「Dear My Friend」

(light / 2004.7.9)


 「light」の第19作で、シナリオは「Sultan」のNYAON氏と「PARADISE LOST」の正田崇氏。攻略対象5人+1人(ヤヲイ)の、ありがちな学園ものADV。攻略は基本的に狙ったキャラクターをストーキングすればよい。ゲーム期間は一ヶ月(2月)+αだが、比較的早い時期に共通シナリオから個別シナリオへの分岐が起こるので、思ったよりもボリュームはある(ボイスオンで1キャラクターあたり6時間以上)。攻略順としては「小麦」→「月夜」→「冴香」→「麻衣」→「司」→「都香」といったところか(月夜2/4から小麦ルート、麻衣2/9から司ルートに分岐する)。小麦・月夜は(一部にキャラ萌え人気が高いようだが)本筋とは直接関係ないので、時間がない人はやらなくてもよいと思われ。

(以下、ネタばれあり)

 OHPを読めばわかるように、このゲームは主人公(森川恭一)の家に久代麻衣が里子として引き取られてくるところから始まる。恭一の周りにはいつも、牛丼好きの同級生、北沢都香と巫女さんの栗原月夜、それにおさななじみの杉野司(ホモ)がいたわけだが、その関係は微妙のバランスの上で「友達」という状態を保っていた。そこに麻衣が登場することで、彼らはいやおうなしに恭一を「恋人」として意識せざるを得なくなり・・・、といった話。上に書いた5人は全て同級生(学園2年)だが、恭一の隣に住んでいるお姉さんキャラの永村冴香も彼を狙っていて、麻衣と恭一を取り合いになる。冴香シナリオは分量も少ないし、小麦と並んで「おまけ」感が漂っているが、(都香シナリオと並んで)自分のシナリオ以上に必死な麻衣の姿が見られる。

 で、問題の麻衣だが、彼女はどうしたわけか、異常なまでに恭一にくっつきたがっている。麻衣シナリオの問題点は、最初から最後まで、彼女がどうしてそういう行動を取っていたのかよくわからないところで、その問いは後半部では、彼女が求めているものが「家族」なのか、それとも「恋人」なのか、というものに変形する。恭一はそれを「人の顔色を窺がわないと生きてこれなかったせい」で、彼女が自分に恋していると考えていた節もある。また麻衣も(彼が実の兄である可能性を知りつつも)自分が恭一に恋していることを意識しているような記述がある。にもかかわらず、麻衣が彼と一線を越えた後に「血縁関係なし」が判明したにも関わらず、「実の父親の所に帰る」という選択をする理由が全然わからない。また、このシナリオでは恭一のへたれ方が尋常ではないのだが、彼がそんなへたれ野郎になった理由がこのシナリオ内部では何も語られていない。実はこれ、都香シナリオを前提とすれば、きちんと話は通るのだが。

 おそらく、「Dear My Friend」のメインキャラクターは麻衣ではなくて都香なのだろう。他のキャラクターのシナリオでは影が薄い彼女だが、自分のルートでは(一部で「地雷」と呼ばれているほど)激しい展開が待っている。一筋縄の恋愛ゲーで終わらないところが、いかにもlightらしいが、ラストは強引なハッピーエンドなので、安心してプレイしてほしい。このシナリオでもったいない所は、彼女の「一日だけの」行動の背景となっている父子関係や、彼女の父と恭一の両親の関係があまりに後付け的に語られている所で、(麻衣との関係も含めて)この辺をきちんと伏線処理しておけば、もっと面白くなっていたはず。

(総括)

 麻衣・都香・冴香シナリオ間の連携が弱いところと、各キャラクターの抱えている問題とその解決について、全体を見通して設定を作っていないように見えるところが目につくが、全体としてみれば、良く纏まっている良作と思われる。月夜シナリオは単体としては良くできているが、メインストーリーとは無関係で、むしろ途中の「いじめ」の部分を軸に据えて話を展開した方が纏まりがよくなるような気がする。小麦シナリオは「家族」を描くという点で麻衣の対極としての存在意義があるのだが、これは完全に滑っており、他の部分も「設定の後付け」にしか見えない。まあ「ツンデレ」系が好きな人はやってくださいよ。


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