「Clover Heart's」

(ALCOT / :2003.11.28)


 同人サークル「APPLE project」初の商業作品で、「 ALCOT 」ブランドから発売。システム面には大きな問題はないが、バッドエンドまで見てアイテムを収集をしないとCG,音楽鑑賞等の機能が使えない。詳しくは適当な攻略サイトを見るか、エンターブレインから出ている「ビジュアルファンブック」でも参考にされたい。

 OHPを見ればわかるように、主人公たち(白兎・夷月)とメインヒロインたち(玲亜・莉織)はどちらも双子。彼らが厨3の冬に、訳あって一つ屋根の下に暮らすことになるところから話は始まり、やがて白兎&玲亜, 夷月&莉織のカップリングが形成される(どう頑張っても白兎&莉織または夷月&玲亜のカップリングの展開にはならないので注意)。わざわざ「対視点型恋愛コミュニケーションAVG」と断っているが、基本的に上記のどちらかのカップル内の世界で話は進行していく(例えば白兎ルートに乗っている場合に、夷月または玲亜からの視点が導入されることはほとんどない)。メインストリートは二つで、両方を読まないと主人公たちとメインヒロインたちのあまりに不自然な行動の理由がわからないような作りになっている。なってはいるのだが、実際にプレイするとわかるように、あまりに3章までの伏線の張り方が弱いために、4章の展開が「取ってつけた」ように見えて仕方がない。むしろ2章までで展開される三角関係とその解消を主軸にすえて話を作った方が正解だったのでは?


*以下、ネタばれあり。

 白兎ルートでは、「なぜ夷月が他人を寄せ付けない性格になったのか?」(あるいは兄弟の仲が破綻することになったのか)ということが明かされる。白兎は玲亜との付き合いの中で、段々、それが可能となっていくわけで、他人との付き合い方を知らない玲亜の方も、同時に成長を遂げる。一方、夷月ルートでは莉織によって彼が他人に心を開くようになっていく姿が描かれた後に、4章で姉妹の過去が明らかにされる(ま、それがロシアマフィアに追われていたっていうのがアレでナニなとこですが)。全体の設計として、どういうことをやりたかったのかはよくわかるのだが、実際のところ、どうも助長すぎるところ(白兎3章とか)と、逆に話を押し込めすぎている所が目立つ上、それぞれのルートの話がうまく絡んでいない。フィクションに文句を言っても仕方ないが、どうも出てくるキャラクターの設定や話の展開にもご都合主義な所が目立つ。正直、3・4章は読んでも読まなくても同じだったような気がしなくもない。

 もっとも、この作品はサブヒロイン2人のシナリオを楽しむものだと考えるなら、(2章までは)依存症気味で独占欲の塊な玲亜と、ひたすらうっとうしい莉織の行動も納得できる。ちまりは白兎シナリオ1章で彼が玲亜と(リア厨同士のくせに)初せくーすした後に突如、登場する。ちまりシナリオを終えた後に白兎2章を再プレイすると、それには相応の覚悟があってのことだとわかる。ちまり・白兎のおさななじみにしてクラスメイトの雄基を巻き込んだ激しい展開には一読の価値がある。もう一人の方(円華)は夷月シナリオ1章冒頭から登場する(こっちもエロシーンからだが)。彼女は実の弟(賢治)から襲われそうになっていた所を夷月に助けられて、彼と「契約」を結ぶ。こちらも(本筋と比べたら)見通しのいい話だが、感動のラストで賢治が妙に大人しくなってしまう理由が何も説明されていないのが不自然(というか、莉織でも使って伏線ぐらい張っておけよ)。姉(円華)と弟(賢治)の関係というのを持ち込むというのはいいアイデアだと思うので、この話に夷月−白兎の関係の変化なんかを絡めて話を動かしてやれば面白かったのかもしれない

 結論。1章でメインヒロイン二人が嫌いにならなかった人は、4章までプレイすればよいかと。個人的にはでっち上げ臭い展開だと思うが、一応、話は収まる所に収まるので。逆に玲亜・莉織がうざい人はサブヒロインのエンディングを見た所で止めた方が時間の有効利用かと。もっとも、純愛系にしてはエロが無駄に濃い(「女装」とか)ので、そういうのを求めている向きには良作かもしれない。


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