「はてなきそら」

(あんく / 2004.12.17)


 「あんく」から発売された「病院もの」ADV。DQNな主人公が父親の陰謀で私立病院に勤務することになり、そこでの20日+αの生活を描いた作品。出てくる女性キャラは担当患者の佐々木律子(←炉莉)と、その姉で専門学校生の裕恵、先輩医師の三笠絵梨奈と看護婦の広瀬美咲、病院で雑用をやっている看護学生の杉浦綾、それと主人公の現恋人である柿崎詩音。ただしエロ担当はこの中の3人だけ。システムは可もなく不可もなくといった所だが、機動にオリジナルCDが必要。攻略は基本的に狙ったキャラだけを追いかけていればOKだが、綾ルート12日目の選択で詩音ルートに分岐し、更にその20日目の選択で律子ルートへ分岐可能になっている模様。基本的にシナリオは一本道で、ラストの展開もおおまかに言えば2種類しかないため、デフォルト設定の「既読読み飛ばし」を使用すると、2人目以降は1時間もかからずに終わってしまう。綾と裕恵以外は「強引に個別シナリオを作りました」という感が漂いまくりなので、この二人のどちらかを初めにプレイすることを推奨(つか、時間がない人はこの二人以外はプレイしなくても別に問題ないかと)。


*以下ネタばれあり。

 もともと外科医だった主人公が、父親の差し金で内科医として働くことになり、そこで白血病の幼女(律子)の担当になる。彼女を中心にしたルート(裕恵など)では彼女を救うために、主人は嫌っていた父親に頼って新薬を手に入れる。一方、綾のルートでは、彼女は律子と同じ病気であることが判明する。律子の死後、綾も急性転化を迎えることになる。ところで、主人公には詩音という学生時代からの彼女がいるわけだが、律子のことを聞いて骨髄バンク登録していた彼女のHLAが綾のそれと一致するという、作ったような話が展開される(←まあ作り話ですが)。詩音を捨てて綾を取ろうという話になっている所にこういう衝撃の事実が発覚し、その後、詩音は綾の病室に向かう・・・(続きは自分で読んで下さいよ)。

 設定とプロットの全体構造は、(ご都合主義だが)まあそれなりに筋が通っている。「裕恵シナリオで律子を殺して、綾シナリオになだれ込む」といった流れで、それに「院長と製薬会社の癒着」「詩音と綾の二股」「佐々木家の問題」「父親との関係」などをうまく絡めてやれば、立派な小説になるはずだ。しかし残念なことに、攻略対象を増やす(ゲーム性を高める)ために、それぞれの設定がうまく連携しておらず結果として中途半端な作品で終わってしまっている。またそれぞれのキャラの心境変化の根拠も十分に描かれていないために、正直、佐々木一家以外のキャラについては、「なぜそういう行動を取るのか」という点がわかりにくい。

(総括)前作の「To...」も微妙だったと聞くが、本作も同様。ラストの展開も肩透かし気味だし、同じ時間を使って医者ものゲーをプレイするなら、「Flutter of Birds」の方がお勧め。


インデックスに戻る