「雪のち、ふるるっ!〜ところにより恋もよう〜」

(RUNE/ 2006.12.22)


 「ちっちゃい子は正義です」という潔い方針で、そういう人向きの作品を送り続けてきた「RUNE」の作品。タイトルだけ見ると、何となく、F&Cの「晴れのちときどき胸さわぎ」なんていうゲームを思い出してしまうわけだが、いい意味でも悪い意味でもこの時代、というより、少なくともその前作である「晴れのち胸さわぎ」から、あまり進化しているようには見えない。「動作機種:PC-9801VM以降」と書いてあっても、あまり違和感を感じないが、FM音源ぐらいは、あった方が幸せになれるかもしれない。あと「ちいさい」のは約一人しかいないので、そういうものを期待している向きは要注意かも。

 中身はありがちな学園ラブコメで、本筋は敵を4体倒せば終了。ミニゲームは「普通」でも大して難しくはない(←多分、テスト版よりも判定が甘い)。きちんと最初から最後まで読めば、多分、8時間はかかる(共通パートスキップで1キャラ2〜3時間ぐらいか?)。共通イベント(スケートとか身体測定とか)から、各攻略キャラ別のサブイベント分岐が起こる仕掛けになっているが、基本的に一本道のストーリー。もっとも、 メインキャラのルートは少しだけ手厚く書いてあるし、「幼馴染担当」キャラも、他のサブキャラよりはボリュームがあるかもしれない。正直、今時の「中二病ヲタ大学生」向けゲーム(「車輪」あたりが代表か?)と比較すると、どうしようもないというか、「どうすればいいんだ!」といいたくなるようなご都合主義の展開の連続。まあ基本路線は「キャラ萌えゲー」なので、シナリオ展開に多くを期待してもしょうがないという話も。もっとも、4大イベント中、連続した2つが「姉変身ネタ」はないだろうと思うし、なんか全体の構成のバランスも微妙。

 かなりまずいと思うのは、個別ルートでどうもキャラが立っていない点。「属性先にありき」で、それっぽい過去を当人に語らせてみたり、どこかで見たようなイベントを入れておけばそれでよし」とする手抜きな態度が見えすぎ。つか、これって典型的な「シュミラークルの(二次)シュミラークル」なんですけど。もしかしてシナリオライターはアニメとゲームしかやらないタイプの人なのか?どれも設定から予想される範囲内の展開にしかならないにしても、伏線の張り方が弱すぎ。プロット自体はそれほど悪くもないと思われるので、工夫次第ではもう少し何とかなったような気もする。

 あとこれは文章表現の問題だが、この手のゲームで突然、「地の文」が出てくると違和感を感じる。こういった辺りをうまっぽく誤魔化すのが、それでご飯を食べているプロだと思うわけですよ。つか、表現技術以前の問題として誤字脱字が多く、真っ当に校正すらしていないのが明らかなんですけど。というか「学校」の連呼はまずいでしょう。これに加えて、「のだった。」表現が目につく点も減点要因なのだった(←無印「Wind」ほどではないが)。

 とはいえ、キャラクターが集団で動いている場面は、学園ラブコメとしてそれなりに成立しているとは思うし、出てくる人が基本的に「いい人」ばっかなので、ゲームの世界でまでDQNに腹を立てる必要がない点は評価できる。まったりしたムードから一転しての、戦闘シーンへの展開も悪くない。悪くはないのだが、そこに意味不明な「音ゲー」が入るので、一気に緊張感が削がれてしまうという罠。バトルパートを入れるなら、せめて「プリンセスうぃっちぃず」並みに作りこんだ方がいいと思うし、そもそもそんなもの、この作品においては存在の必要性すら疑わしい。というか、どうしてラストのテロップの所でミニゲームが出てくるのか、全く理解に苦しむわけですが。

 そんなわけで、本作は「凡庸な野々原ゲー」以上でも以下でもないみたいです。部分部分で見るとかなり上手に書けている部分もあるわけですが、全体としてみるとどうにも物足りなさを感じてしまう理由は、(メインキャラ以外)「こういう物語を書きたい」というライターの意図が見えてこないところにあるような気がしてならない。 なんかキャラクターも「かわいいだけ」「ツンデレなだけ」「無邪気というか、常識がないだけ」といった感じで、「人間らしさ」(←一部、妖精もいますが)が出てませんし。


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