「いたいけな彼女」

(ZERO / 2003.10.24)


 「はじめてのおるすばん」・「はじめてのおいしゃさん」で一躍有名になった「ZERO」のゲーム。OHPにあるように、攻略対象は「七瀬ほのか」ただ一人。ゲーム中の期間は6月30日から7月17日までで、前半部の主人公(拓巳)の行動で「純愛ルート」・「鬼畜ルート」に分岐する。後者は7/11の選択で7/13出現のイベントが変わるが、基本的にはどちらのルートも一本道。プレイ時間は各ルート4-5時間ぐらいか。鬼畜ルートは作業のようにえろい命令を下し続けていれば「メンタル攻撃でほのかを崩壊させる」なんてこともなく、あっさりと話が終わる。キャラを「都合のいい女」として遊び倒す辺りは、ある意味、「はじるす」に通じる所がある。純愛ルートは別に大層なストーリーが用意されているわけでもないので、「どこまでこのキャラにのめり込めるか」という所が楽しめるかどうかの鍵になると思われ。ちなみに私には退屈だったが。


*以下、ネタばれあり。

 この作品の純愛ルートについてはすばらしい先行報告があるので、詳しく知りたい人はそちらを見た方が早い(特に「ハンバーガーショップ」のあたり)。ほのかの方は過去の虐待経験から「自分を捨てて、他人の命令に従う」という生き方をしてきた。一方で主人公の方はと言えば、過去に自分専属のメイドがいて、彼女を独占しようと願っていた。しかし、そのメイドを「自分のものにするために」と、付き合っていた男が殺害しようとする。二人は相打ちになるのだが、裏切られたと感じた主人公はメイドに止めを刺す。その記憶がトラウマとなって、殺人事件のニュースなどを見ると頭痛などの症状が出るのだが、それがなぜかは彼自身、気づいていない。ほのかの中にメイドの姿を見ていた彼はやがて過去を思い出し、一方でほのかも「命令されなくても生きていける」ようになっていく。ところがそのタイミングに(一部で悪評高い)「ほのかれいーぷ未遂イベント」が発生。そこでほのかの本心を知った主人公に、海外引越しの日があと一日に迫ってくる。そこから先は自分で読んでほしいが、ラストは「死んだら驚いた」って感じ。

 鬼畜ルートでも主人公・ほのかの過去は変わらない。ただ、主人公の独占欲とほのかの依存性がシンクロして、どんどん過激な方向に話が進んでいく。これはこれで一つの「純愛」の姿だと思うが、ラストの「M 奴隷」展開はあまりにベタ。

 結論。なんか「純愛ゲー」のパロディーを作りたかったようにしか見えないんですが。つまり、純愛ゲームの典型的なモデルを「純愛ルート」で提示しておいて、「主人公がそんないい奴になる(あるいは「ヒロインが過去から開放される」)なんて都合のいい展開になる訳ないだろ、ゴルア」という主張をしたかったと。その意味では悪名高いれいーぷシーンは必要性に満ちているとも言える(ただし、その後のいじめ役の動かし方にやる気は全く感じられないが)。もっとも、本気で「ほのかたんマンセー」になれる人にすれば、わざわざこういう展開をもってくる必要もないだろうことは理解できる。そういう人は7月9日と7月12・13日あたりだけ読んで萌え転がっている方が幸せになれるだろう。


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