の方法を応用する。 生まれた時点(ネイタル)のチャート上の天体と、実世界のある時点(トランジット)の天体の位置関係から、何かが起こりそうな時点を推定する。キツネ事件が起こるのは、彼女が祐一と出会う前のことという情報しかないはずだが、逆にいうとこの16年間の範囲で、もっとも大きな影響を与えそうな天体である土星の運行を調べればよさげである。
この期間で、彼女のnカイロン(牡牛座24度)とt土星がスクエアに位置する(水瓶座24度)のは1993年。この時期、土星はこの近辺で逆行しているので、候補は3月、10月、12月の3つがある。他の惑星の配置を検討すると、最も激しそうな状況にあるのは1993年3月7日近辺であることがわかる。この日に起こっていることを列記すると、
トップページに戻る。