「終末の過ごし方」

(アボガドパワーズ / 1999.4.9)


 「アボガドパワーズ」から1999年に発売された。2003年にMS-Windows XP対応のDVD版が出ており、こちらには(出版元である新声社の倒産によって廃刊になった)「オフィシャルアートワークス」の復刻改訂版が付いている。そのために箱が巨大(A4サイズ)だが、中身はDVD一枚。また、今となっては珍しいことにMSX版も出ている。

 この作品、はっきり言って「設定」の目の付け所だけで勝負している所がある。それがどんなものか、というのはOHPを見た方が早い。登場人物の説明もここに書いているが、「さりげに援交経験者(10人20回程度)」(宮森香織)なんて話は本編には出てこなかったような気がする。

 タイトルに「The world is drawing to an W/end.」 とあるように、作品中の世界は終末(Week end)に終末(World end)を迎える。残された1週間の間に主人公(知智)たちが何を考えて、どう行動するのか、という話。あえてネタばれせずとも、設定から予想される以上の展開はないし、ましてや「奇跡」なんてものも起きない。ある意味、「潔い」ゲームである。

 主人公と終末を迎える可能性があるのは香織・緑・いろは・歌奈の4人。いずれもいる場所は決まっているので、毎日、そこに通えばしかるべきエンディングになるはず。これらの話の中に「多弘&留希」「重久&千恵子」のストーリが平行して進行していく。それぞれのキャラについてエンディングは2つずつ用意されていて、これは木曜日の選択枝一つで決定される。プレイ時間は1時間程度だが、二回目からはスキップを使うと15分ぐらいで終わってしまう。

 この作品の見所は、独特の演出だろう。始めの方の「ト書き」のようなテキスト進行は、プレイヤーを「客観的」な立場から作品世界を見るように仕向けているが、一方でその世界の状況は「ラジオ」という臨場感のあるメディアを通じて彼らに提示される。このプレイヤーの二重の視点は、おそらく主人公の取りうる世界観(客観的に滅び行く世界を眺める・その中にあっても「今・ここ」を生きる)と重ね合わせられていて、よく読むとだんだん後者の色が濃くなっていくことがわかる。途中で一日、電波が止まるあたりもうまい演出で、「『C†C』はこの辺から『生きてるひと、いますか?』のネタを得たのでは」などと思ってしまう。

(結論)描き出そうとするテーマは興味深く、設定・演出も悪くないが、プレイヤーの想像に頼りすぎて、あまりにも記述を省略しすぎている部分が多すぎる(例えば緑と香織の関係など)。また同時進行する二組の話もそれほどうまくメインの話と絡んでいるといえず、なんか「水増し」感が漂っているような気が。「眼鏡フェチ」ゲーではないので、そういう趣味の人が買っても、あまり面白くはないだろう。


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