「雪が溶ける頃に・・・」

(Studio e・go! / 2002.4.19)


Studio e・go!の第14作。このソフトハウスはBLブランドも擁しているだけあって、主人公とサブキャラ男性の関係が、妙にやおい臭い感じを受ける。シナリオ中に露骨なホモシーンがあるわけではないが、巧みに脳内変換可能に作っているような気がしなくもない。というか、シナリオ的に見るべきとこはそれぐらいしかないという話も。典型的な「トレンディードラマ」タイプのゲームだが、周囲の女性キャラは基本的に既婚者である主人公に惹かれることになっていて、他の男性キャラ2人はそのルートから外れた場合に、おこぼれにあずかる仕組み。特に内科の柴田先生は、妻帯者からよしみを横取りされるとガンで死ぬという不条理な展開が待っているし。あわれ。

 攻略サイトを見た感じでは、星野みずき(主人公の奥さん)シナリオから、他の攻略対象5人の分岐が起こり、一旦、ルートに乗るとその人しか攻略不可能(TrueかBad)になる様子。いわゆる「団子のシナリオ」という奴で、メインヒロインである「みずき」のメインイベントは

  1. 「植田さとみ:強姦未遂→(ともえシナリオ分岐)
  2. 管よしみ:遺産相続紛争に巻き込まれる→
  3. 石岡ゆいな:レイープ&自殺未遂」→(あゆみシナリオ分岐)
というインパクトの強い事件がなしくずし的に解決した後で、やっとやってくる。まあ、彼女は「若奥さん」ということもあって、全シナリオの進行中にエロシーンが入りはするのだが。

 絵・音楽ともにクオリティーが高いし、サービスシーンも多いのだと思うが、個人的に一番、不満が残るのは作品全体として描きたいテーマが見えてこないところにある。特にこれは「眼鏡ドジ看護婦」の「ともえ」および婦長「よしみ」各シナリオに言えることで、いずれも「キャラ萌え」な人のために相応のキャラクターを配置したようにしか見えない。「あゆみ」シナリオに至っては、ほとんど意味レスなバッドエンドの代替物以外の何物でもない。「幼女系」の「さとみ」と「魔性の女」ゆいなについては「死にたい人を助けることに意味はあるのか?」という問題を提起するという点で、一応、メインイベントの伏線と言えなくもないのだが、これまた主人公が深刻に悩む前に問題が解決してしまう。なお、さとみルートはみずきTrueと並んでハッピーエンド(主人公の養子になる)があるが、バッドエンドでも本物の母親が彼女を引き取って終わる。一応、18歳ということになっているとはいえ、さすがに娘を陵辱している父親の所にそのまま帰すようなエンディングは、諸般の事情から作れなかったということか。

 一応、メインだと思われるみずきシナリオの概要は「結婚記念日の雪の夜に二人してデートに出かけたのはいいが、主人公が急患で病院に召還。その後、みずきが交通事故にあって、病院に担ぎこまれてくる。何とか命は取り留めるが、植物状態になって・・・」という話。見所は篠原とのさや当て。ストーリー全体に言えることだが、篠原を「正論しか言わない、ただのイヤな奴」という扱いにしているのは、シナリオの品質をかなり下げている。「死にたい人間は助ける必要がない」という主張が、メインテーマのアンチテーゼとしてリアリティーを帯びた形で表現されるために、このキャラクターをうまく動かさない手はないと思うのだが。篠原が主人公の聖人を嫌う理由は一応、描かれているのだが、そこのシーンで提起されている「お前は目の前の奴を救うことで自己満足していて、見えない奴のことはどうでもいいんじゃないか。」という指摘は、「それでも俺は目の前の奴を助けるのに全力を尽くす」という形でしか答えられていないように見える。何か論点が完全にすれ違っているんですが・・・。あと、このシナリオのバッドエンド(主人公キチガイ化→篠原殺害)は、ただダークなだけの手抜き作。主人公にとって真にバッドな事は何かと言えば、篠原に妻が助けられて、しかも妻が彼に感謝しているところで、彼が攻撃していた篠原が死ぬことだろうに。

 むしろこの作品で見るべきは「ゆいな」シナリオだろう。エロ画像の枚数が奥さんと張り合うぐらい多いことからも分かるように、かなりリキが入っている。主人公が現実逃避としてゆいなの元に走るというもので、ともえシナリオもよく似たような話だが、こっちの方がもっとドロドロしている。この作品が「君の望む永遠」と似ていると言われるのは、これが某マナマナシナリオに似ているからだと思われ。まあ「 ガンガル 」レベルのパチモンですが。

 舞台設定も悪くないし、テーマとしても面白いものを扱っているのだから、「9歳幼女ひなこ」みたいな「萌えるためだけのキャラ」を思い切って外し、企画段階でもう少し各シナリオの方向性を詰めてやれば、かなり面白い作品になったと思うのだが。少なくとも安易に「奇跡」なんてものを持ち出して、超越的に問題の解決を図るようなものよりは、はるかに深い話が書けると思われ。あと、聖人×篠原とか柴田×聖人(誘い受け)なんかも(お。


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