「North wind」

(Dream soft/ 2004.9.24)


 F&C系ブランド「 Dream soft」から発売された作品。「Last Letter」・「Snow Memory」・「North Wind」の3章立て構成で、攻略対象キャラは冬蔦儚(根暗な後輩)・柳雪華(記憶喪失女)・綾川佳暖(偽いもうと&メイド)の3人。ほかに姉キャラ(メイド)の小牧水澄と巫女さんの君塚深姫が出てくる。各章とも基本構成は同じだが、前章をクリアしないとシナリオ分岐が出ないため、最低でも3回は似たような話を読むことになる。ちなみに第1章は儚Normal、2章は雪華Normalと儚True、3章は雪華True・儚True2・佳暖といったところ。基本的に狙ったキャラを追いかけていれば自動的にフラグが立つので、別に頭を使うところはない。一話につき12日間分なので短いように見えるが、ボイスオンでプレイすると思ったよりも時間がかかる。

 全体的に一定水準でそつなく纏めた感じだが、肝心のシナリオ展開にメリハリがなく、一時間もプレイすると飽きてしまう。佳暖はメイド&いもうと萌えな人向けのおまけ扱いで、全体の話を構築する上では別段、いてもいなくてもそれほど大差ない。事実上、儚・雪華・主人公の三角関係を扱った話だが、ドラマとしてみるとあまりに中途半端。正直、lightの「僕と僕らの夏(完全版)」の方が数段、出来がよいと思う。


*以下、ネタばれあり。注意。

 基本的な話の構成は極めて単純である。東京の大学1年、秋月誠は3年前から毎年、冬になると里帰りをしていた。たまたま今年は後輩(学園3年)の儚もついてきたわけだが、当の本人は「旅行中に片思いをしている主人公に告白しよう」と思っていた。ここからは各章によって展開が変わるが、いずれにせよ、二人は記憶喪失の雪華と出会うことになる。 ここでネタばれすると、雪華は「幽霊」である。誠は3年前、山の竹薮の中にある一軒屋に迷い込み、そこで療養中だった雪華に出会った。それから休みごとに彼は彼女に会いにきていて、この冬に神社で会おうと約束していた。が、雪華は彼が来る前に死んでしまい、神社の御霊(文様)と深姫の力で、少しの間、期限付きで実体化していたわけだ。ただし、文様は彼女を実体化するにあたり、一つ条件をつけた。それは彼女の記憶を消すことだった。もう一つの設定。誠が約束を守って神社にやってきたその時、文様は彼の雪華に関する記憶も消してしまった。

 ここからの展開は章ごとに異なる。まず第1章では雪華が何者かはよくわからないまま、誠と儚がくっついてしまう。雪華は記憶が戻っているのだが、誠は最後の最後まで彼女のことを忘れたまま。帰りの列車の中で開いた手紙を見て彼女のことを思い出すが、すでに後の祭りだった。2章も同じ展開だが異なる点がある。儚が雪華の事情を知ってしまう点である。(個人的には嫌いなタイプのキャラだが)儚シナリオの見所は、雪華の意思を汲んで、列車の中で彼女が誠の記憶を消すシーンだろう。一方、雪華シナリオは記憶が戻った後、「彼女を永遠に待ち続ける」という展開になる。どちらもベタだが「王道な展開」である。第3章では雪華のみならず誠も完全に記憶喪失になってしまう。シナリオ的には2章と大差ないが、(雪華以外の)彼の周りの人間が寄ってたかって「自分の都合のよいように」彼との過去を捏造するところが興味深い。儚のイヤな部分(好きな人にとってはたまらないのだろうが)が堪能できるが、正直、2章ほどのインパクトはない。

(総括)全体のテーマと各キャラクターの設定をリンクさせたところまではよかったが、シナリオの全体構成を誤ったという感じを強く受ける。メイド姉妹の扱いも中途半端だし、少なくとも2回目のループは必要性を感じない。巫女さんやメイドさんを見たいなら、他にもゲームはあるので、わざわざ時間をかけてプレイするだけの価値はあまり感じない。


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