「微笑みをもういちど」

(U・Me SOFT / 2000.8.4)


 「○○ちゃんfor Me」シリーズで有名なU・Me SOFT の作品。ゲームシステムは「ときメモ」と「同級生」を足して2で割ったような感じだが、システムメインの作品という訳でもなく、と言って読ませるだけのシナリオがあるわけでもない。分類としては特定キャラの攻略を目的とした「アドベンチャーゲーム」に入るのだろうが、それにしては「キャラ萌えなえろげ野郎を断固、囲い込むぞ!」といった気概が攻略対象キャラからは感じられないような気がする(もっとも、中国女とか遊牧民とか朝鮮人参とかキワモノ系だけは揃っているので、そういうのが好きな人にはアピールするところがあるのかもしれないが)。ストーリー展開は極めて単純だし、テキストの書き込みも薄く、「プロットを読んでいる」というのが正しい表現のように思えてならない。だからと言って楽にクリアできるかと思えば、実はそういうわけでもない。なぜなら、大半のキャラクターの攻略にミニゲームのクリアが必要とされるからだ。これがなかなかの曲者なのだが、メーカーのサイトにクイズの答えとミニゲームの難易度を下げるパッチが置いてあるので、それを使えば何とかなる程度のものではある。

 まだ「同級生」も出ていなかった頃ならともかく、2000年発売の恋愛アドベンチャーとしては、キャラクターにしてもその背景にあるストーリー性にしても、いまひとつきちんと描かれていないように思える。といって、「エスカレイヤー」(Alice soft)などのようにエロに特化しているかと言えばそういうわけでもない。CGを見るためにミニゲームのクリアが必要というのが特徴と言えば特徴だが、なぜユーザーがそれだけの努力をするのか、という点が読みきれていない気がする(「そういう疑問が存在しうる」ことを示す点に、このゲームの独自の存在価値があるとも言える)。幼馴染4人に関する設定やプロットには見るべきところがあるにも関わらず、全体として中途半端な作品に終わっているのも、その辺に理由があるのでは。


#以下、ネタばれ。

 ゲームは学生時代とそれから5年後の2部構成になっている。設定だけ聞くと面白そうだが、実は一部と二部の間の繋がりは事実上、ないと言ってよい。この作品の一応の軸となっているのは主人公(伊藤友二)・早川英夫・高泉由佳・中谷春菜の関係である。4人は幼馴染で同級生なのだが、学園3年の夏の終わりになって、主人公がベルギーに行くことが決まってしまう。4人でいられる時間は2学期の間だけ。しかし彼はその事実を明かすことなく、やがてクリスマスパーティーの日がやってくる。プレゼント交換も終わった頃、「明日、ベルギーに旅立つ」ことを明かす友二。そしてそれから5年の月日が流れる。友二は英語の講師として学園に戻ってきた。「お嬢様」な由佳はその学園の理事長である黒川の婚約者になり、そして春菜は英夫と付き合っていた。由佳ルートでは「婚約者がいる身」の彼女と友二の関係が描かれ、最終的には結婚式で彼女を奪って逃げるという展開。一方、春菜ルートでは彼女が友二とよりを戻そうとするのだが、それを見て英夫がストーカー化。最後には二人で会っているところに英夫が入ってきて、彼女を刺し殺そうとする。バッドエンドでは友二が殺され、トゥルーエンドでも友二が英夫を殺して、春菜と逃避行という救いのない展開になる。ついでに書いておけば、沖芽アユミは「幽霊もの」で、彼が5年後に戻ってきたときに生徒として彼女が目の前に現れたという話。どこかで見たようなベタな話しだけに、もう少し話しの盛り上げを工夫してもらわないと・・・。

(総括)

 なんか同人系ネタゲーのように見えて仕方ないんですが、一体、どういう客層を狙っているんでしょうか。少なくとも「ノベルゲー」ではないですね。


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